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第三十七話 閑話休題その3

「確かに砂浜さんのおっしゃる通りです。


 僕は今から十年前、海岸を彷徨っているところを、ちょうど病院から脱走した患者を捜していた母に発見され、保護されたのです。


 母は、警察に相談しましたが、僕の身寄りが分からず、当時4歳前後だった僕自身の記憶もはっきりしないことから、僕を養子として引き取ることにしたそうです」


 淡々と過去を語る少年は、いつになく大人びて見えた。


「そのことは、どうやって知ったんだ?」


「きっかけは、母と無性にセックスしたくなった時のことです。


 小学六年生になった僕は、性欲を持て余しつつあり、母の巨乳を見る度お○んちんが疼くようになり、とうとう母と合法的にセックス出来ないかどうか、つまり万が一にも母と血が繋がってなかったらいいなーと思い、戸籍謄本で確認しに、市役所へと向かいました。


 とある近親相姦を描いた少女漫画読んだら、そんなやり方が出ていたものでして」


「ああ、あったねそんな漫画!」


 やはりこの糞ガキはナチュラルボーンサイコ野郎だと俺は確信した。


「で、義理の家族だということを知ってしまったんで、帰宅し母に問い詰めたら、素直に先程のことを教えてくれました。


 お前にいらない心配をかけさせたくなかったから、黙っていたと言って、謝ってくれましたが」


「……それで引きこもりになったわけか」


 俺の返事に、少年が目を丸くする。


「よくわかりましたね、さすが名探偵さんだ」


「いやそれくらい何となく想像つくから!」


「そうです。真実に圧倒された僕は、とても母を犯すどころじゃなくなって、心底落ち込み、学校へも行かなくなりました。


 今まで大好きだった母と赤の他人だったっていうのは、やはりショックが大きかったのです。


 それでもなんとか小学校は卒業できましたが、中学校は入学式に何とか行ったっきりで、その後は全く登校していません。


 ただ、マグマのように溢れ返るリビドーだけはどうにも処理できず、かといって大好きな母乳ものもネットにろくに落ちてないため、いっそ自炊しようと思って絵筆を取ったら、自分に絵の才能があることに気がついたのです」


「そしてエロ漫画家・古都寄席由美之介が爆誕したってわけか」


「まあ、大体そんなところです。


 どうです、なにか参考になりましたか?」


「それだけでは何とも言えないな。


 ちょっと気になる点はあったが……」


「パパ! キリン! キリン!」


 俺は、花音が指差す、遠くに立ち並ぶ赤い巨大ガントリークレーンを眺めながら、語尾を濁した。


 彼の過去は、俺とはやや異なるが、それでもいくつか共通点があった。


 砂浜をさすらっていたのが十年前であること、過去の記憶がないことである。


 もっとも記憶の方は、当時の年齢を考えると、無くても当然かもしれないが……。


「もうすぐ河口に着きます。そこで釣りましょう。


 ウナギは夜行性なので、本当は暗くなってからがベストなんですが、一応僕は未成年なので門限がありますしね」


 未成年の癖にエロ漫画描いたりエアファック大会に出かけている少年が、まともなことを口にした。



「ここら辺でいいか?」


「いいですね、降りましょう」


「うなぎパイ! 夜のお菓子! 父さん母さん仲が良い!」


「あー!」


 河口付近の川原に到着すると、俺はポルテを適当に駐車した。


 気温は先程よりもやや下がり、潮風が肌に心地よい。


 竜胆少年の指示で、俺はやけに重いクーラーボックスを降ろすと、ふたを開けた。


「ぎゃああああああああ!」


 中には、羊女の生首……じゃなかった、彼がいつも被っているような羊の生首が、ごろんと入っていた。


 濁った角膜の下から、有蹄類特有の横長の長方形の瞳孔が、こちらをじっと見つめている。


「なんでこんな猟奇殺人事件の処分品みたいなもんがウナギ釣りにいるんだよ!」


「あれ、砂浜さん、『ブリキの太鼓』って映画を観たことありませんか? 


 あれにポーランドのウナギ漁が出て来るんですが、馬の生首にロープを括り付け、海中に沈めるんですよ。


 しばらくして引き上げると、鼻だの口だの耳だのにウナギが入り込み、簡単に獲れるわけです。


 ドジョウの地獄鍋みたいなもんですかね。


 気の弱い人が見ると、嘔吐して発狂しますけど」


 俺が思わず川原に放り投げたクーラーボックスの中身を拾いに行った少年が、澄ました顔で答える。


「なんで馬じゃなくて羊なんだよ!?」


「羊女さんが、新しいマスクを作るために購入したけれど、皮だけにするのが面倒くさいって言うので、僕が、ウナギ獲りのついでに中身をウナギに食べて貰おうと思いついたんです。どうです、名案でしょ?」


「知るかボケエエエエエエエエエ!」


「アアアアアアアアアアアアアッー!」


 怒りのあまり錯乱した俺は、近寄って来たチクチンの身体に縄を巻き付けると、川面めがけてぶん投げた。

というわけで、そろそろハーブが切れてきたため、すいませんが今回の更新はここまでとさせていただき、また一週間休ませていただきます。

次回は9月17日更新再開予定です!

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― 新着の感想 ―
[良い点] お、おかしい。色々おかしな子だ! 母子の血縁が繋がっていなければ良いなと思い自分で戸籍確認しに行ったんやんけ(。>﹏<。)! いや、それ以前にオークに欲情するのが…… [気になる点] チ…
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