04
嘉夢羅 紗螺は諸刃 闥臣の友人である。
同じように、諸刃 闥臣は嘉夢羅 紗螺の友人だ。
同じ事を2回も言うなって?
気持ちはわかる。
でもこの上の2つの文には同じようで全く違うって事を、多分紗螺だって気付いてる。
俺と紗螺では、友人に対する接し方がまるっきり違うのだから。
「紗螺は基本的におしゃべりでこっちが「知るかよそんな事」って思うような事でも話してくる。けど、紗螺本人が「これは本当にヤバいぞ」って思った事は絶対に話さない。特に友人にはね。こちらが紗螺のかくし事に気付いていると知っていてもーー知っているからこそ別の話だと思わせて話さないんだ」
逆に俺はヤバい事ほど人に言う。
足して2で割ったらちょうどいいって?
俺もそう思う。
「本人が言うつもりがないのに無理やり言わせるのも大変だろ?」
「ーーなら話がわかる奴に聞きゃ良いって?」
「そうだよ」
他に誰がいるんだと、あくまでーー外見上はーー強気に言葉を返す。
内心が生まれたての子鹿ちゃんも外見上くらいは取りつくろわないとーーじゃないと、話すら聞いてもらえないだろう。
取るに足らないモノだと思われてはいけない。
頭の中で警鐘がなり響く。
「ーーいいね」
ざぁっ、と風が吹く。
月を覆っていた厚い雲が風に流されーー月明かりが”少女”を照らした。
血のように真っ赤な髪が風になびく。
年の頃はーーもしかしたら俺とそう変わらないのかもしれない。
「いいじゃん、アンタ。つまんないハズレくじを引かされたかと思ったけど・・・うん。思ってたより悪くない。あの女の言葉だから信用なんねぇなと思ってたがーーなんならあの紗螺とかいうガキよりよっぽど良い!」
黙っていれば10人中10人が振り返りそうな美人が恐悪さを隠そうともせずにニヤリと笑う姿は中々どうして圧巻だ。
気圧される、と言っても良い。
「アンタ、名前は?」
「・・・諸刃 闥臣」
「ふぅん?」
少しだけ、不思議そうに少女が俺を見やる。
「そんなんだから、参加者かと思ったけど違うんだな。嘉夢羅紗螺は参加者で参加者”らしい”お前が資格なしだなんて”猫”は一体どういう基準で参加者を選んでんだろうな?」
「・・・残念ながら俺にはもう心に決めた猫がいるんで。他猫の入り込む予知はないって事なんじゃない?」
もう1度、武黶は不思議そうに「ふぅん?」と呟いてみせたけど特に俺の言葉を否定はしなかった。
いやでも待って。
紗螺が、参加者?
「星が全員揃ってる状態で元々の相棒との絆をきってまでらしい奴を参加者にするまでは流石の”猫”もしないって事かね。あんだけイカしてるくせにーーいや、イカレてるからこそそうゆう所だけはキッチリ筋を通さなきゃいけないってか。ハッ、大変だな」
それは、あくまで武黶が自分の情報を整理する為の独り言だったんだろう。
俺の反応を気にする素振りもなく、どこか上の空でつらつらと語られる言葉だけれどーー俺は、その言葉が欲しかった。
「つまり、逆に言えばキャストが揃ってなければその・・・ネコ?は元々いた相棒との縁すら切って参加者にするって事か?」
「そうだよーーそうだったろ?」
アンタのオトモダチは、さ。
ーー昨年の年末から、紗螺のねこを見ていない。
そして、それぐらいから”悪夢”を見るのだと紗螺は言った。
だけどーーそう。
それが夜寝る時に見る夢だとは、紗螺は一言も言わなかった。
俺が勝手にそう思い込んでいただけ。
寝不足気味の紗螺を見て、”悪夢”と言った意味を言葉通りに受け取った。
・・・もしかしたら、女郎花先生は知っていたんだろうか。
「キャスト、参加者って事は・・・パレードか何かでも聞くワケ?」
「パレード!いいな、ソレ!」
「・・・・・・・・・」
ちょっとしたオフザケのつもりだったのに思っていた以上にうけてしまった。
マジか。
俺の頭の中のネズミも踊っちゃう。
・・・もう夜だからエレクトリカルパレードかな?(迷推理)
「昔はなんでもありの殺し合いゲームだったけど、確かに今のコレはパレードっていう言い方の方が正しいんだろうな」
「何だって?」
「超能力者VS宇宙人だよ。ゴジラVSキングコングみたいなさ」
「待っって!!」
ごめん、待って!
ちょっと俺にはついて行けないよ。
何だって?
最初の人生ゲーム(物騒)からして付いていけないんだけど俺だけ?
でも、ゴジラVSキングコングみたいっていう例えが多分違うんだろうなってのはなんとなくわかる。
それはどっちかっていうと怪獣大戦争でしょう。
いや、ワンチャンドリームマッチという意味では正解なのか?
血しか流れないドリームマッチだけどな!
「ちなみにそれって途中棄権、て出来る?」
「無理」
「そんな気はしてた」
返品処理出来ない商品ってちょっとどうかと思うなオレ。
思わずスンッと真顔になる。
はい終わり。
はい終了。
はい解散。
お疲れ様でした。
もう全部聞かなかった事にして帰りたい。
紗螺?
適当に頑張って、お前なら出来るよ多分。