表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/190

第四十七話 第二の戦い

「おごおおおおおおお!」


 俺の発した、「尿道カテーテル」という単語を聞いた途端、腹部に手術痕の残る男性が、大きく呻いた。


 勃起は未だしていないが、何だか股間をもじもじさせているようにも見える。


 間違いない。俺は確信した。


「ユミバちゃん、わかったぞ! 正解はこっち……じゃなくてそっちだ!」


 俺は、非勃起状態の、残るもう一人の壮年男性の方を指差した。


『ファイナルアンサー?』


 天井から揶揄するような声が響き、一同に緊張が走る。


「FAだ! ていうか勿体ぶらないでくれ! 


 こんな部屋一秒でも早く出たいわ!」


『焦らない焦らない、一休み一休み、っていうか、正解だよ、おめでとー!』


「……」


 今にも切れそうになっていた俺は、正解の一言で、急に毒気を抜かれたようになってしまった。


「凄いじゃない、太郎ちゃん! どうやってわかったの?」


「この前尿道カテーテルの挿入に手こずったんで、高峰先生にコツを聞いたことがあったんだよ。


 そしたら、『そういや長時間の手術を受けんといかん患者に挿入することはあるんやが、うらは精神科やしようやらんなー』とか言って、面倒くさがって教えてくれなかったんだ。


 つまりあちらの手術痕がある人は、以前手術中に尿道カテーテルを入れられたことがあるかもしれないし、術後もしていた可能性があるから、さっき『尿道カテーテル』という単語に反応するかどうかを調べたのさ。


 もし反応するようなら、苦い思い出があるということで、きっと挿入していたはずだ。


 ということは、真性包茎ではないに違いない。


 もし真性なら、この前の俺みたいに、尿道カテーテルどころじゃないだろうし」


『ありゃ、結構理論派だったんだね、探偵さん』


「さあ約束だ、今からあんたに会いに行くぞ!」


「それはまだ早いでござる」


「その通りでございます」


 それまで部屋の片隅でマネキンのように突っ立って俺達を監視していただけのドブとサブが、いきなりずいと俺達の前に立ちふさがり、出口に行こうとするのを阻止する。


「おい、何だって邪魔するんだ!? こっちはちゃんと正解しただろうが!」


『すまないけど探偵さん、実はテストはもう一問あるんだ。さっき説明するの忘れててごめんねー』


「おい!」


「聞いてないわよ!」


「主催者の気まぐれか?」と司令。


「イズヴィニーチェ! という訳なので、観念して受けるでござる。


 ロシアの諺に、『おばあちゃんにイチモツがついていたらおじいちゃんだったのになあ』というのが有り申す故」


「意味分かんねえよ! どんだけち○こ好きなんだよロシア人!」


「簡単に言うと、『諦めろ』ということですな」


 とサブが横から補足する。さすがサブマネージャー。


『というわけで、皆準備はいいかい? それでは……』


「ちょっと待て! これで本当に終わりだろうな!?」


『それは約束するよー。では第二問!』


 その言葉を合図に、突如、眼前のドブとサブが、身に纏っていたダークスーツをババッと脱ぎ捨て、それぞれトランクスとブリーフ一丁になった。


「何故!?」


「次は我々がお相手するでござる!」


「これはサービスですよ」


 と涼しげに言い放つサブは、何故かブリーフの中から、何かの紙切れが中に入った使用済みコンドームを取り出した。


『問題です。そこのドブことドブノフ岩男と、サブこと佐武爺面の二人は、どちらかは非常に性欲旺盛ですが、どちらかはお坊さんのように性的に淡白です。


 では、性獣はどちらでしょうか?』


「な、なんじゃそりゃああああああ!」


 俺は、ついいつものくせで、絶叫マシーンと化した。


「なかなか面白い問題だが、我々が正解を答えても、そちらが嘘をついて不正解にする可能性があるのでは、テストにならないのでは?」


 と司令が至極もっともなことを言う。


「ですからそのような不正がないよう、答えは既にこのコンドームの中に封印してあります。


 ちなみにこれの中を見るのはルール違反ですよ」


 サブが手にした風船をぶらぶらさせる。なるほど、そういうことか。


「だけどもうちょっと何かヒントはないんですか?」と竜胆少年。


 ちなみにチクチンは、室内のあまりの悪臭のせいか、さっきから床に転がったままピクリとも動かず、手持無沙汰の花音は、彼を突いたり揉んだりして遊んでいる。合掌。


『直接的なものでなければ、質問してもいいよー』と天の声。


 おお、それなら何とかなりそうだ。


 さすがにノーヒントでは苦しいところだった。


『ただし僕が認めた質問でなければ許可しませーん。あと、三回までとしまーす』


「そ、それって結構厳しくない?」


「まあ、仕方なかろう。無いよりはましだ。頼んだぞ、名探偵」


 ほじほじ。


「司令も鼻糞ほじってないで、ちったあ考えて下さいよ!」


「私の役目はさっき終わった。これからはお前たち若者の時代だ」


「あんたそんなに歳じゃないだろ!」


「フッ、ここはいよいよ僕の出番のようですね」


 我らがエロ軍師こと竜胆少年が不敵な笑みを浮かべながら、言い争う俺と司令をかき分け、一歩前に進んだ。


 何このジャンプ的展開。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