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乙女 07


 自室に戻ってベッドの中でうずくまった。

頭から毛布を被って手足を縮めて丸まった。


わかってる。わかってる。

私は、望んだ婚姻だった、私だけは。

ゲイル様にとっては政略結婚でしかなかった。

わかってる。あの日からずっと言い聞かせた。繰り返した。

私は愛されていなかった。繰り返して繰り返して。

嫌というほどわかってる。

他に好きな人がいて。

贈り物の日付、古いものも新しいものあった。

気付きもしなかった。

いつ?王宮に出仕していると言いながらネックレスや指輪を持って通っていた?

本当に全く気付きもしなかった。

バカみたい、毎日楽しく過ごして。

泣きたいのか笑いたいのか。お腹の底から広がる重たくて苦しい何かと一緒に、自分のアホらしさに笑いも込み上げてくる。

込み上げてきた嘲笑が口から漏れる。

その自分の声に更に惨めさに輪がかかる。

この笑いはダメだ。

きっとこのまま笑いが漏れてしまうと止まらなくなる。

頭がおかしくなりそう。

もう無理だ。無理だ。きつい。辛い。もう嫌だ。何が?愛されていない事が?裏切られていた事が?それに気付かなかった事が?追い出されるかもしれない事が?何がこんなに辛いのか。頭も痛い。内臓がきりきりと押し潰される。喉に何かがつかえる。嗚咽と嘲笑に押されて息ができない。苦しい。

こんなに辛いのに、こんなに苦しいのに、なのに、前世の(ちがう)私が他人事のように、これはダメだ、ダメなやつだ、落ち着けと言っている。

前世って何だ。頭がおかしくなりそうではなくて、もうおかしいのかもしれない。
















 持ち直しましたわ。

危なかった。あのままだと危なかったです。本当に危なかったですわ。

さすが、アンナは優秀ですわね。

アンナがいなければどうなっていたことか。

自力で引きこもり、ではまだありませんわ。まだギリギリセーフです。まだ引きこもってはおりませんわ。

・・・自力での引きこもりかけた所からの離脱は無理でしたわね。

前回引きこもりかけた後に、また同じ様な事になった時の対処をアンナにお願いしておいて正解でしたわ。

前世でのおばちゃん知識の大活躍でしたわ。今思うと何でおばちゃんになると、健康とか病気とかの豆知識が増えるのかしら?年を取るからかしら?まぁ、役立ったのですもの。良しとしますわ。紙に

1.日光浴

1.おもいっきり泣くか笑う

1.甘い物、温かい物を口にする

1.散歩や買い物

1.お風呂

1.まぁ、良いかと考える

1.寝る

1.気持ちを口にだす。

等々、引きこもりだか、落ち込んだ時だかの対処をとりあえず書いてアンナにお願いした過去の私、良い仕事をしましたわ。


 宝石商が帰った後の私の様子をみたアンナの対応は早かったです、多分。あんまり覚えてはいないのですけれども。

その日の内に侍医がきて診察。

翌日の朝に、窓を全開にされ、あまりのまぶしさと忌避感に布団に潜り込み丸まった私の布団ははがされました。子供にならまだしも、普通は淑女、ましてや主人に対して出来る事ではありません。

そのまま、嫌がる私は護衛騎士(ライアン)に抱えられ、テラスの長椅子まで運ばれました。そこでボーっとするか、泣くかしかできない私にアンナが付き添ってくれました。泣き疲れて、寝落ちして、温かいココアを飲んで、ボーっとしてまた泣いて、寝落ちして、紅茶とチョコレート、散歩、また泣いて、ボーっとしてお風呂。

と、何日かしているうちに何とか気持ちが落ち着いてきて、今に至っていますわ。

気持ちが落ち着いてから、アンナ達に謝罪とお礼を伝えた時の、彼女達の安堵とも苦笑とも何とも言えない表情が忘れられません。今後もよろしくとお願いした時の彼女達の蒼白した笑顔に心労が垣間見えて、本当に申し訳ない気持ちになりましたわ。本当にごめんなさい。

でも、私、今後は大丈夫な気が致します。アンナに気持ちを吐露してしまいましたし。

・・・淑女としては失格ですけども。アンナは良いのです。私が幼い頃から付いてくれている、いわば腹心、姉の様な人ですもの。アンナは特別ですわ。

今後は一人で落ち込まずにアンナに話したり、リリアーナと街にお買い物に行ったり、護衛騎士(ライアン)をアイドルに見立ててキャーキャー言ってみたりして、楽しくポジティブに過ごしますわ。ゲイル様の事を考えるより、遥かに建設的ですわ。

ゲイル様の護衛騎士で結婚してからは私の護衛騎士として付いていてくれるライアン。幼い頃からライアンとゲイル様、アンナと私の4人で一緒にいる事も多かったのですけれども、ライアンは小さい頃から、優しくて爽やかな印象のお兄様。ですけど、今回、私の気をまぎらわせてくれるためにアンナがこっそり教えてくれた、ライアンの失敗話や面白い話で、爽やか素敵紳士のライアンのイメージが変わりましたわ。爽やかで優しくてちょっとうっかりのライアンをアンナと二人で観察するのは憧れの先輩に友人達とキャッキャしていた前世の学生時代(ころ)を思い出して、楽しいですわ。

それにしても、アンナはライアンをよく理解している様に思いますけども、二人は恋人なのかしら?

それだと素敵ですのに。
















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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公に感情移入してしまって最新話非常に悲しいです…すれ違いを期待してましたが贈り物の流れがもう…。 明るくて好感の持てる母なので、娘たちと幸せになってほしいです。 続き楽しみにしております…
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