11 許せないと思いました。
強烈な悪臭を胸いっぱいに吸い込んで、ユカ達は下水道の中を歩いていた。
先頭を歩くのはダイナだ。今まで暇な時はここの探検をして過ごしていたらしく、ダイブマンが暮らしている場所がどこにあるのか分かるらしい。
ユカは手に持った買い物袋の重さを感じながら、黙って彼女の後に続いていた。そして、今まであった事を考えていた。
この国に来てからは驚きの連続であった。殺人鬼に襲われそうになり、変質者と友達になり、ヒューマンと出会い、そして殺しをした。
もう驚く事なんて何も無いのではないかと思えてきた。そして、もう魔法の勉強なんてどうでもよくなってきた。
今、彼女の頭の中にあるのは、今抱えている事件を解決させる事だけだ。
また助ける事ができなかった。ダイブマンもどきによって殺された人々の事を思い出して彼女の心は悲しんでいた。この失敗を挽回するためには事件を解決するしかない。そう思っていたからだ。
「ほら、あそこだよ!」
ダイナの声を聞き、ユカは我に返った。
彼女の指差す先には火による優しい灯りが見えた。たき火だ。また、あの場所へたどり着いたのだ。
「おじさん!」
ダイナは大きな声を出して走りだした。それに気づいたのか、たき火のそばにいた大きな人影は手を振って答えた。
少し遅れてユカ達がダイブマンの元へ着くと、ダイナは義手を自慢げに彼に見せている最中であった。それを素顔を晒して嬉しそうに見ている彼は、保護者の顔をしていた。
幸せな空間がそこにあった。これからそれを壊してしまうかもしれない話をするのだと思うと、ユカは少し罪悪感を感じた。
「ほら、こんな事もできるんだよ!」
ダイナはそう言って、義手をドリルに変えてみせた。ちゃんと回転もする。
それを見てダイブマンはキョトンとした顔をする。が、次第に顔は緩んでいき、最後には大笑いした。
「そうか、そうか。これで俺とお揃いだな」
彼はそう言ってダイナの頭をくしゃくしゃにする。彼女は笑顔を爆発させた。
「やあ、ダイブマン」
ヘイヤが挨拶をすると、彼は手を振って答えた。
「おお。もう来たのか。最低でも後1週間は来ないかと思っていたぞ」
そう言って彼は口から煙を吐く。彼の手をよく見ると、どこで手に入れたのかタバコを持っていた。喫煙していたところらしい。
喫煙の習慣なんてどこで覚えたのだろうか。ユカは気になったが、もっと重要な事をこれから聞くので我慢した。
「はい。約束通り、食べ物を持ってきました」
ユカが買い物袋を差し出すとダイブマンは嬉しそうに受け取り、品物を確かめ始めた。
「ふむ、悪くない。こういう場所では調理はできないからな。こういうのはとても助かる。……まあ、もっとも俺は料理なんてできないがな」
彼は笑い、そしてタバコを吸った。
「……それで? こんなにすぐに戻ってきたって事は単なる差し入れというわけじゃないんだろう? 俺の力を借りたい。まあ、そんなところか?」
口から紫煙を出しながら、タバコをこちらに向けて彼は訊ねた。
凄い洞察力だとユカは感心した。とても、アレと同じだとは思えなかった。もしかすると、彼は異常な個体なのかもしれない。だからこそ、ダイナに対して愛情を感じたのだろうか。そんな事を彼女は考えた。
「はい、実は……」
ヘイヤは話が速いと思ったのか、すぐに今までの事を話した。ダイブマンはそれを黙って聞き、時々頷いたり、難しい顔をしたりしていた。そして、ヘイヤが話し終えると、天井を向いて紫煙を吐き出し、タバコをたき火の中に投げ入れた。
「……なるほど、この街にも補給部隊がやって来たという事か」
少しの沈黙の後、彼は呟くように言った。
「補給部隊?」
ヘイヤは聞き返す。
