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フレンチプレス 1/2

 何気ない毎日、朝起きて夜寝る当たり前でそれが良い、好きなことも特に無く、友達もそんなには居ない、だらだらと雑誌を読み、インターネットのニュースを見る、そして明日が来る。これからもそうなるはずだった…けど変わった、世界がガラリと極彩色に…とはまでは行かないけどモノクロからセピアカラーくらいには。


 ここは何所にでも有りそうな女子高、偏差値も高過ぎず低すぎずの私の家から歩いて十分の丁度良い学校で選んだ理由も近いからが本音だったりする。

 校門を潜り、玄関を経由して自分のクラス入り近くの席の人と挨拶を交わす、周りの人がどうかは知らないけど、今日もモノクロの一日が始った。

 席に着くと周囲はいつもの喧噪に包まれていて、昨日のバラエティ番組やSNSでの事を話していたり、朝食を食べている人も居て、いつもの朝の光景だけどその日は少し違いイレギュラーな事が起きた、それは…。


「ねぇ!聞いた、今日編入生が来るらしいよ!」


 その一言によって周りは一気に編入生の話題に切り替わった。


「えっマジ!」


「どんな子?」


「このクラス?てか何所から?」


「このタイミングで来るんだ?」


 それぞれ思い思いの感想である、正直私も最後のは同意でする、だって今は6月でついでに言うと2ヶ月前に入学式を終えたばかりだから、色々と勘ぐってしまうのは仕方ないと思う。


「キーンコーンカーンコーン」


 各自、様々な想像を膨らませる中、ホームルームの始まりを告げる鐘がなる、そして…。


「はーい、席について、この騒がしさ的に皆さんもう知ってるかもしれませんが、今日このクラスに編入生が来ます、どうぞ入って来て」


 ゆっくりとドアから編入生が入ってくる、その瞬間クラスが一瞬静まりかえった。


「初めてまして本田萌花葉(もかは)と申します、今日からよろしくお願いします。」


 彼女が挨拶をすると再びクラスがざわつきだす、先生は静かにと注意するが止む気配は無い、だって現れた編入生はモデルかと思うくらいの美少女で私でさえ見惚れるレベルである。


「質問タイムとかは特に作らないから後で、好きにやってくれ。えーとっ席は窓際の一番後ろで良い?」


「はい、構いません」


 編入生は改め、本田さんは私の隣の席になった。


「山崎、本田はまだ教科書が来てないから、来るまで教科書見せてやって!」


「わ、わかりました」


 思わず心の中でげっ、と呟いてしまった、正直人付き合いは得意では無い私にとって挨拶以上のコミュニケーションは余り取りたくない、けれど教科書を見せないわけにもいかないので、嫌々承諾する。


「ごめんなさい、しばらくご迷惑掛けます」


「大丈夫です、気にしないで下さい」


 事務的で丁寧な挨拶を交わす、もしや彼女も余り他人と係わらないタイプなのかも知れない、それならこちらも事務的に接すれば問題なさそうと少し安堵しホームルームは終わりを告げた。

 その後、彼女の元には怒濤の質問の嵐がやって来たが私の予想通り、彼女は嵐をなぁなぁな返事でさらっと避け、一日が終わり帰る頃には彼女に声を掛ける人は誰も居なくなったのであった。

 私自身も隣の席で教科書を見せていたが交わした言葉は全て事務的で、結局いつもと大して変わらない一日を終え、帰り支度をしていると。


「今日はありがとうございました、教科書が来るのが来週の月曜日らしいので、それまでよろしくお願いします」


「あぁ、うん大丈夫ですよ、気にしないで下さい、それではまた明日」


「………あの…今日、ご予定等はありますか?」


 事務的な挨拶を交わし今日も終わったなと思っていたら、まさかの返しがやって来た。


「えっと、いえ特には無いですけど…」


「よろしければ、何かお礼がしたいので家に来て頂けませんか?」


「え、えぇ良いですよ」


 この予想だにしなかったお招きが、私のモノクロの世界を少しずつ塗り始めるとは、まだこの時は思いもよらなかった。


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