第二十八話 テロリストのアナリスト
「あーあ、せっかくお土産に持ってきた、特殊警棒風竿竹がバッド・スメルになってしまったデース、Shit!」
彼女は憂いを帯びた表情を浮かべると、気絶した男のケツからずぼっと竹を引き抜き、男の服で先端の血便を拭った。
そして男の破れたズボンを駆使して彼の手足を縛りあげると、何故かメジャーをトランクから取り出し、気絶した男の腹に蹴りを入れ、怒鳴りつけた。
「ユーはテロリストさんデスねー?
あんなぶっといミサイルを発射したり、マイバンブー・ポールを飲み込むユーのブラックアスホールからは、どんな極太ビッグ・ベンがバースデーするのか楽しみデース。
さあ、ひり出しなサーイ!」
「ぐぼああああ! ○×□△*○×□△*!」
途端に男は天国から現実という名の地獄に引き戻され、悶絶する。
「な、なんなんだこれは……」
俺は悉く俺の予想外を軽く行く怒涛の展開に付いて行けず、戦力外になって地べたに寝転んで戦いの解説をするピンクのワニみたいに、置いてけぼりを喰らった気分になっていた。
「そういやスージーは、僕らの描く特殊性癖もののエロ漫画が大好きでしたね。
チクチン師匠のア○ルものや、僕の搾乳ものやフタナリものにも非常に興味を示していましたよ」
竜胆少年がいらぬ解説をしてくれる。さよか。
「き、君、もういいから止めなさい! ご協力感謝します!」
ようやく現れた空港の警備員に男から引き剥がされ、ようやく諦めたのか、彼女はその場を離れ、こちらに近付いてきた。
俺は、にこやかに竹筒を振る彼女を見ながら、甘い予想がガラス細工の如く粉々に砕け散る様を思い浮かべた。
これじゃスージーじゃなくてスカトロジーだ。
「どうやらさっきのテロリストさんハ、国際テロ組織・『アナリスト』の一員だそーデスよ!
航空機爆破を計画してア○ルに金属探知機にも引っかからない新型ロケランを忍ばせ飛行機に搭乗したんデスが、あまりの快楽についつい発射を遅らせているうちに日本に着いてしまい、空港でエクスタシーが限界突破し、つい発射ボタンを押しちゃったそーデス。
先程のアイの肛門、じゃなかった拷問で、そうゲロってマシタ!」
「ああ、さっきのって拷問だったんだ。てっきりそういう趣味かと……」
俺は隣りの座席に座るスージーに、ぎこちない笑みを浮かべた。
俺達六人+彼女は、現在ハイエースに乗って、高速道路をX市に向かって帰宅中だ。
ちなみに運転は、低血糖及びアルミサッシだかのダメージからようやく回復した司令が、ゾンビみたいな顔つきで行っている。
異様に口数が少ないのが心配だが。
「イヤですね、スキヤキタローさん、そんなア○ルやシットがマイ・フェイバリットな訳ないじゃないデスかー!
ア・リトル興味あるだけデスよー! HAHAHAHAHA―ッ!」
陽気な金髪娘は大口を開け、俺の肩をバンバン叩きながら呵々大笑した。
まったく、大輪のひまわりのような笑顔の持ち主だ。
しかし横乳が当たりまくるのは嬉しいが刺激的過ぎる。
いかんいかん、平常心、平常心。
「デモ、確かにアイハ昔から人よりコレが大きかったノデ、自分ハ他の子とハ違うってずっと悩んでマシター。
Butある時ジャパニーズエロコミを読んでみたら、いろんな変わった人が出てきマシテ、自分みたいな女の子もアリなんだなーって思い、ファンになったんデスよー!
それで日本のサイン会に押しかけ、両先生とフレンドになったんデース!」
「そ、そうだったのか……」
俺は相槌を打ちつつ、彼女の大げさな身振りと共に揺れる二つのスイカップから目をそらし、フェルマーの最終定理について脳内で考察した。
いかんいかんいかん、心頭滅却煩悩退散。
確かにその規格外の爆乳なら、ビッグサイズが標準のアメリカでも好奇心の的となったことだろう。
花音なんか先程まで、「メガおっぱい! ギガ盛り! 汁だく!」とむしゃぶりつかんばかりに飛び跳ねていたので、少し黙らせるため破壊兵器の飴玉を一つぶ与えたところ、超新星が爆発しそうな勢いで泣き叫び、疲れ果てて現在俺の膝の上で眠っている。
さすがにパパちょっと反省。
「しかしチクチンまでサイン会やったんだ!? よく客来たな!」
「アッー!」
俺の前方の座席から嬉しそうな声が響く。
「ええ、僕とチクチン師匠の合同で、とある書店で行ったんですよ。
確かに客の大半は師匠の姿を見ると回れ右して帰って行きました。
中には『ベルセルク』のバルガス医師のコスプレと勘違いして並ぶ人もいましたけどね。
そこで僕らは彼女と知り合って、メルアドを交換したんです」
俺の後方から、竜胆少年が補足説明する。
「ところで何で竿竹なんか持って来たのー?
さっきお土産とか言ってたようだけど」
助手席の羊女が、暑いのか羊マスクを脱ぎながら話しかける。
「Oh,ご存じありまセンカー?
日本デハ、バンブー・ポールハベリーロマンティックアイテムなんデスよー?」
「なんでそうなるんだよ!?」
「とあるイニシエの日本のオサレな恋愛ノベルで、主人公とヒロインの初セックス時に、『たーけやーぁ、竿竹―ぇ』っていうバックミュージックが流れ、ヒロインが、『竿竹なら間に合ってるわよ』っていうシーンがあるんデース。
ビコーズ、日本人ハセックス中に竿竹ソングをかけ、竿竹を使用するってことデスねー!」
「いやそれ単なる下ネタだから!」
俺は間違った日本文化の訂正のため、絶叫した。