「説明する前に、まずは海底都市の事情を話さなくてはな」
ダイブマンはヘイヤの方を向いて話し始めた。
「海底都市はどこの国にも属しない。そしてどこともつながりをもたない。これがどういう事か分かるか?」
「そりゃ、簡単な事だね。完全に孤立している状態さ。もちろん物資は自給自足でもしなければ維持なんて不可能だろうさ」
チェッシャーが答えた。
「その通り、そのための補給部隊だ」
「なるほど」
チェッシャーは納得したようだが、ユカにはさっぱり分からないし、ヘイヤもそれは同じであるらしかった。
「どういう事?」
ヘイヤはチェッシャーに訊ねる。
「ちょっと社会のお勉強をしよう。貿易というのは分かるね。お金を出して他国の物を買う事さ。こうして自分の国には足りていない物を補給したりするのさ。つまり国同士で物やお金を行き来させる事だね」
「うん。それで?」
「完全に孤立しているという事は、誰とも取引をしていないって事さ。つまり足りない物があってもどこから買う事もできないし、作った物をどこかへ売る事もできない。物が必要なら全部海底都市で作らなくちゃいけないわけだ。でも、それは不可能さ。だって資源には限りがあるからね。資源が無くなったらどうするか? そしたらもうどこからか調達するしかない。それも奪うとかそんな方法でね」
「『奪う』? ……ちょっと! それってもしかして」
ヘイヤは何かに気づいたようであった。
「そうだ。補給部隊はその名の通り、海底都市を維持していくために必要な物を調達する事を使命としている。それは食べ物であったり、物資であったり、人であったりな」
「『人』?」
ユカは聞き返した。
「そうだ。俺はラプチャー・サイエンスでどんな研究をしているかなんて全く分からん。が、地上の人を使って何か実験を行なっているのは間違い無い」
「そんな……じゃあ、今回の事件の被害者は……」
「ああ。実験用にと収集されたのだろうな」
ダイブマンはゆっくり頷いた。
「そんな……」
ユカの心は絶望を感じた。
実験のために人が誘拐される。その人はどんな目に遭うのか。考えただけで恐ろしくなった。
「そう落ち込むな。希望はまだある」
ユカの様子を見て、ダイブマンは慰めるように言った。
「え?」
「調達した物はすぐには海底都市までは送られない」
「ほ、本当ですか」
ユカはダイブマンに近寄る。
「ああ。1つずつ送るのは効率が悪いからな。拠点と呼ばれる場所に1度集め、ある程度集まった所で輸送用の潜水艦でまとめて送るというシステムとなっている」
「という事は、そうなる前に拠点を見つければ、誘拐された人を助ける事もできるって事だね?」
ヘイヤは興奮した様子で答えた。
「そういう事だ」
ダイブマンは頷いた。
「その拠点はどこに?」
「それは分からん。担当の者が目標地点の地理を参考に場所を決める。俺には見当もつかない」
ダイブマンは首を横に振る。
「そんな……じゃあ、どうすれば……」
「俺は知らない。しかし、当事者なら知っている。後は分かるな?」
「そうか! アイツらを尾行すればいいんだ!」
ヘイヤは手を打った。
「そうだ。だが、気をつけろ。決してヤツらに姿を見られるな」
「え? まあ、尾行は相手に気づかれないのが基本だけど……」
ヘイヤは首を傾げた。
「そういう事じゃない。海底都市の奴らは、自分達の事を知られる事を極端に嫌う。尾行がバレたら、部隊の者が全勢力を結集させて排除しようとするだろう。下手すると、証拠隠滅のために拠点の『抹消』すらしようとするかもしれない。そういう危険性がある」
「『抹消』って……」
「一番簡単なのは爆破だな。一切証拠を残さないとなると、これが一番だろうよ」
「そんな……そんな事したら、誘拐された人達も……」
