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第四十六話 性器の戦い

「は~い、先生、質問!」


 羊女がいきなり挙手した。まったく、空気を読まないやつだ。


『どぞ!』


「一切触れずにってことは、道具などで触っても駄目ってこと?」


『当然駄目です!』


「お口で触るのも?」


『はい次、誰か質問ありませんかー? なければ締め切るよー』


「む、このあたしの質問を無視するとは……やるわね、小娘!」


「じゃあ、私も質問しよう」と司令も手を挙げる。


『はい、どぞ!』


「我々が勝ったら上に行けるのはわかったが、もし負けたらどうなるんだ?」


『その場合は、皆さんにも彼らと同じ衣装になってもらい、僕のコレクションに加わってもらいまーす』


「嫌過ぎる!」


「これは……負けるわけにはいきませんね」と竜胆少年。


 周囲の存在に圧倒されてか、ちょっと汗をかいている。


「でも、そもそもコンドームを着けているのに、ちん○が剥けているかどうかなんて、わかるわけないじゃないか!」


 俺は天井に向かって、唾を吐いて抗議した。


『もう質問はないですねー、それでは、ゲームスタート!』


「ちょっと待てやこらーっ!」


「まあ待て、私なら、コンドーム越しでも、勃起さえしていれば、皮が被っているか否かを判別することは出来るぞ」


 と司令が俺の肩を叩く。


「ど、どうしてそんなスキルを持っているんですか?」


「この前のおっぱい型エロンゲーション戦のとき、君のOBSが整備不良で包茎手術してなかったろう? 


 あれで反省して、自分自身で練習して、如何なる状態でもOBSのOTの状態がわかるようになったのさ」


「なんて使えないスキル!」


「まあ、いいじゃないですか、今現在だけでも役に立つのであれば」


 と竜胆少年がフォローする。


「それならまずは、このドルヲタどもを勃起させないといけないな。


 そうすれば、仮性か真性か確実にわかるだろう」


「そうですか……」


 俺は司令の言葉に、とりあえずホッとするも、まだ問題が解決していないことに気が付いた。


 回りの野郎どもは軽く百人近くはいそうだが、こいつら全員を触れずに勃起させることなんて可能なんだろうか?


「……一体どうすればいいんだ?」


 つい、思いが口に出てしまう。


 彼らは視覚を封じられているため、エロ画像やエロ絵を見せて興奮させることは出来ないだろう。


 では、後は聴覚による刺激が考えられるが、男性の場合、それだけではなかなかエレクチオンに達しない者もいると推測される。


 そもそも性癖は人によって微妙に異なるため、ここにいる全員に感銘を与える至高のおかずレシピが存在するのか?


「太郎ちゃん、ここはあたしに任せてちょーだい。これってあたしの専門分野だし」


 俺の悩みを察したのか、羊女が名乗りを上げる。


「そうだな、ダメもとでやってみてもいいかもな」


 ちょっと投げやり気味になっていた俺は、彼に適当に任せてみることに決定した。


「よーし、先鋒・羊女、行きます! 


『うふん、くすぐったい。だめよ、もうすぐママが帰ってくるんだから』


 とマーガレットは言ったのだが、ボブは強引に……」


 突如、羊女は、喉のどこから出してんだかわからないくらい高くてとろけるような、天使の歌声を彷彿とさせる神ボイスを発した。


 しかもその声質は、先ほど天井から響いたものと全く同様だった。つまり……


「こ、これはユミバちゃんの声とおな……」


「しー、太郎ちゃん」


 急に羊女が声を潜め、俺の口元に人差し指を押し当てる。


「あたしの声帯模写アンドエロ小説朗読スキルの合わせ技で、ランバージャック・デスマッチの囲み超人状態の、この部屋の萌え豚たちに、あたしの声を彼らの盟主たるユミバちゃんボイスと勘違いさせるのよ。


 彼らにとっては最高級のご褒美でしょうから、お○んちんがプレハブ状態になるのは時間の問題だと思うわ」


「そうか、意外と使えるな、お前」


 俺は、初めて羊女を口に出して褒めた。


 まあ、たまには本心を見せてやってもいいだろう。


 優秀な部下は褒めて伸ばすに限る。


「あら、今頃気付いたの? フフッ」


 調子に乗った彼は、勢いに乗って国民的エロ小説の朗読を進める。


「ああ……」


「ふぉぉぉぉぉ……」


 周囲の男たちの吐息はそれに合わせて徐々に大きくなっていき、やがて一つの大きなうねりとなっていった。


 これは、ひょっとすると……。


「おっ、勃起したぞ!」


「凄い、羊女さん!」


「ED! バイアグラ! スタンプテスト!」


 なんと、あちらこちらで拘束野郎たちのコンドームがむくむくと膨れ上がり、次々と天に向かってそびえたって行った。


 まるで植物の誕生を思わせる、生命の壮大な一大スペクタクルが眼前に展開しつつあった。


「これぞ世に聞く府瑠勃起……」


「知っているのか竜胆……って何言わせんだ!」


「しかし今のところ皆仮性包茎ばかりだな、うーむ。


 まだ二人ばかり勃起に至っていない者がいるが……」


 司令が指さす方向には、確かに身悶えする二人の男がいた。


 彼らはどちらも壮年のようだが、身体つきはわりと引き締まっていた。


 一人は腹部に、縦に大きな傷跡があるのが特徴的だった。


「あの人は、ひょっとしたら手術の後遺症で勃起力が低下しているのかもしれませんね。


 まあ、両者とも凄まじい忍耐力の持ち主だとは思いますが」


 と竜胆が評する。


「どうだ名探偵、どちらかわかるか?」


「うーん……」


 頭を捻るも、なかなか名案が浮かばない。


 そもそも真性包茎に関する知識なんて、俺にはそんなにない。


 せいぜいこの前の戦闘で、OBSにカテーテルってのを挿入するのに手間取ったぐらい……って、


「そうだ!」


 俺は、大きく息を吸い込んで、一言、「尿道カテーテル!」と咆哮した。

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