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8羽・暴走する運営

 

 私が、グインちゃんの腕から飛び出ると同時に〈氷壁〉が解かれた。

 それを逃すまいと〈筋力強化〉で跳び上がるクルミ。人間がするジャンプとは思えない跳躍力で私との距離を直線的に詰めてくる。

 そんな彼に向かって巨大な氷の爪が振り下ろされた。


「は? この短時間に攻撃スキルを覚えたのか!?」


 空中という動きが制限される中で放たれた予想外の攻撃。

 それをクルミは剣を当てる事で衝撃を殺して直撃を避けた。

 やはり、私とは1つも2つも次元が違う存在なのは間違いない。


 だが、今この場では私の方が上に立った。


「ン? コレは氷か!?」


 〈雷牙〉の突きの構えをした時に違和感を感じ、剣を見たクルミは驚きの声をあげた。

 先程、グインちゃんの〈氷爪〉を受けた辺りを中心に、剣が凍りついていたのだ。


「それがグインちゃんの〈氷爪〉の効果! 触れたモノ全てを凍らせる能力よ! 」


 当の私も、先程の攻撃によって凍りつかされた"空気"に乗っている。


「面倒臭ぇ能力だな! スキル4・〈炎牙〉発動。後にスキル1・〈鉄牙〉」


 剣が一瞬炎を包まれると、あっという間に氷が溶かされてしまった。


「あー! ねぇ、お前セコ過ぎないさっきから!? 明らかに色々な属性のスキル持ってるし」


「その分努力したんだよ、文句言われる筋合いは無いな」


 彼は剣を握り直すと、今度は横に薙ぐような銀色の斬撃を放った。

 その斬撃は先程までの斬撃とは違って、どんどんと加速して迫ってくる。


「ヤバっ! グインちゃん〈氷壁〉をお願い! 」


 慌ててグインちゃんの腕の中に飛び込むと同時に青色の氷の壁が展開されて、銀色の斬撃を防─────


「え゛?」


 防がれ無かった。

 〈氷壁〉と衝突した銀色の斬撃は消えること無く、ゆっくりとだが着実に壁にヒビを入れていく。


「なぁ、お前? 初心者って話だったが、属性の相性って知ってるか? 」


「知ってるに決まっ、てん、で、 え? あーーー! 」


 完全に忘れていた。確か『アボ』の属性相性では、鉄属性が氷属性に与えるダメージ量は倍。


「ごめんなさい! さっき一瞬調子に乗ってごめんなさい! ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」


「自分が不利になると態度変えるの好きだぜ ……だけど、この対戦は勝たせてもらう」


「〇ね! 〇ね〇〇〇〇〇〇〇〇〇!」


「ハハッ、なら俺の最強スキルでヤッてやるよ?」


「ギャァァァァアーーー!嫌ー! やめてー! 犯〇れるー! 」


「別にヤラねぇよ! スキル8・〈八岐大蛇(ヤマタノオロチ)〉!」


 彼が宣言するかのようにスキル名を告げると、〈氷壁〉に傷をつけていた銀色の斬撃が激しい光を放ち、八頭八尾の巨大な蛇へと姿を変えた。

 巨大化したグインちゃんよりも大きなその巨体は〈氷壁〉に勢いをつけて激突する。


「アァァァァァァァァァァァァァァ!!!?」


 先程まで圧倒的な硬度を見せていた〈氷壁〉は一瞬で白い霧へと粉砕された。


「イヤァァァァ! グインちゃんごめん! 私死んじゃう! あなたの事守れなかった! ごめんなさい!!! 」


 泣き叫ぶ私に向かって、八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の絶死の口が開かれた。


 そして─────



 〇●〇



「え?」


 気が付くと、八岐大蛇は消えていて、近くにはクルミが倒れていた。


「え? 何? どゆこと? 」


 近づいて頬を軽く叩いて見たが返事は無かった。息はしているので心配は無いと思うが、


「それにしても何が?」


 グインちゃんに〈巨大化〉を解かせて腕に抱えると、低い効果音と共に、明朝体の文字が書かれたウィンドウが現れた。


『やあ、運営様だよ』


「あ? 何が"やあ"だよ 〇すぞ」


『そんなに怒るなよ。で、どうだった初対戦は?』


「いや普通に怖かったんだけど。てか、アイツ結構有名なプレイヤーなの?」


『そうだね、一応ランキング8位のプレイヤーだ』


「そんな相手と戦わせたのか? ゴミかよ」


『けど、君は勝ったじゃないか? 』


「いや、私何もし─────


 そこで気が付いた。

 あの僅かな間に何が起きたのか、何故八岐大蛇が消え、クルミが倒れていたのか……


「このクソ運営! 何かしやがったな! 」


『それはどうだろう? まぁ、俺から言える事は、8位を倒した初心者プレイヤーはさぞ目立ち、さぞ対戦依頼されるだろうね? そして君は対戦依頼を拒否する事はできない』


「チッ、お前ッ! マジでブッ〇す!」


『じゃあ、せいぜい楽しめよ 期待の新人プレイヤー"ラムネ"様?』


 それからは、私がいくら叫んでもウィンドウが現れる事は無かった。


「あのクソ野郎ォォォォオオオオ!!!」


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