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5羽・アカウント停止

 

『"異常行動"及び"通報"を多数受けた為、ラムネ様のアカウントを12時間の停止処分としました。このような事が複数回行われると、アカウントを凍結する場合があります。』


「おーまいがー」


 気が付くとゲームは強制終了させられ、変わりに運営様からのメッセージが表示されていた。


「異常行動って…… ただ自分のした事を償おうとしただけなのに」


 ゴーグル型の機器を外して机に置くと、そのままベットに飛び込む。


「あ〜 それにしてもペンギンちゃん可愛かったなー いや、グインちゃんと呼ぶべきだろうか? あのぽっちゃりとした体型と2頭身の黄金比! つぶらな瞳も素晴らしい! あんな生命体が存在していいのだろうか、あれこそ傾国の何たらと呼ぶにふさわしい生命体だよ。妲己(だっき)とか楊貴妃(ようきひ)とか見た事ないけど、到底グインちゃんには適わないよ 絶対」


 ベットの端にあった枕を近く寄せると、試しに頬擦りをしてみた。


「う〜ん 遠いようで近いような感じ……」


 ふと時計を見ると、針は21時を指していた。


「そういえば、まだ夜ご飯食べてないな」


 普段は夜ご飯はあまり食べないタイプ────間食で済ましてしまうタイプ────なのだが、今日は無性にお腹が減っていた。

 意外にアボカドは体力を使うゲームなのかな、と思いつつ物置に向かう。


「お、あったあった」


 奥の方からインスタント麺を取り出すと、その場で袋を開けて、そのままかぶりつく。

 パリパリという心地よい音と共に香ばしい匂いが鼻腔をくすぐり、濃縮された味が口内に広がった。


「あー マジ最高」


 ヤバい奴だと思われそうだが、実はコレ結構イケたりする。

 本来は、お湯で薄まるはずだった味がダイレクトに味覚をイジメにかかってくる。これが最高にたまらないのだ。

 親が夜勤の日にしかできない贅沢の権化。


「ごちそうさまでしたっと」


 あっという間に食べ終わると、お土産に2袋を持って自室へと帰った。



 〇●〇



 次の日、私は制限が解除されるやいなや『アボ』にログインした。


「特に変化は無いか……」


 昨日強制終了された場所からのスタートだった。

 流石にホームズさんはいなかったが、腰にはちゃんと小刀が装備されている。どうやらオートセーブ機能があるようだ。

 ふと視線を下の方にやると、グインちゃんが必死に手を挙げてぷるぷると小刻みに震えていた。


「んー? どーしたのグインちゃん? もしかして昨日落とした事を怒ってるの? どうしたらいい? どうしたら許してくれる? 死んだ方がいい? 」


 そう言いながらしゃがみ込むと、グインちゃんは手を下ろして、ぺたぺたと私の隣にやってきた。

 そして、腰に付いている小刀をぺちぺちと叩き始める。


「なになに? コレが欲しいの? 」


 試しにそんな事を言ってみたが、何となくそうではない気がした。

 "欲しがっている"と言うよりは、"怖がっている"そんな感じだ。


(どうしたんだろ……)


 そのまましばらく小刀を叩いていたグインちゃんだが、何かを諦める様な表情をすると、今度はそれを隠すように手で抑え、私の目を見てきた。


「え、どうしたのグインちゃん! 」


 そのつぶらな瞳からは、今にも涙がこぼれそうだった。

 うるうるとした瞳、喘ぐように動くくちばし───────そこで私はピンと来た。


「もしかしてグインちゃん、私が昨日これで自殺しようとしていたから、奪おうとしてるの? 」


 彼は首を上下に激しく振ると、私に優しく抱きついて来た。


「あ、あ、」


(う、嘘でしょ…… グインちゃんが、わ、私に心配を? )


「……グイン、ちゃん? 」


(心配して、小刀を壊そうとしたけど壊しきれなかったから手で隠そうとしたの? )


「ッッ! グインちゃん!!!」


 感情が爆発した。


「ウッヒョォォオオオオー! あ〜 グインちゃん! グイングインちゃん! あなたは本当に可愛いよ、愛おしいよ、恋しいよ、結婚しよ! 好き好き大好き大大好き! あなたになら処〇捧げてもいいと思えるよマジでー! てか、もしかしてゲーム内でグインちゃんとセック〇出来たりするのかな! 出来るのかな! させてくれるのかな! あーどうしよ 騎〇位だとグインちゃんが潰れちゃうからやっぱ正〇位かな! でも、〇〇〇だと〇〇〇が〇〇〇〇かもだし、あ、〇るとしたら〇〇〇はいるかな? いや、でも〇で〇〇〇し、でも〇〇〇〇〇できたら困るし…… うん、いや待てよ、グインちゃんとの〇〇〇〇〇なら全然ありよ! よし、そうなったら早速〇〇〇に行こ〇〇〇〇〇! グインちゃん私を〇〇〇〇! じっくりゆっくり愛し─────



 ──プチン──



『"異常行動"及び"通報"を多数受けた為、ラムネ様のアカウントを18時間の停止処分としました。このような事が複数回行われると、アカウントを凍結する場合があります。』



 短い警告音と共に、見覚えのあるウィンドウが出てきた。


「…………チッ」



 〇●〇



 その後の事はよく覚えていない。

 ただ翌朝電話を確認すると、とあるゲーム会社と2時間以上電話をしていた記録があった。



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