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第四十八話 性欲魔人

「竜胆……頼もしい奴だ……!」


「ああ! この俺が神に感謝することがある。奴が敵ではなかったことをな……ってついこの前敵だったような気がするけど」


 司令と俺が男塾ごっこをしている間、袴姿がやけに似合う竜胆少年は、一人ドブとサブの股間を凝視していた。


「うーん、トランクスとブリーフの違いはありますが、どちらも大きさはほぼ互角のようですね……」


「さすがにあそこの大きさだけじゃ性欲の比較は出来ないんじゃないの? 玉も大事よ」と羊女。


「いや、それだけじゃないだろ!」


 さすがに俺も、遊ぶのをやめて突っ込んだ。


「ま、今のは事前の下見のようなものですよ。


 確かに性器の大きさは、そこまで重要じゃありませんからね。


 性欲は、脳やホルモンが関与するところが大きいですから」


「確かに、君自身がそのことをよく体現していると、俺は思うよ」


 俺は、サイコ性欲魔人小僧を暗に褒め称えた。


 こいつほどの性獣に出会ったことは、俺はまだない。若いって恐ろしいな。


 やはり人間見た目じゃ本性はわからないものだ。


 一見ドブの方がサブより性欲絶倫に思えるが、それは素人判断かもしれない。


「で、どういう質問にするのよ、リンちゃん。


 一日のオ○ニー回数でも聞いちゃう?」


「それは当然アウトでしょうね。


 そもそもチ○ニーは除外されるかもしれませんし」


「そこまで考えてるのかよ!」


「乳首! 尿道! ア○ル!」


「おっ、さすが花音ちゃん! それらも特殊オ○ニーとしては重要な部位ですよね。


 確かにただ聞くだけではドライオーガズムなどの体験まではわからないでしょう」


「……」


 俺は我が子の学習ぶりに、驚くやら悲しくなるやらで、居たたまれない気持ちになった。


 女の子は人前でワイ談出来ないんだよ!


『質問まだー? あんまり遅いと閉め切っちゃうよー』


「くっ、せっかち主催者め! 竜胆! 早く!」


「わかりました。最新性医学知識を駆使してお答えしましょう」


 少年はまなじりを決すと、大きく息を一つ吸い込んだ。


「では、一つ目の質問です。お二人は、既婚者ですか?」


『うーん、なんか一つの質問で二つ聞いてる気がするけど、君可愛いから許すよ!』


「僕の方があなたよりも年上だと思いますが……ありがとうございます」


「で、答えはどうなのよ?」と羊女がせっつく。


「焦らずとも答えるでそうろう。拙者は帯妻しているでござる」とドブ。


「自分も同じです」とサブが続く。


 二人ともライガとフウガのように裸で突っ立ったままなのが不気味だ。


「では、すかさず二つ目の質問です。お二人は、お子さんは何人おられますか?」


『んー、まあいいよ、OK!』


「四人でござる!」


 ドブが右手を挙げ、指を四本立てる。


「右に同じく」


 サブも左手を挙げ、指を四本立てる。


 なんか二神風雷拳でも使ってきそうなポーズだ。


「こ、これは……単純に比較できんな」


 司令がうめき声を上げる。確かに難問だ。


「く、この少子化のご時世に、四人もだと……このブルジョアどもめ! 


 貧乏人の子沢山なんていったの誰だよ!」


 俺は、まったく関係ないところで嫉妬心が噴出するのを抑えられなかった。


 俺なんか一人養うだけでも精一杯だというのに。


「ロシアの諺でも、『貧者が結婚すると夜が短くなる』というでござるよ。


 時代が変わったでござる。気にしない気にしない」


 ドブが、やや憐みの視線でもって俺を見つめる。


 こんなもじゃもじゃペーターに同情なんかされたくない!


『じゃあ、次の質問で最後だよー。よーく考えよー!』


 能天気な天使の声に、俺は一旦自分の経済問題は棚上げし、現実と向き直ることにし、少年に耳打ちした。


「竜胆君、なんかやばそうだけれど、勝算はあるのかい?」


「全ては計算通りですよ。ご心配なく」


 彼は薄い唇に蛇のような舌を這わせて湿らすと、双眸に嗜虐的な光を湛えた。


「では行きますよ。三つ目の質問です。


 お子さんの男女の内訳を、それぞれ教えて貰えますか?」


「えっ?」


 俺は思わぬ質問内容に、一瞬戸惑ってしまった。


 そんなことが重要なのか?


『そんな質問でいいの? こちらとしては全然いいけど』


 どんなときもケロッとしているユミバちゃんの声音にも、やや疑問符が混じっている。


「早く答えて下さい。僕の大事な師匠が死に瀕していますので」


 確かに先程からチクチンがなんか痙攣して「あ・あ・あ・あ・あ」とか言っているようだ。


『よくわかんないけど、答えちゃっていーよ、お二人さん』


「ははっ! 吾輩の方は、全員男児でござる!」


 なんか一人称がころころ変わるエセロシア人が、何故かサムズアップする。


「おや、ドブさんはそうでしたか。自分の方は、全員女です」とサブ。


「意外と同僚の家族事情って知らないことが多いのよねー」


 羊女が黒いヴェールをいじりながら頷いた。


「おい、竜胆君、こんなので本当にわかったのか!?」


「多分、ですけどね。おおよその見当はつきました」


 少年は、まるで生まれたばかりの釈迦のように、右手を挙げて人差し指を天に向けた。


「お二人のうち、性欲旺盛な方は……こちらです!」


 死刑宣告をするが如く、彼は指先を降ろすと、恐るべき性獣に突き付けた。

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