三話
「やっぱり君は龍咲を選ぶんだね」
「うん、私は浅神君じゃなくて龍咲を選ぶ」
私は多分これからも他の誰でもない龍咲を選ぶだろう。
「ごめんね」
「謝んな、僕が負け犬みたいだろう」
浅神君の目は狂気。そんな嫌な感じが幼いながらに感じ取れた。
「僕は聖那ちゃんを諦めないから」
そう言って去っていった。
ごめんね、浅神君。
「行こうか、龍咲」
「はい、お嬢」
ん、これも夢だったか。
「おはようございます、お嬢」
「だから勝手に入るなって」
寝起きの頭で突っ込む。
「いいじゃないですか、あはは」
「脳天ぶち抜くぞ」
拳銃を隼翔の方に構える。もちろん本物だし弾だって入っている。
「おー、怖い怖い」
「はぁ」
私は拳銃を下ろし、学校に行く支度をする。朝ご飯も作る。
そして朝ご飯を食べる。
朝はどうにも苦手だな。
「朝はやっぱり和食だよね」
何かそこは譲れない。
「お嬢の料理なら何でも」
なんともつまらん感想だ。
さて、そろそろ行くか。
「ごちそうさま」
鞄を持って家を出る。
無言で学校に向かう。
隼翔は学校でも私に付きっきりでいいのかな。隼翔は満足なのかな。
考えてると学校に着いた。
「お嬢、友達は作っといた方がいいですよ」
「隼翔もね」
下駄箱でそんな話をする。
そして教室に向かう。
扉を開け、席に向かう。
「おはよう、聖那ちゃんと龍咲」
「浅神、何の用だ」
隼翔が私の前に出る。
「挨拶だよ、ダメかな?」
相変わらずの能面笑顔、ムカつくな。
「お嬢に近づくな」
「ふふっ、君は相変わらずだね」
あー、本当にムカつく。イラつく。人をイラつかせる神かっての。あー、アホらしい。
私は二人を置いて席に座る。そしたら女の子が近づいてきた。
「おはようございますわ、皇さん」
あー、お嬢様ってやつだな。うん、さすがの私でも知ってるよ。
まあ他人と絡む気はないので無視する。
「貴女は龍咲様と浅神様とどういう関係なのかしら」
龍咲様と浅神様とか似合わないなぁ、笑うくらいに。てかまだ入学して二日目なんだけど、これかよ。めんどくせえ。
「部下とストーカー?」
間違ってはいないだろ、というかめちゃくちゃ的確な気がする。
二人をチラッと見る。
あー、今にも殴り合い始めそうだな。
「ねぇ、私の前で浅神の名前出さないで」
名前を聞くだけでストレスが溜まる。一緒のクラスってだけでもストレス満杯なのにさ。
さて二人を止めるか。
私は席を立ち二人の間に入る。
「はいはい、そこまで。席に戻れ隼翔」
「僕には何も言ってくれないのぉ〜?」
「うるさい」
それだけ言って戻った。
そしたらまだ女の子はいた。
はぁ、めんどくせえ。
「大丈夫ですか龍咲様!?」
隼翔は?を浮かべている。
まあ普通そういう反応になるよな。
「皇さんの部下って」
「それが何か?」
「こんな人の部下なんて可哀想だわ」
あ、あー、トイレデモイコウカナ。
私は教室を出る。問題が起きる前に。
しばらくしてから教室に戻るととても静かだった。
「隼翔、やっちゃったか」
分かってはいたがな、うん。
「お嬢、ほんとすんません」
「別にいいよ」
隼翔は無駄に顔がいいからな、無駄にだけど。
「ただあんま問題起こすなよ」
「はい」
珍しく隼翔がしょぼくれている。そんな姿も新鮮でいいな。
そこに先生が入ってきた。