「ああ。間違い無く死ぬだろう」
ダイブマンは手元にあった、デコボコだらけの金属のカップを手にし、中身を飲んだ。中身は不明だが、近くにヤカンが置いてある事から白湯か何かだろう。
「失敗は決して許されない。それでもやるか?」
「……それしか方法が無いなら、僕はやります」
ヘイヤは少し悩んだが、決心した顔をして答えた。
「そうか。なら、もう2つほど知っておいた方がいい情報がある」
「え?」
「俺と同じモデルの他に別のモデルの奴がいるはずだ。俺のモデルは実行用、ソイツは統制用の奴だ」
「見分け方は?」
「見た目ですぐに分かる。ソイツは人造ズーマンだからな」
「『人造ズーマン』?」
ユカが訊ねた。
「ああ。お前達の姿そっくりのヤツだ。知能もお前達と変わらないだろう。だが、俺のような人造生命体と違い、ヤツの中身は機械だ。戦えば、人の動きを超越した動きをする事は間違い無い。俺と同じモデルと一緒にいるズーマンはソイツと思え」
ダイブマンは忠告するようにユカ達を指差した。ユカは無言で頷く。
「そして、もう1つ。俺のモデルの弱点を教えておく」
「いいのかい? そんな事教えてさ」
チェッシャーは訊ねた。
「構わない。この子を、ダイナを受け入れてくれたお礼だ。それに知ったところで俺を始末する気は無いのだろう? なら、教えたところで何の問題も無い」
「でも、仲間を売る事になるんですよ。それでもいいんですか?」
ユカの言葉にダイブマンは皮肉めいた笑みを浮かべた。
「仲間……ね。見た目が同じならみんな仲間かね? いや、違うね。俺はヤツらとは違う。命令を黙って聞くだけの人形じゃない。ヤツらは、俺の仲間なんかじゃない」
「そう……ですか」
「さて、弱点についてだが、結論から言えば高熱に弱い」
「高熱に?」
ヘイヤは聞き返した。
「そうだ。見て分かるように俺の着ている服は潜水服であると同時に強固な鎧でもある。これは強い水圧に耐えられる事はもちろん、荒事を力づくで解決するのに便利であるようにと設計されたかららしい。ところが、この服は高熱の場所での作業をする事を想定していない。だから耐熱性は無い」
「それは何故?」
「前に言ったように、俺のモデルの本来想定された使われ方は、海底都市の保守・点検作業だ。必要であれば水中に出て、作業を行なう事もある。水中は冷たい。そして高熱になって場所なんて海底火山ぐらいなものだ。だから生産性を高めるために、高熱の場所で行動するための機能は無くしたのだ」
「なるほど。つまり、炎による攻撃なら頑丈な装甲も役には立たないという事だね?」
チェッシャーはニヤけ顔で訊ねた。
「そういう事だ。……貝を焼いて食べた事があるか? アレと同じだ。頑丈な装甲を持っていても、高熱で熱されれば中身は焼かれ、そして死ぬ」
ダイブマンはユカが買ってきたカキのオイル漬けの缶詰を手に取ると、再び皮肉めいた笑みを浮かべる。
「……さて、教えておく事はこのくらいか? 後はお前達次第だ」
「分かった。ありがとう」
ヘイヤが来た道を戻ろうとしたので、チェッシャーとユカも彼の後に続いた。ダイナは名残惜しそうにダイブマンを見つめていたが、少しして彼に手を振りながらここを後にした。
◆◆◆
霧の中、街中を大きな人影が歩いていた。その正体はダイブマン……ではなく、彼と同じモデルの人造ヒューマンである。それも1体ではない。2……3……4……5体いる。
彼らはそれぞれ大きな荷物を持って歩いていた。食料品だ。どこから手に入れたのかは分からないが、少なくても店へ出向いてお金を払って買った物ではないのは確かだ。
