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第五十七話 内臓レディってどこで読めるの?

『いいか、エロンゲーションは感情の波が実体化したものだ。


 よって、強い感情や欲望に誘発され、こちらの世界に出現する傾向がある。


 唇型の時は情報不足だが、風俗店の看板から実体化したというネットの書き込みがあったし、砂浜氏が倒した乳房型の場合は、コンビニでとある男性がエロ漫画誌をこっそり立ち読みしていた時に発生したというはっきりした目撃情報がある。


 私が個人的に調査した結果、彼はこともあろうに竜胆君が執筆した漫画のページを開いていたという。


 明らかに巨乳好きだったのだろう』


「ということは、その男性のおっぱいに対する情熱が、あの怪物を現出させたってことですか?」


 俺は司令の熱い語りの途中にも関わらず、疑問点を述べてしまった。


 こいつは結構重要なことかもしれない。


『おそらくな。そして今ユミバちゃんの目の前にいる通り、触手化した大腸や小腸が、レイコちゃんと思われる死体から伸びているだろう? 


 これは私の推測だが、そこの腐れプロデューサーに捨てられたシンコちゃんが絶望のあまり切腹した時、強い負の感情が次元の扉を開き、エロンゲーションを現世に召喚したのだ。


 ただしそやつは結構知能が高いタイプのエロンゲーションで、ただ暴れて消えるのを良しとせず、彼女の腸に寄生し、共存を図ったに違いない。


 先日うちのトイレに出現したのも寄生タイプだったろう? 


 また、男性声優を喰らった時に、その操演技術も獲得したのかもしれない』


「なるほど、そしてシンコちゃんの身体からレイコちゃんに寄生先を変え、今またユミバちゃんに移り住もうとしているってことですか」


 俺はようやく事の真相を理解した。


 このエロンゲーションは人間の死体に寄生する、知性を持ったタイプだったのだ。


 これは今までとは違って強敵かもしれない。


「ご高説はよく賜ったけれど、司令は一体今何処をほっつき歩いてんのよ!?」


 羊女が至極もっともなことを問い掛ける。


『ユミバちゃんの後を追おうと思ったら、ドブとサブに足止めされ、未だに観客席に、他の面子と一緒におるんだよ。


 すまん、こんな事になるならなんとしてでもついて行くべきだった』


『……大丈夫、ここは僕が乗り切って見せるさ!』


 ユミバちゃんが、自分に活を入れるように、実際に大きな声に出して答える。


『先程から何やら独り言ばかり話されているようですが、結論は出ましたか? ふぁ……』


 慇懃無礼な大男が、待ちくたびれたように軽く欠伸をしながら口に手を当てる。


 まったく無礼千万なやつだ。


 俺は今後絶対MHKに受診料を払わないことを心に固く誓った。


『ああ、全面戦争だ!』


 女志士から女ランボーへとクラスチェンジした彼女は、ガトリングガンの持ち手を力強く握りしめると、引き金を引く。


 たちまちモーターが駆動を開始し、銃身が唸りを上げて回転しながら、アクション映画の如く景気良く銃弾を撒き散らす。


 さすが稀代のガンスミスが無茶振りを聞いて作成した高火力兵器だ。


 本来生身の人間が手に持って戦えば反動で吹っ飛ぶはずだが、小柄な彼女でも扱えているところを見ると、謎の超技術が使用されているのだろう。


 しかし俺はその時、わぬわぬだったものが、燐光を纏って淡く輝き出したのを見逃さなかった。


 薄い被膜が触手全体を覆い、フルメタルジャケットを豆粒の如くはじき返す。


『ハッハッハッ、くすぐったいわぬー!』


『な、なんだって!?』


 予想外の反応に、攻撃を続行しながらも青ざめるユミバちゃん。


 壁をも穿つ機関銃掃射が、蚊が刺した程度にも効いていないのだ。


「あれは……エンジェルズ・エプロンか!?」


『以前も説明しただろう、エロンゲーションもOBSのエンジェルズ・エプロンと同様のバリアシステムを有していると』


 司令の横やりが入る。そういやそうでしたっけ。


 わぬわぬは弾が当たった箇所を、わざとらしくポリポリと細めの触手でかくと、少しづつ前へと歩を進める。


 必然的に、ユミバちゃんは徐々に後退し、部屋のドアまで追い詰められていた。


 このままだと、後数秒で二人はチークダンス状態になるだろう。


『ぐがっ!』


 その時、わぬわぬの被膜に当たり、後方に飛んで行った跳弾が、竹之内Pの眉間を貫いた。


『竹P!』


「うわっ、こりゃやばい!」


「あららら、あんなところで観戦しているから……」


 血と脳漿を撒き散らしながら、巨漢の身体が触手生物へと倒れかかり、余裕綽々だった怪物も、一旦気を取られる。


 その隙に、ユミバちゃんは肩でドアノブを器用に回してドアを開けると、今や魔界もかくやという状況の控室を飛び出した。


『ユミバちゃん、待つんだわぬー。


 しょくしょくしょくしょくしょくしゅっしゅ!』


「おげぇっ!」


 長い廊下を銃器を担いで走り去る彼女が、ダッシュ直前に目にした室内の風景は、嬉々として触手を振りまわして、竹之内Pの遺体を細切れにする魔物の姿だった。

というわけで、盛り上がってきたところ、誠にすいませんが、またもや一週間お休みさせて下さい。

次回は10月29日更新再開予定です!

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