先生は教室に静かさに困惑してる。ハハッ、面白いな。
「えと、ホームルーム始めます」
話やらなんやらが終わる。聞いてないけどね☆
そして今日もこれで解散だ、一体何しに学校に来てるんだか。
三者面談の予定調査を提出して隼翔と帰る。
「隼翔、ごめんな。私の護衛なんかしてるから」
「いえ、俺は気に入ってますよ」
笑ってそんなことを言ってくる。
まったく、隼翔ってば。本当に優しいよな、一部にはだけど。
「どうしたんですか?」
「どーもしないよー」
今こういう生活ができる限り楽しもう。何があったって楽しもう。
「さっさと帰ろう」
少し早めに歩く。まあ一種の照れ隠しというやつだ。
帰ったら何しようかな、久しぶりに剣でも鍛えるかな。
そんなことを考えてると家に着いた。
「ただいま」
「お帰りなさいませ、若」
若か。何かこのままでいたいような当主になりたいような、よく分かんねえな。
「お嬢?」
「ん?」
「...いえ、何でも」
何だろう、特に用事もなく呼ぶなんて隼翔にしては珍しい。
部屋で着替えとか済まして昼飯を作る準備をする。
今日は何がいいかな。
「隼翔ー、何食べたいー?」
「そうですね、炒飯ですかね」
炒飯なら簡単にできるしいっか。おかずはやっぱ中華だね。
まず炒飯を作り始める。あんまパラパラにはならないけどそこそこではあると思う。
おかずは回鍋肉を作った。何故かって?そんなの気分だよ。
まあそうして出来上がってお皿に盛る。
「相変わらず上手ですね」
ふむ、やっぱ褒められるのは悪い気分じゃないな。
「ありがと」
テーブルに運び椅子に座る。
「頂きます」
「俺も頂きます」
味は...実際言うと普通だ。シンプルイズベストとは言うけどね、というか言うこともあるけどね、うん。
「美味しいです、お嬢」
隼翔の顔見てたら普通とかどうでも良くなってくるのは何故だろう。不思議だ。
「俺も料理始めようかなぁ」
「あー、いいんじゃない」
料理ってボケ予防になるらしいし。いやまあ年齢的にまだ大丈夫だろうけど、ボケの方は。
「そういえば隼翔の趣味って何?」
「お嬢の護衛です」
笑顔でそんなことを言ってくる。てか、趣味だぞ趣味、仕事じゃないぞ。
「そんなこと笑顔で言うな」
「いいじゃないですか」
良くねえとか思いつつ話の続きをする。
「趣味の一つくらい持っといた方がいいよ」
「そうですねぇ、何か始めようかな」
そう言う隼翔に私はとりあえず読書とか絵描きとか王道なのを勧めた。
そうすると読書を始めると隼翔が宣言した。
「まあ頑張って」
「ええ」
それくらいしか言う事がない。だから別に冷たいわけじゃないんだ、誤解しないでくれよ。
「お嬢こそ、料理以外にないんですか」
私か、私の趣味は料理以外だと読書とトランプかな。
「読書好きだよ」
敢えてトランプは言わない。隼翔に熱中されたら少し困るから。
「そうですか、お勧めの本あります?」
「いろいろあるけどそうだなぁ、本棚にある本興味あるの適当に取って読みな」
隼翔は私が勧めれば興味なくとも全部読むだろう。でも最初は自分の興味あるものを読んでほしい。
「お嬢らしいです」
私らしいって何だよとか思いつつ食器の片付けをする。
あと人の心勝手に読むなよ。
「読んでませんって」
読んでんじゃねえか!
