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第三十四話 ミッドナイト・オディティ

「ワーオ、イッツミラクル! ファンタスティーック!」


「ははは、凄いでしょ。


 慣れれば結構うまくコントロール出来るんですよ。


ロールだって軽快に……」


「宇宙飛行士の訓練で、T-38ジェット練習機の操縦をしたことはありマスが、これとはまったく違いマース!」


「そ、そうでしたか……」


 俺は、釈迦に説法という諺を思い出し、冷や汗をかいた。


 余計なことは言わないでおこう。


 現在俺は、背中にアルダを乗せた状態で(彼女は服を着ているが、俺は当然の如く全裸)OBSを操縦し、街の近くの海上を夜間飛行中だ。


 ここならOBSを思い切り飛ばしてもあまり人目につくことはないだろうとの司令の判断で、飛行許可が下りたのだ。


 操縦者が俺に決まった時は、若干ブーイングが起きたが、どう考えてもチクチンや竜胆少年の上に彼女を乗せるのは難しかったので、結局野郎どもは涙を呑んで、司令判断に従った。


 変態という名の紳士である俺にも特に異存はなく、心のウキウキは止められなかった。


 今も背中に当たる二つのドキドキがムネムネしボインボインしている状態で、何を言っているんだか自分でも分からん! 


 亡くなった妻の顔がちらっと脳裏を掠めるが、密着しているんだし仕方ないじゃん!と俺は自分自身に言い訳した。


 そういやアルダは、どことなく妻に雰囲気が似ているような……って気のせいか?


 容姿は特に共通点はないんだけど。


 それにしてもこれは、エロは抜きにして、そう簡単に出来ない貴重な体験だった。


 先日の夕空の中を駆け上がっていくのも乙なものではあったが、今日のフライトには到底及ばない。


 眼前に、満天の星空と、それを映したきらめく海が広がっている。


 繰り返す潮騒のざわめきが、耳鳴りのように耳朶に纏わりついている。


 砂浜には人影はなく、海にも漁船の影は見えず、空には海鳥の声すら聞こえず、純然たる砂と海と空のみで構成された、現実世界を超越した風景。


 そのまじりけのない太古の地球の如き景色を、俺とアルダはただただ眺めていた。


「宇宙空間で、ISSから地球を見たことは何回もありマスが、ここまで紀霊じゃなかったデース……ありがとう、スメグマタローさん」


 アルダがいきなり三国志に出てくる武将や、ち○かすについて言及し出したので、一瞬何事かと思ったが、どうやらお礼を言われたらしいとわかって、俺はやや赤面した。


 全裸状態で今更赤面も何もないものだが。


「いえ、そんな大したことじゃありませんよ。


 こちらこそ、さっきは危ないところを助けてもらったし」


「それはこっちの台詞デース。


 皆さんの前でフォローして下さったし、何しろ、ストローを尿道カテーテル代わりに使うなんて、ナイスアイディア過ぎマース! 


 ユーはきっとすごいディテクティブになるでショー!」


「いやいや、そんな恐れ多い……って、えっ!?」


 急に彼女が、今まで以上に俺にギュッと抱きついてきたため、動揺した俺は思わず背面飛行しそうになった。


 当たる当たるアタル兄さん!


「どどどどどどうしたっちゅーんですか、アルダはん!?」


「恥ずかしながら、実はアイは、今まで男の人とこうしてハグしたことが無かったのデス。


 デスから今だけでも恋人みたいにさせてくだサイ、シナガワタローさん……」


 背後の彼女は、いつもの元気いっぱいの調子と違って、今にも消え入りそうな、露草のような可憐な声で、こう答えた。


「しょ、将軍壁死ー!」


 興奮のあまりエクストリーム状態になった俺の口から、意志とは関係のない謎の言葉がサラダのように飛び出した。


「ででででででも、あなたみたいに魅力的な人なら、作ろうと思ったらいくらでも彼氏なんて出来るんじゃあーりませんか!? 


 それともNASAは恋愛禁止なんですか!?」


「いえ、いくらNASAでも恋愛はリベラルデース。


 以前、チアガールと合コンしたい野郎どもが、女性職員を地元のチアリーディングクラブに無理矢理入れたこともあったほどデース」


「最低だなNASA……」


 とか会話を交わしつつ、俺は自分のア○ル付近に、なにかがムクムクと大きくなって当たる感触を覚えた。


 こ、これは、もしかして……。


「ア、アルダさん、俺の大事なケツメドに、何か固いモノが押しつけられているんですけど、また竹筒とかじゃないですよね?」


「Oh,それはアイのおいなりさんデース!」


「いやそれおいなりさんじゃなくてソーセージだよね、しかもジャイアントフランクフルト並の!」


「そうともいいマース!」


「あんたニューハーフだったのかよ!? 降りて! 今すぐ!」


 混乱のあまり一時的に操縦不能に陥った俺は、ナイフエッジ状態になりかけた。


「落ち着いて聞いてくだサイ、ワグナスタローさん。


 アイはニューハーフではなく、真性半陰陽なのデース」


 彼女は、寂しげな口調で、そっと俺に秘密を打ち明けた。

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