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桃太郎〜彼はこうして生まれました〜

作者: 水島 香
掲載日:2018/12/08

〜???side〜


 遠近感が狂うほどひたすら白い空間に、ピントが合っていないかのようにぼやけた人影がいくつもあった。人影たちは、人のいうところの神と呼ばれる者たちだ。神とは人の思いであるために、何人もいるし性格も多種多様だ。さすがに人間のように自分の会社(せかい)を潰すような(もの)はいないが、わりとテキトーな性格は多かったりする。そんな神々がなぜ集まっているのか? 答えは簡単……


「これより、第…………何回目かは忘れたけど暇潰し会議を始めたいと思います!」


と、いうことだ。


「下界の統治も想いが具現化した(俺たちが生まれた)時ほど不安定ではなくなった」「いまだに、壌土や天候の神々は忙しいみたいだが…………」「そんな事よりも暇潰しだ」


 それぞれがそれぞれの思ったことを口にする。まとまりなんてない。彼ら(神々)は人の強い想いにより具現化した存在であるために、人よりも自分の欲に忠実だ。仕事以外の場では好きなことを好きなようにやるのが神という存在だ。故に協調性など皆無である。この場にいる奴等は特に欲に忠実なのだ……


「少し落ち着け。まずは、暇潰しをどんな内容にするかを暇潰しがてらに決めよう」


…………比較的マシなのでもこんなのである。


「災害を起こすのはどうだ!」「最近は下界で桃が神聖だとか言われてるし桃を中心に」「運命の操作を」「運命の操作は後であいつに説教食らうよ」「桃を食ったら若返るとか」「災害は程度によるが死の神が怒んないか?」「若返るのも後で説教もんだ!」



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


・ ・ ・ ・ ・


・ ・ ・


 長い時間をかけて行われた会議は神々の間でとても白熱した。それこそ、本当に会議自体が暇潰しになるほどに……。それでも相応に時間がかかっただけあり内容もまとまりだした。そこまでいけばトントン拍子に決まっていくのがこいつら(神々)だ。そして…………


「会議の結果、桃に人の魂を埋め込み、桃のなかで人形(ヒトガタ)に形成をする。それがどうなるのかを観察して暇潰しをする(あそぶ)……でいいかな?」


「「「さーんせーい!!!!」」」


「それじゃあ、今日はここで解散! 実行は次の会議で!」


 こうして会議は終わった。会議をまとめていた(比較的マシな)神は、次の会議ですぐに計画を実行に移せるようにあらゆる神に交渉を行った。

 輪廻の神と死の神に、一つの廃棄予定の魂を譲ってもらえるように。植物の神や壌土の神には、桃に人の魂を埋め込むために。他にもあらゆる神に交渉を行った…………。自分の欲を満たすために!! …………なんでこんなのが優秀なんだ?


〜神々side out〜


〜 † * ◎ # ☆ ♪ 〜


〜???side〜


 気がついたら狭い何かに詰めこまれていた。うっすらとしかない意識のなかで、彼はそれだけははっきりとわかった……


「―☆#▲◎*†♪〜〜〜!!」


言葉が言葉にならない。気がついたら狭く暗い場所に閉じ込められて混乱しているなか、言語も奪われていた彼は恐怖のどん底に陥った。

 この状況をどうにかしようともがこうとした。しかし、体が動かない…………むしろ体がない。気が狂うのではないかと思ったが頭のすみでそんな事はないと何故か確信していた。


(私はこれからどうなるのだろうか……)


 彼にはどれだけ時間が過ぎたのかわからない。しかし、長い時をこの狭い何かで過ごしたのはわかった。相も変わらず狭いままであったが、体が作り出された。その体は時間をかけて大きくなっていって、今は産まれたばかりの赤子とそう大差ない程度の大きさだと彼は考えていた。


(狭い…………何故か腹はへらない。体はすこし動く)


 自身の出来ることを確認していた彼は、急に起こった激しい揺れにひどく驚くこととなった。


(何が起きた? 揺れはまだ続いている……。地震か? 違う。薄れていった記憶だが、船に揺られている感覚に近い気がする)


 彼は自身がどこに居るのか知らないため確信を持てていなかったが、似たようなものだ。彼は神々(暇人)によって桃のなかで人の子として成長した。桃は木から地に落ちて、坂を転がり今は川に流されている。


(…………わからん! 考えるのはやめよう。そして寝よう。気にしたところで意味はないのだから……)


〜未来の桃太郎side out〜


〜 † * ◎ # ☆ ♪ 〜


〜神々side〜


 桃に人の魂を埋め込めたのはいいが、神々は暇をしていた。桃のなかで人がどう育つのかは、一部ではいい観察対象になったものの、思ったよりも時間がかかって大半の神々(暇人)にはつまらなかったのだ。実が大きくなってから魂を埋め込むことができなかったため、小さく,実が木から落ちるくらい成長する桃に魂を埋め込み、桃と共に人を成長させたのだが、代わり映えが無さすぎた。そのため、実が木から落ちた時の神々は大興奮した。ようやく面白くなりそうな感じになったのだ。


「「「どこまで転がる!?」」」「どうか止まってくれるなよ!」「「おい木! ジャマ!!」」「…………よし! 川に着いた」「……うわ! 岩がジャマだよ」「「止まるな! どうにかして流れろ…………よし! 流れた!!」」


 とまあ、こんな感じで……。

 この後、桃が流れて来たことに気が付かないでスルーしたお婆さんに文句を言ったり、拾った桃を切ってお婆さんが桃太郎ごと切りそうになって、神だけでなく紙一重で避けた桃太郎自身も冷や汗を流したりして、暇を潰すことはできたとさ。


〜神々side out〜


 後は皆が知っている桃太郎だと思う。これが桃太郎が桃から産まれた理由だよ。

 神々は桃で成功したからと、他の植物でも同じことが出来るか試したようだが結局成功しなかったようだ。まぁ、他に桃太郎みたいに生まれて、英雄になった話がないことからも皆は予想がついていたと思うけどね。

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