内心ツッコミながら何も言わない。ここで何か言ったら負けだ。
「酷いなー、俺でも傷つきますよ」
勝手に傷ついてろが感想だ。ここで何かお世辞を言うほど私は優しくできていない。
「そういえば隼翔、明日学校休みだね?」
「そうですね」
だから?という風にしてる隼翔。今思いついたんだけどね。
「明日休暇あげる、気分転換しておいで」
「しかしお嬢の護衛は」
「一日くらい違うやつにやってもらえばいいんでしょ?」
隼翔はあんまり休まないから時には休息も必要だ。しかも自分からは休暇取らないから毎回無理矢理取らせる形にまっている。
「そうですが...」
「大丈夫だって、隼翔は休んだ方がいいよ」
「分かりました」
まあ護衛なんぞいなくたってどうにかなるんだけどね、私ってちょーっとだけ強いし。
「お嬢、かなりの間違いです」
だから勝手に心読むなっていっつも言ってるのに。いつになったら直るんだか。
というわけで護衛なんかいなくても大丈夫なんだけど相手殺しちゃったら困るという理由で護衛が付けられている。いわゆるお前は手出すなといわれてるようなもんだな。
「お嬢、手出しちゃダメですよ」
「分かってるって」
さすがにどうしようもなくならなきゃ手出ししない。
「さて、私は勉強するから」
「分かりました」
とはいえ中学レベルの勉強など簡単すぎてやらない。やるとしてもいつも大学レベルだ。専門分野は興味あるのを勉強する。まあ興味なくとも使えそうなのは一応やっておく。まあ結局一通りやっている。
隼翔の方は本を探していた。
興味あるの見つかるといいな。そして本の良さを分かってもらいたい。紙媒体というのはやはりいい。
という話がしたいんじゃなくてね、うんそう。
まあいいや勉強しましょう。
勉強を始める。そこからしばらく時間が経った。時計を見ると二時間くらいやっていたようだ。
隼翔の方は真剣に本を読んでいる。
何かあんな顔久しぶりにみたな。
さて夕飯の支度でもしようかな、仕込みだけでも。というか何作ろう。
たまにはイタリアン?カレーとかシチューでもいいけど、和食もいいなぁ。
「カレーにしましょう、カレー」
「分かった」
カレー粉あったかなぁ。
冷蔵庫を見るけど少し具材足りないか、仕方ない買いに行こう。
「カレーの具材買いに行くけどどうする」
「もちろん行きますよ」
だと思った。
「じゃ、早く行こ」
「はい」
財布だけ持って家を出る。一番近いスーパーに行く。まあ一番近いって言っても5分くらいかかるんだけどね。
「春ですねぇ」
「春だなぁ」
でも私は秋のが好きだ。暖かいより涼しい方がいい。
花粉はないからいいけど。
スーパーにつくと一通りのカレーの具材と飲み物、お菓子、アイスを買う。
「買いすぎです、特にお菓子」
「別にいーじゃん、私の稼ぎ...今は小遣いだけど、まあそれなんだから」
私は高校生になったらいくつもの会社の社長に就任する。今その会社には別の社長がいるが実質動かしているのは私だ。
「そうでした」
そして帰る。あ、ちゃんと荷物は私が持ってるよ。
そういえばどうして組長とかじゃなくてボスなんだろう。
ほら、ヤクザといえば組長だろ。
まあどうでもいっか。
「お嬢のカレー楽しみですね」
確かにあんまカレーって作らないな。
何かほら、手抜き感あるじゃん。隼翔に言ったら否定されそうだけど。
「カレーだし、帰ったら作り始めるかな」
カレー作るの久しぶりだなぁ。焦げないといいけど。
そんなことを考えてると家に着いた。
「カレー作るから本でも読んでて」
「分かりました」
私はカレーを作り始める。中辛だけどいろいろ入れて中辛よりも少しだけ辛くなる。
まあ一時間くらいで出来上がり、味見してみるといつも通り普通の味だった。
ま、いっか。
夜になるまで勉強する。
そして夜になりカレーを隼翔と一緒に食べる。
「美味しいですね」
「なら良かった」
食べ終え、皿とかを洗って風呂とか入ったりいろいろして寝る準備をした。
「隼翔、読書楽しい?」
「ええ、すごく」
なら嬉しいな、うん。
「さて、寝るか」
「はいお嬢、おやすみなさい」
「おやすみ、隼翔」
そして私は寝た。
相変わらず面白い作品は書けませんね、文才ほしい