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第八十五話 謎は全て解けたけど、解けない方がマシだった!orz

 ブリブリブリブリブリブリブリブリ! ボチャン!


「あっ、砂浜さん、出ましたよ! コングラッチュレイプ!」


 凄まじい下痢とともに、明らかに便ではない黒い物体と、白色に光る何かが便器内に落下した。


「よし、拾うぞ!」


 俺たちは苦心しながら、何とかその二つの品を汚水の海から引き上げた。


 間違いない、黒いものは阿弥陀如来の立像であり、白色のものは入れ歯だった。


「二つとも飲み込んじゃってたというわけですか……しかし、入れ歯はともかく、何故仏像まで? 種付けブレス!」


「その答えは、あなたがよくご存じじゃないですか、篠原さん?」


 ここでようやく俺は、犯人を問い詰める探偵の顔になった、といっても単にドヤ顔をしただけだが。


「あなたは入れ歯が無くなってから、毎朝ボケた清水さんにち○こをしゃぶらせていたんでしょう。


 だから彼は、今朝、仏像をあなたのブツと勘違いして咥え、ついごっくんしちゃったんですよ」


「あはっ、ばれちゃいました? 清水さんの歯無しお目覚めフェラは最高だったもんで、つい頼んじゃってたんですよ、イラマチオ!」


「アホかーっ! バカバカバカーっ! ま◯こ! おげええええええ!」


 自分で真相を喋っている最中に、俺は吐き気を催し、便器に盛大にゲロをぶちまけた。



 午前のやわらかな日差しが差し込む県立天神病院の作業療法室にて、南1病棟の入院患者達は、三名の作業療法士が見守る中、様々な手作業を、皆黙々と、または小声で談笑しながら行っていた。


 トートバッグや小箱、バッグ、ティッシュケースなどのネット手芸をする者、セーターや帽子、クッション、シュシュ、抱き枕などの編み物をする者、計算パズルや書字プリント、塗り絵などをする者、知恵の輪やジグソーパズル、積み木などをする者……。


 二十畳はある広い室内は、静かながらも活気に満ちており、徐々に出来あがっていく色とりどりの作品が花畑のように咲き誇っていた。


 片隅の木製の棚には作業用の器具や作りかけの小物が並び、特に優秀な物は壁に飾られ、日の光を受けて輝いていた。


「精神科では、各々の患者の精神障害に対し、応用動作能力または社会適応能力の回復を目的として、個々に工夫された作業が考案され、実行されてきた。


 ここ天神病院では週二回の作業療法がプログラムとして組み込まれている。


 お前さんも暇にしていたらろくなことをしないだろうから、やってもらうぞ」との主治医の命を受け、俺も本日から参加することとなった。


 今日は見学との事で、いろんな人の作業を見て回っている。まずは自分にあったものを選ぶというわけだ。


 中にはぼぅっとしてまったく手が動いていなかったり、涎を垂らして高いびきをかいている者もいたが、作業療法士達は別に注意するでもなく、椅子の間を回遊し、アドバイスやチェックをしていた。


 大声を上げる者や道具を投げる者もおらず、至極平穏無事な午前の光景だった。


 海野思羽香は鼻歌を歌いながら、病院特製の編み機を利用して、リリアン編みで青いマフラーを作っていた。


 土台の板に何本も棒を立てた編み機にひたすら青い毛糸を棒に幾重にも巻きつける単調な作業だが、蜘蛛の巣のようにかけられた太い毛糸が徐々に纏まってマフラーになっていく様は、他の患者達に比べても中々優雅で、不思議な魅力があった。


「師匠、精が出ますね。何かいいことあったんですか?」


 俺は小声でそっと話しかけた。


「ま~ね、これからありそうな気がするのさ~、フフン。それにしても、あなたも昨日うまく仏像を探し当てたそうじゃないの」


 師匠は糸を巻きつける手を休めず、返事を鼻歌に織り交ぜた。相変わらずの情報通だ。


「師匠のおかげですよ。仏像の形と、行方不明の入れ歯、それに篠原がホモ野郎で、清水の爺さんと昔から知り合いだというのがヒントになりました。


 篠原の汚言にゲイ用語がそれとなく混じっているのに、途中で気付いたんです」


「そうか、あなたは知らないんだっけ。あいつは元エリートサラリーマンだったけれど、男児性愛者のド変態で、いろんなシャレにならない事件を起こしちゃって、ここに強制入院になったのよ」


「それを早く言ってくださいよ!」


「ハハハ、ごめんごめん。先にネタバレしたらつまらないかと思ってね。でも、探偵ごっこも面白かったでしょ?」


「まあ、退屈しのぎにはなりましたがね。酷い落ちでしたけれど。ジッチャンにナニかけてたわけですからね!」


「キャハハっ、なかなかうまいね」


「それにしても師匠は、どうして坐薬なんか持っていたんですか?」


「坐薬だけじゃなくて、胃薬でも睡眠薬でもなんでも持ってるわよ。


 飲んだふりして少しずつ溜め込んだり、他の患者と交換したりして、いざという時のために隠し持っていたの。


 看護師に頼んでもくれないこともあるし、こういう時便利よ」


「な、なるほど……」


 俺は、師匠の用意周到さに舌を巻いた。病院で生きるすべを心得ている。俺なんぞまだまだな、と思い知らされた。


 その時、背後の大きな影が、ゆっくりと動いて、こちらを振り返った。

というわけで、いつもひどい落ちでアレですが、誠にすいませんが、年末で公私共に色々ありまして、今回だけ特別に二週間お休みさせて下さい(クリスマスイブだけなんかあるかもしれません)。

次回は12月31日更新再開予定です!

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― 新着の感想 ―
[良い点] じっちゃんのナニかけるな(´;ω;`)
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