表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/190

第二十二話 天駆けるア○ルの閃き

新月のため月明かりはないが、星々がネオンに負けずに輝く夜空を、裸のオヤジが裸の男をおんぶして飛んでいた。


 何とも絵にならない風景だが、誰だかはすぐに分かった。


「羊女さん!」


「あいつ、わざわざOBSに乗って来たのか? 


 もう全て片付いたんだぞ。


 一体何を考えているんだ?」


 またもや司令がぼやく。


「タクシー代わりなんじゃないですか?」と竜胆少年。


「んなアホな……ん? あいつ背中に何か結び付けてないか?」


「えーっと、確かに、何か紐が背中から上空に伸びてますね。良く見ないと分かりませんが」


「何かを持ってきたっていうのか?」


 俺達は夜空に向けて目を凝らした。


 紐の先端は闇夜に溶けるように消えていたが、よくよく見ると、真っ黒い布か何かに包まれた、直径3メートル以上はある球体が二つ繋がっているのが分かった。


 球体と球体はサクランボのようにくっついている。


「な、何だ、ありゃあ……?」


 司令が車窓から身を乗り出す。


「黒いアドバルーンか何かが二つあるように見えますが……チンドン屋でも始めたんでしょうか?」


 竜胆少年が小首をかしげる。


「あの形状、嫌なものを思い出すな……」


 俺は眉をしかめた。昨日戦ったおっぱいおばけに墨汁をぶっかけたような感じだ。


『行くわよー!』


 突如耳元で羊女ががなりたてると共に、二つの球体を覆っていた黒い布がはらりと舞い落ちた。


 それを見て俺達三人は同時に絶叫した。


「「「尻だ!」」」


 何と、こちらにア○ルをくっきりと見せた肌色の巨大な尻が、飛行船の如くぷかぷかと天に浮かんでいた。


 ちん○がないことから、どうやら女性の尻と思われるが、桃尻といっても差し支えない程丸く張りがありそうで、なんとも魅力的だった。


「ま、まさか新手のエロンゲーションか!?」


「落ち着いて下さい、司令さん。


 あれってきっとアドバルーンを接着剤で張り合わせて色塗っただけだと思いますよ。


 でなきゃ紐付けて引っ張ってこれませんって」


 慌てふためく司令に対し、竜胆少年が冷静に答える。


『ピンポーン、正解よ。


 お店の常連客のイベント関係のレンタル会社社長に頼みこんで、廃棄予定のアドバルーンを二個無料で譲ってもらったの』と羊女。


 彼自身は、現在空飛ぶケツをOBSと共に追っている。


「何のためにそんなことを?」


 つい俺も、彼に質問してしまった。


『決まってるじゃない、太郎ちゃーん。


 ほら、昨日、もっとOBSをメジャーにしたらどうかってあたしが提案したもんで、司令と口喧嘩になっちゃったでしょ? 


 あの後自分なりに考えて、PR動画を作って配信すれば、もっと知名度が上がると思ったのよ。


 それで、昨日の戦闘シーンを再現するために、おっぱいモンスターの模型を作製しようとしたってわけ』


「いやそれおっぱいじゃなくて尻だよね!?」


『話を最後まで聞いて頂戴、太郎ちゃん。


 あたしが必死こいて塗装してたら、司令から、チクチン達が馬鹿なこと企んでいるってメールがあったのよ。


 それで、OBSが出動したら、街の人は、また敵が来たんじゃないかって騒動になるでしょ? 


 OBSの内紛バトルだったなんてバレたら、イメージガタ落ちだから、急きょ新たなエロンゲーションが現れて、それをあたしが華麗に撃墜したってストーリーを演じようって作戦を練って、おっぱいから尻に作り替えたってわけ。


 乳首取っちゃってア○ル描くだけですんだから楽なもんよ』


「そうだったのか、しかしお前意外と絵が上手いな。本物そっくりだわ」


 俺は闇夜にぽっかりと浮かぶ尻及びア○ルを観賞しながら、本心を述べた。


 描かれたア○ルは薄っすらとした茶色だが、使い込まれた感じは無く、上品で、なんというか、綺麗だった。


 それ程ア○ル好きではない俺も、知らず知らず引きずり込まれそうな感じが、って俺は何を考えているんだ!


「羊女さんには、以前暇な時、僕とチクチン師匠が絵の手ほどきをしてあげたことがあるんです。


 メイクや小道具作りに必要だからって。結構いい線いってましたよ」


「アッー!」


 チクチンも大喜びで大絶賛の様子だった、なんとなくだが。


「しかし、前はどうなっているんですか? 法に触れませんか?」


 竜胆少年がどうでもいいことを聞く。十四歳がエロ漫画描くのはいいのかよ?


『スジが一本描いてあるだけよ、リンちゃーん』


「成る程、それならコミケ規約でも可とされますからね。最近注意がうるさくなってきましたが」


「何の話だよ! てかやけに詳しいなおい!」


「一応これでも現役エロ漫画家ですから」


 俺達が馬鹿な会話を交わしている間に、羊女を乗せたOBSは、天駆けるア○ルを追いかけて、ぐんぐん星の世界へ上昇していく。


「何だあのデカケツは!?」


「ウホッ、いいア○ル……」


「勝利の女神が俺らにア○ルをちらつかせているぞ!」と何だか回りが騒がしくなってきた。


 道行く人々が上空を見上げ、指差している。


『だいぶギャラリーも増えてきたみたいだから、もうちょっとしたらおしっこひっかけて、空中で爆発させるわね。


 お尻の中には遠隔操作で爆破できる火薬をしこんであるのよ』


「へえー、よく考えているな」


『じゃねー』


 というわけで、羊女達は、キルバーン人形を担いだダイの如く、サーチライトに照らされつつ、天高く消えて行き、やがて遥か上空で爆発が生じた。


「きたねぇ花火だ……だが、綺麗なア○ルだったな」


 司令が一見狂った感想を述べたが、俺も同感だった。


「ええ、そうですね……」


 俺達はしばしの間、季節外れの花火大会の余韻に浸り続けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