第八十六話 閑話休題その5 ヘロデ王のクリスマス
ー6月某日、高峰クリニックにてー
「パパ! これ花音にも買って! 新しいママ!」
「ああ、駄目ですよ、花音ちゃん。僕の秘蔵のオリエント工業製高級リアルラブドールのさとみを押入れから引っ張り出しちゃ」
「おい竜胆、貴様印税何に使ってんだよ! 花音、これ六十万ぐらいしてパパとても買えないから、いつかサンタさんに頼もうね」
「あ〜らリンちゃん、いい趣味してるじゃないの。そういえばサンタクロースは南極に住んでるらしいから、南極1号くらいプレゼントに持ってくるかもね」
「サンタって確か北極だろ! てか羊女、なんで今日に限ってトナカイヘッドなんだよ!」
「あら太郎ちゃん、今羊マスクはクリーニング中だから、仕方ないのよ。ちなみにこれはクリスマス用だけど、あの時期はサンタコスしてくるステディが多くて嫌になっちゃうわ〜」
「何が嫌なんだよ?」
「サンタの白いお髭があたしの繊細なア◯ルにチクチク当たって痛いのよ。太郎ちゃんも、誰かのを舐め舐めしてあげる時は、マナーとしてちゃんと髭を剃らないとダ・メ・よ」
「聞いた俺が悪かったよ! てか舐めねーよ!」
「そういえば皆さんは、子供の頃はサンタを信じてましたか?……って皆記憶無いんでしたね」
「サンタフェなら18歳未満の時の撮影だと私は信じているぞ」
「意味わかりませんよ司令!」
「まあ、ジャンプでも以前両さんが、『クリスマスはSEX! バレンタインもSEX!』とかこっちが引いちゃうくらい連呼していたし、最近のお子様はサンタよりもSEXかもしれないわね〜」
「……」
「でもサンタは信じませんけれど、以前奇妙なことがありましたね。5歳の時、幼稚園で大好きだった同級生の女の子の李布ちゃんに、クリスマスの一週間前に、自作のクリスマスカードをあげたんですよ」
「へー、意外と子供らしいところあるじゃないか、竜胆君」
「彼女はすごいロリ爆乳で、毎日一緒に遊ぶついでに、こっそりボインタッチするのが僕の日課でしたね」
「少しでも褒めた俺が悪かったよ!」
「で、そのカードなんですが、聖母に抱かれた産まれたばかりのキリストを、東方から来た三博士だのなんだのいろんな人々が拝んでいる図柄でしたね。当時神童だった僕は、聖書を途中まで読んでいましたが、生誕まではたどり着かなかったので、想像でそのシーンを絵に描いたんです。もちろん聖母は搾乳してますよ。セットの手コキはさすがにないですが」
「ホワイトクリスマスってやつね〜」
「もういいよ! 勘弁してよ!」
「でもそれから、李布ちゃんのまわりに怪奇現象が起こるようになったんです。なんでもクリスマスツリーのオーブが皆血塗れの子供の生首に見えたり、クリスマスソングに混ざって赤ん坊の泣き声が聞こえたりして、ノイローゼになり、幼稚園に来なくなっちゃったんですよ」
「クリスマスキャロルってやつね〜」
「だいぶ違うだろ! で、どうしたんだ?」
「その頃僕は、幼稚園での唯一の楽しみである巨乳トスが出来なくなり、退屈なので聖書を読み進めたところ、自分の間違いに気づき、怪奇現象の原因らしきものがわかりました。そこで、聖夜にこっそり乳香と没薬と黄金とピッキングツールと火炎放射器を持って、彼女の家へ不法侵入することとしました」
「普通に入れや! てか何だよそのRPG的なアイテムは!?」
「サンタの真似事がしたかったんですよ。あいにくサンタコスは持ってなかったのでしっとマスクを被ってパンツ一丁でお宅訪問したら、深夜なのに癇癪を起こした彼女が荒れ狂っている真っ最中で、エクソシストハウスみたいな惨状になってました」
「何故しっとマスク!?」
「クリスマスの正装です。そこで僕は驚くご両親をすり抜けると、李布ちゃんのおっぱいを揉みしだいてリラックスさせ、いつもしてあげる一発芸……彼女のおっぱいを僕の両腕で上下から挟んで押し潰し、『マンモグラフィー!』と叫んだら、彼女はやや安心したようで、落ち着きました」
「いい話だなこん畜生!」
「そしてプレゼントの三つの品を渡し、代わりに壁に飾られた、僕の渡したクリスマスカードを壁ごと火炎放射器で焼き払い、『これでヘロデ王の呪いは解けたよ』と言うと、李布ちゃんは『ありがとう、竜胆くん』とはにかみました」
「バレバレじゃねーか! てかヘロデ王って誰?」
「キリストの誕生を恐れ、ユダヤ人の二歳以下の男児を皆殺しにした狂王、と聖書では言われており、史実でも自分の妻や子供たちを次々と殺しています。
三人の博士は最初に彼の元を訪れ、新たに生まれたユダヤ人の王の居場所を訪ね、王も『場所がわかったら後で自分も拝みに行く』と答えたため、純情だった僕はすっかり騙され、彼を生誕シーンに描いたのです」
「……何故それが怪奇現象と関係あるんだ?」
「李布ちゃんの家は一家揃って敬虔なクリスチャンだったので、彼女は密かに絵の矛盾に気づくも、せっかく貰った大事なカードを捨てられず、そんな背信的な絵を飾る罪悪感に苛まれて、幻覚を見るまでになっちゃったって訳ですね」
「そうか、真面目すぎたんだな、彼女は」
「ネタバレって時には大事よね〜」
「じゃあ、ちょっと早いけれど砂浜さんにはクリスマスプレゼントをあげときますよ。どうせ金欠でお困りでしょうから」
「悪かったな! てか早すぎるよ!」
というわけで、俺は何故かしっとマスクを貰った。いらねーよ!
メリーしっとの心!というわけでお約束通り特別編をお送り致します。では、大晦日にまたお会いしましょう!