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第八十四話 汚食事中の方は絶対に読まないで下さいその2

「おや、二人ともおそかったですね、ア○ルローズ!」


 奥村と一緒に自室に戻ると、いつの間にやら肉まん野郎がベッドに寝転がって、「風と木の詩」という少女マンガを読んでいた。


「篠原さんこそどこ行ってたんですか!? 探しましたよ!」


「僕は図書室に本を借りに行っていただけですよ、ア○スの鏡!」


「ああ、そうでしたか。ところで……」


 汚言については華麗に無視しつつ、俺が彼にも仏像について尋ねると、師匠の予想通り、立像との事だった。


「よう、探偵さんよ、そろそろ関係者を皆集めなくてもいいのかい?」


 ベッドに腰掛けて、何やらよくわからないジャージ姿の薄汚いオヤジの絵をA4用紙に描いている自称画家が、俺をからかう。


「ていうか関係者皆ここにいるでしょーが! ちょっと待ってくださいよ……」


 俺は、必死で頭を巡らせる。師匠の話では、仏像が坐像か立像のどちらかがわかれば真実に近付けるとの事だが、皆目見当がつかない。


 紛失物が黒い古惚けた立像だったからといって、どうだというんだ?


「ところで、伊頭遺作のイラストは完成したんですか、奥村画伯? 出来たら見せてくださいよ、逆行性射精!」


 読書中のデブが、「性欲」と書かれた扇子を広げて扇ぎながら、奥村に話しかける。それどこで買ったんだ?


「まだまだ時間かかるからもうちょっと待てよ。残り二兄弟も一緒に描くつもりだし。やっぱエロゲーの竿キャラは濃い方がいいよな」


「今度は『学園ソドム』の灰田重義もお願いしますよ、エステティカ!」


「ああ、また今度な。陵辱ゲーなら任せとけ」


「って何描いてんだよあんた!」


 我慢できずに俺は思わず突っ込んでしまった。


「いやなに、好きなキャラをうろ覚えでどれだけそっくりに描けるか篠原に判定してもらってんのさ。画力が落ちないようにな」


「はぁ……さいですか」


 疲れた俺は、再び推理モードに戻ろうとするも、どだい無理な話だった。


 むしろ探索の間に聞いた、う○こやらエロやらの仏教説話がノイズとなって正常な思考を妨げ、ろくな考えが浮かんでこない。


 篠原の読みふけっているコミックスも、どうやらホモ漫画らしいし、頭が痛くなってくる。


 入れ歯を無くした老人の独語がふがふがふがふがとうるさいし、まとまるものもまとまらない……って、入れ歯?


「そういえば、清水さんの無くした入れ歯ってのも、まだ見つからないんですか?」


 俺は、誰ともなしに、質問した。


「まだ全然見つかってないですよ、オケ専!」


 篠原が本に顔を落としたまま、こちらも見ずに答える。老人は、まだ何かわめいている。口元から白いものを垂らして……。


「……わ、わかったぞ!」


 突然俺の脳髄を覆っていた霧が一瞬にして蒸発し、全てのピースが、あるべき場所に収まった。


 真実にたどり着いた俺は、爽快感よりも、激しい不快感とともに、嘔気が押し寄せた。


「ぐぼあああああああああああああああああああ!」


「ど、どうしたんですか、砂浜さん!? パフィーニップル!」


「お、おい、俺のベッドにかけるんじゃねぇ!」


「はひはははほほへほ、はへはんへふはは?」


 部屋の住人が慌てふためく中、俺は、世の中には知らない方が良かったことがあるってことを思い知らされ、謎を解いたことを後悔した。



「……どうしても真相を言わなきゃいけませんか?」


「ええ、是非伺いたいですね、ガールレイプスボーイ!」


「そうだぞ、お前のせいで床掃除までするはめになったしな。


 それに俺ぁ、ドラマみたいな探偵が推理を披露するシーンってのを、一度実際に見てみたかったんだよ。確か崖から飛び降りるんだろ?」


 現実世界で凶悪事件を起こしているやからが、探偵ものに憧れていたとは知らなかった。


「なんかいろいろ違いますよ! そこまで聞きたければ発表しますけれど、絶対後で文句を言わないで下さいね」


 俺は念のため釘を刺したが、一同の意思は変わらなかった。やれやれ。


「ただ、正しいかどうか証明するためには、あるものがいります」


「ん? なんだ? この病棟にあるものか?」


「ええ、必ずありますが、手に入るかどうか……看護師に頼むのは、事を大きくしたくないので、出来れば避けたいんですが……」


 俺が、その物品について説明すると、奥村はしばしの間考え込んだが、「おっ、そうだ、思羽香ちゃんなら持っているかもしれん」と沈黙を破った。


「えっ、師匠が!?」


「そうと決まれば善は急げだ。貰ってこい。決行は今日の夜九時半、看護師の巡回の合間だ」


 殺人画家はてきぱきと、その場を仕切り始めた。



 夜九時半。


「ぐごー、ぐごー」


「おい、言いだしっぺ、起きろよ!」


「無理ですよ、奥村さんは、就寝時の眠剤を内服したら、すぐに眠ってしまうんですよ、このトコロテン野郎!」


 篠原の言う通り、いくら叩いても揺さぶっても、眠れるサイコキラーの瞼はびくともせず、俺たちは彼を起こすのを諦め、三人だけで計画を実行することになった。


 俺と篠原は、さっそく寝ぼけてふらふらの清水を両脇から助けて男子トイレまで連れて行くと、洋式の大便用便器に座らせた。


「よし、これを入れるんだな……トホホ、何でこんなことやらなくちゃいけないんだよ」


「頑張って、探偵さん! Dude!」


「はいはいっと……」


 俺は、渋々昼間に師匠から頂いたブツを、ズボンのポケットから取り出した。


 小さな和紙の袋に包まれたテレミンソフト3号坐剤、いわゆる大腸刺激性下剤というものだ。


 俺は、本当に嫌で嫌でたまらなかったが、泣く泣くその座薬を、老人のしなびたア○ルに挿入すべく、ケースから取り出した。ファック!

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