彼らは働きアリのように一列に並んで歩き、そしてどこか目的地に向けて真っ直ぐに進んで行った。その目的地とは、もちろん拠点と呼ばれる場所である。そこに荷物を運んでいる最中なのだ。
彼らが歩き続ける中、最後尾を歩いていた、両手にビア樽を持った人造ヒューマンはふと立ち止まると、背後を見た。何か視線を感じたらしい。
しかし、そこには誰もいなかった。『間違い無く誰かが見ていたと思っていたのだが』とでも言いたそうに首を傾げると、彼は前に向き直り列に戻っていった。
そんな彼らの背後には大きな段ボール箱が3つ、通りのど真ん中に不自然に置いてあった。
そして彼らが十分それらから離れていくと、段ボール箱は下から足を生やし、彼らの後を追いかけ始めた。
もちろん、段ボール箱に足が生えるなんてありえない。中に人が入っていて、人造ヒューマン達を追っているのだ。つまり、段ボール箱はカモフラージュである。
それぞれの段ボール箱に入っているのは、ヘイヤ、チェッシャー、ユカである。人造ヒューマン達を尾行している最中だ。
「いやぁ、今のは危なかったねぇ」
チェッシャーは小声で言う。段ボール箱をかぶっているため、彼の表情を見る事ができなかったが、間違い無くニヤけた顔をしているだろうとユカは思った。
「あの……本当にこんなので大丈夫なんですか?」
ユカは同じく小声で、ヘイヤに訊ねた。段ボール箱の中に隠れているだけで本当にバレないのだろうか。正直なところ、かなり不安であった。
「大丈夫、大丈夫。これを使った尾行で失敗した事なんて1度も無いから」
ヘイヤは小声で答えた。表情は見えなくても、彼の顔が自信に満ち溢れている事は容易に想像できた。
ヘイヤ達の作戦はこうだった。
次に霧が出た時、つまり今だが、人造ヒューマン達が荷物を拠点まで運んでいるところを尾行して、拠点までたどり着く。そして、彼らがいなくなったところを見計らって中へと入りこみ、誘拐された人々を救出するというものであった。
そして肝心の尾行というのが、段ボール箱の中に隠れながら後を追いかけるというものであった。いちいち隠れられる物陰を探す必要が無く、気づかれそうになったら立ち止まってしゃがみ、ただの段ボール箱のふりをすればいいという方法である。尾行の方法には色々とあるが、素人のユカでも比較的簡単にできるものを、とヘイヤが考えて提案したのであった。
作戦は上手くいっているらしく、尾行は順調であった。
時々視線を感じるのか、人造ヒューマンが振り返る事が何度かあったが、そのたびにユカ達はただの段ボール箱のふりをしてやり過ごした。バレている様子は無い。
そしてそのままかなり長い距離を歩かされ、ようやく拠点らしき場所の近くまで来た時には、ユカは歩き疲れてしまった。
人造ヒューマン達はとある建物の中へ入り、しばらくすると出てきた。手には何も持っていない。つまり荷物は今の建物の中にあるという事であり、そこが拠点で間違い無いのだろう。
ユカ達は彼らが見えなくなるまで待ってから建物に近づくと、周囲に見張りがいない事を確認した上で段ボール箱を取った。その瞬間、爽やかな風が吹き、ユカはその風を吸い込んで深呼吸した。
すると、ユカはこの風が潮風であると分かった。風が磯臭かったからだ。耳を澄ましてみる。波の音が聞こえる。霧のせいで何も見えないが、どうやら海岸か港の辺りに来たらしい。
ここでユカは、ダイブマンが『集めた物は潜水艦で運ばれる』と言っていたのを思い出した。なるほど、確かに潜水艦を使うというなら拠点はこういった場所を選ばなくてはいけない。陸地の方を拠点にすると、そこからさらに運びだすのに時間がかかるからだ。
そんな事をユカは考えながら、建物の外観を眺めた。一見、漁などで使うような道具を置くための、古びた小屋のように見える。しかしよく見ると、色々と不自然なところがあった。
