2羽・ペンギンとの出会い
翌日。
私は家に帰ると、既に届いていた『アボ』を起動させる事にした。
ゴーグル型の機器に電源を入れると、辺り一面が漆黒に覆われる。
その空間に『アナタノ名前ハ?』と書かれたウィンドウが浮かび上がってきた。
「なるほど初期設定ねー」
迷うこと無く"ラムネ"と入力する。ゲームをする時は、大体この名前にしているのだ。
続いて『バディヲ選ンデ下サイ』の文字と共に、様々な動物のシルエットが映し出される。
イヌやネコやクマ、珍しいやつだと恐竜やドラゴンなんかもあった。
初めからステータスに差があるらしく、ドラゴンとかだと頭一つ飛び抜けていた。それを証明するかのように、左上に『★★★☆☆』と表示されている。
大抵のプレイヤーは、その容姿や星の量に惹かれてドラゴンを選ぶだろうが私はその例には当てはまらない。
ウィンドウをスクロールさせ、一番下にいた『★☆☆☆☆』のぽっちゃりとしたシルエットを選択する。
そうペンギンだ。
直後、甲高い電子音が響いたかと思うと、足元から視線を感じた。
「ん?」
ゆっくりとその視線の方を見る。
「……あ、」
そこには、先程のシルエット通り。いや、それ以上のかわいさのペン───
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!?」
……ペンギンがいた。
その生き物は、私と目が合うと小首をかしげながら笑顔を見せてきた。
(ヤバいよ、落ち着けよ、落ち着け私、ペンギンちゃんを驚かせちゃダメだ……!)
そのまま小さな足をペタペタ動かしながら私に近づいてくる。
(え、ちょっっっと! ウソでしょ!? 待って待って待って待って待って待って! )
そして私の足に抱きつ───────
「かわいぃぃぃぃぃぃぃぃぃい!!!」
限界だった。
つい先週までテスト週間だったという事もあって色々と溜まっていたのだ。それが爆発してしまった。
私は本能のまま、ペンギンちゃんをありとあらゆる角度から見た。
「いいね! いいねいいねペンギンちゃん! かわいいよ! フォォオー! ソーキュート!!!」
〇●〇
どれくらい時間が経っただろうか、私がペンギンちゃんの足を触ろうとした瞬間、いきなり目の前にウィンドウが現れた。
『続きの操作を早急にお願いします。』
「……おぅ、明朝体の破壊力」
ひらがながカタカナになっていない所を見ると、どうやら運営様直々のメッセージらしい。
"ごめんなさい"と軽く謝ると、ついでにペンギンちゃんの小さな足を触ってから続きの操作をする事にした。
『属性ヲ選ンデ下サイ』
「属性とかも選べるのか」
ウィンドウを操作すると、9個の円が白と黒の陰陽のマークを囲うように輪を作って表示された。
それぞれに漢字が1つずつ書かれていて、その円を繋ぐように矢印も書かれている。
どうやら相性を表しているようだ。
「えーっと、『水』『炎』『草』『土』『雷』『空』『毒』『鉄』『氷』か、なんかポケ〇ンみたいだなぁ」
そんな事を言いながら、『氷』を選択する。
「ペンギンと言えばこれ一択でしょ」
すると、低い効果音と共に、ペンギンちゃんの身体の黒色の部分が綺麗なライトブルーへと変色する。
「ふぅおあおォォオ! アンタ何その色! 最高かよ! マヂでかわいいよ!」
我慢できずにその身体を持ち上げると、頬擦りをした。
ツルッとしているイメージがあったが、意外としっかり毛が生えていたので、もふもふできて気持ちよかった。
「あ〜 あーあーあ〜〜 かわいい〜〜 もふもふ〜〜」
ペンギンちゃんも嫌がる素振りは見せず、無邪気に笑っていた。
気がつくと相当時間が経っていたらしく、再び『続きの操作を早急にお願いします』とのメッセージが現れた。
「チッ、このクソ運営が! 〇ね! 〇すぞ! 」
精一杯の毒を吐いてから、ペンギンちゃんを優しく下ろす。
『バディノサイズヲ選ンデ下サイ』
「サイズ? 何それ? 」
ここで知らない言葉が出てきた。
一応『アボ』をプレイするにあたって軽く調べてみたが、サイズという物に関してはあまり覚えていなかった。
「うーん、確かに何か書いてあった気もするけど…… ま、いっか、とりあえず最大の『5』にしとくか」
適当に選択できる数字の最大を選ぶと、先程とは違って華美な装飾がされたウィンドウが出てきた。
『初期設定ガ完了シマシタ』
「おぉ! 来た来たぁ!」
瞬間。私の視界を光が埋めつくした。