06
先日、リリアーナ守り隊を(勝手に)発足した(つもり)。
記念にお揃いのネックレスを購入するべく、今日は宝石商を呼びましたの!
リリアーナと私の瞳の色の赤と、オースティンの瞳の色の青の石を使って作ったネックレスで更に仲良し増強を狙いますわ!
デザイン見本も色々あって、やだ、テンションが上がりますわ~!!これは、やっぱり、リリアーナと一緒に選んだ方が・・・いいえ、最初の予定通り、サプライズで!!
これも、あれも、可愛いですわ!!あぁ、でも、オースティンも違和感なく身に付けていられるようにシンプルな方が良いかしら?やだ、もう、楽し~!!!宝飾品、あんまり興味なかったけど、リリアーナ達とお揃いとか、テンション上がる。
そういえば、ゲイル様と一緒にペアのネックレスを作った時も楽しかったわ。学園に入学してから少しして、お揃いのネックレスをつけてるといつまでも仲良くいられるっていうお話をきいて、二人で作ったネックレス。結婚した時も、リリアーナが生まれた時も、この幸せが続けば良いと思った時に作った。そう思っていたのは私だけのようだけど。目頭と鼻の奥が熱い。
胸の辺りがぎゅってなって、掴めもしない心臓を掴む様に服を握りしめてしまう。あれ以来ネックレスはつけていない。惨めになるから。箱にしまって棚の奥に突っ込んだまま。
「・・・奥さま?デザインはお決まりになりましたか?」
あっ!
声をかけられて、ビクッとなってしまったわ・・・やだ、あれ以来つけてないのに・・・服がしわになってしまいますわ。・・・前世でも旦那とのペアルックとか嫌だったでしょ。
娘と一緒が楽しいわ!娘とのネックレスだけじゃなくて、イヤリングとかも、共有して一緒に選んで、楽しくてテンションあがってたし。大丈夫!!楽しいっ!!おしゃれは娘との方が断然楽しいし!今度はリリアーナも一緒に!!
あわてて目の前にあるデザインを指さした。
「このデザインが気に入りましたわ。」
何かしら?宝石商が首を傾げていますわ。
「奥さま、確か・・・」
宝石商が従業員から受け取った台帳を開いて頷いているわ
?何かしら?
「奥さま、そちらのデザインですと、一昨年の結婚記念日に揃いでご購入頂いたネックレスと同じデザインになってしまいます。
そうですね、こちらはいかがでしょうか。同じように花が寄り添っておりますが、葉と蔦が添えられていて、少し雰囲気が変わると思いますが。」
一昨年?一昨年にネックレスなんか作ってない。もらってもない。夜会用であれば作ったかもしれないが、ペアなんて。
小さな花が2つ、寄り添うようにして咲いていて、中心に小さな石を嵌めるようになっている。
そんなネックレス、私は持ってない。少なくとも私の記憶にはない。さっき押さえ込んだ気持ちがお腹の下の方から上に向かってじわじわと広がってくる。胃の辺りがぎゅうとなって息が苦しくなってきた気がする。
深呼吸をするように声を出した。
「・・・そうだったかしら?」
「ええ、こちらでございます。」
宝石商が広げて見せてくれた台帳には確かに同じデザインのネックレスと納品先と日付が記載されている。
本当に・・・
「・・・あぁ、そうだったわ。多すぎて記憶に残っていないのね。それ以前の物で揃いで購入した物も見せて頂けるかしら?」
宝石商が台帳をめくって見せてくれたものは多くはないけれど、記憶にない物が大半を占めている。
それも、それも、それも、記憶にない。揃いのネックレスを私は受け取っていない。見せてもらった物の中で私の記憶にあったのは3つだけ。
他人の購入した物ではない。台帳は家ごとに作られる。この台帳はグレシャル家の物だ。代替わり以前からの記録はあるけれども、台帳の端にゲイル様の名前が入っているという事は、間違いなくゲイル様が購入しているという事。
その後の宝石商とのやり取りはあまり覚えていない。ただただ、胃の辺りから全体がぎゅうっと締め付けられるようで、きりきりと痛むし、息が苦しくて、喉の奥が重くて声が出にくくて、短い返事と石の色の指定だけは辛うじて伝えた。
これは慣れるものではないらしい。更には簡単に浮上できない。胃から広がってくる重くて苦しいもので、目も鼻の奥も熱くなる。その場で泣いていないだけ上出来だと、叫び出さないだけまだ偉いと自分に言い聞かせた。
わかっていたはず。
大事な人に贈り物の1つや2つ。贈っていて当たり前だわ。
苦しくて、息ができない。
あぁ、こうやってルリアは変わっていくのね。