小屋にしては少し大き過ぎるような気がした。そして窓が1か所も無い。それに壁は一見、潮風に晒されて錆びたトタンでできているように見えるが、よく見ると錆びているように見せかけた塗装である。その証拠に、錆によって剥がれたり欠けたりしている場所が無く、実際に触って壊してみようとしても頑丈でビクともしない。何でできているかは分からないが、単なる小屋にしては不釣り合いな素材である事は間違いない。
何より不自然なのはドアの厳重さだ。今、ヘイヤとチェッシャーが調べているところだが、金属部分を叩けばいかにも分厚く頑丈そうな鈍い音が響き、窓もよく見ればマジックミラーになっていて中が見えない。試す気は無いが、きっと窓は防弾仕様になっていて、その辺の石や岩を投げつけても割る事はできないだろう。
「まいったね。鍵がかかって入れないや」
「どうする? 僕ちんなら頑張れば破壊できそうだけど」
「いや、それは止めておこう。これを壊すにはかなりのパワーが必要みたいだし、そんな事をしたら大きな音がしてバレちゃうよ」
「ふむ、確かにそうだねぇ。ではどうする?」
「ここはピッキングで鍵を開けるしかないよ。静かに事を進めるにはそれしかない」
「え? できるんですか?」
『ピッキング』という言葉に反応したユカは、思わず口を挟んだ。
ピッキングといえば、特殊な道具を使って鍵を開ける事だ。魔法にも開錠の魔法というものがあるが、悪用防止のため、資格を持った人しか習得できない仕組みになっている事から、おそらくは前者、物理的な方法で開錠しようというのだろう。
「うん。一応基礎は師匠から教わったから、何とかなると思う」
ヘイヤはそう言ってパンツの中に手を入れた。きっと、鍵を開けるための道具を取り出すのだろう。ユカはそう思ってその様子を背後からぼんやりと眺めていたが、彼がそのままパンツを下ろして尻を丸出しにしたのを見て、慌てて後ろを向いた。
ユカは恥ずかしさで顔が熱くなるのを感じた。何故パンツを脱いだのか。下半身を晒して何をしようというのか。彼女は全く理解できなかった。しかし、背後から聞こえる会話から何をしようとしているのかだいたい想像がついた。
「目覚めよ! 僕のシンボル!」
「まだだよ……まだまだ……ふむ、これくらいの大きさになれば十分だろうね」
「じゃ、入れるよ……ん……やっぱりキツい……んん……」
「一気に入れようとするからだよ。少しずつ入れて広げるんだ」
「分かった。……ん……ん……うん。少しずつ入ってく……」
「……ふむ、それだけ入れば十分だろうね。ここからが勝負だよ」
「うん。……えっと、ここがこうで、こっちは……あ、痛っ! 引っかかった! 抜けない!」
「落ち着いてゆっくりやるんだ。焦らず落ち着いて」
「痛たた……落ち着いて……落ち着いて……よし、ここだ!」
ヘイヤが言った瞬間、鍵が開く音が聞こえた。しかし、ユカはまだ彼らの方を向けない。
「あの……終わりました? そっち見て大丈夫ですか?」
ユカは恥ずかしさから弱弱しい声を出して訊ねる。
「ま~だだよ……もういいよ」
布の擦れる音が聞こえ、ヘイヤがパンツを履いたであろうと思ったところで、ようやくユカは彼の方を向いた。
彼の顔を見ると、一仕事終えたような満足げな顔をしていた。その顔を見て、やはり彼は『あの部分』を使って鍵を開けたのだと彼女は確信した。
「よし、入るよ」
ヘイヤはドアノブを回し、ドアを開けた。すると、金庫のように分厚いドアがゆっくりと開いていく。
そして彼はチェッシャーと共に中へと入って行った。ユカもすぐその後に続くが、汚さを感じて決してドアには触れないように気をつけて中へと入った。