第百六十五話 星の…… その4
「やれやれ、まったくうるさいカッパさんだな。わかったってば」
もはや最終防衛ラインまであと数センチに恐るべきマーラー様が迫ったその時、少女が残念そうに、再び故ポール牧ばりの指パッチンを砂漠中に響き渡るかのように華麗に鳴らした。
そのとたん、あたかも魚津市の蜃気楼のように魔物は消え失せ、白紙と化していたスケッチブックの上にイボイボだらけの絵姿が描かれていた。
「ひょ……ひょっとして、お前は絵を実体化できるのか?」
恐怖のあまり、今にも血便と水様便を垂れ流しそうだった俺はとりあえず深呼吸すると、ホシノに問い質した。
小悪魔はニヤリと可愛らしい唇の片方を持ち上げ、チェシャ猫の笑みを形作った。
「そーだよ、びっくりした? ちなみに描いた人の思いがこもっている絵だと、もっとリアルに構築できるんだよ。すごいでしょー?」
「……」
俺はスケッチブックをマジマジと眺めながら、頭をフル回転させ懸命に推理しようと試みた。この、明らかにエロンゲーションに近い能力を有する、花音によく似た少女の正体は、いったい……?
「俺の知り合いのよく異世界に行くっていう医者が、感染症にかかったち〇こは年中茶色いチョコレートのような精液を噴出するので、あまり異物を埋め込むのはお勧めしないと言っていたが……」
「そんな糞話はどうでもいいから、とっとと描いてよ穴が血おじさん! あんまり遅いとおじさんのやつを切り取って機械のお◯んちんにしちゃうよ!」
「わかったわかった。ちょっと場を和ませようとしただけじゃないか……」
俺は口をとがらせながら、スケッチブックに筆を走らせた。そういえば、昔どこぞのエロ漫画雑誌で、機械のち◯こをタダで手に入れる星に、少年が謎の美女ミエテルと旅する「銀河高速バス69」ってのが載っていて、「フリーダムよのう」と感心したものだが、あれは真夏の夜の夢だったのか……?
それにしても、あれから何枚ち〇この絵を描いただろうか。長いの、短いの、右曲がり、左曲がり、膨らんだの、しぼんだの、触手状、機械式と、バラエティ豊かな形態を次々と描写した。
色も様々で、肌色、茶色、オレンジ色、赤色、ピンク色、黄色、黄土色、緑色、紫色、ドドメ色、黒色と、虹に含まれている以上の思いつく限りの色を塗りたくった。
そのたびに、俺は自分の画力が伸び盛りのタケノコのごとくメキメキと音を立てて上達していくことに気づき、総毛立った。
今まで俺が絵が下手だと思っていたのは、実は真面目に描こうとせず、適当に遊び半分で殴り書きしていたからだったのだ。
いざ腹を据えて真剣に取り組んでみると、デッサンや色塗りのコツを次々と掴み、面白いようにリアルなち〇こが次々と描けるようになった。
俺も、ちょっと努力すれば、さすがに神絵師石恵様やパフィーニップル神げげら様にはおよばないが、いっぱしのエロ漫画家になれるだけの才能がいつもオ〇ニーぐらいにしか使っていなかった右手に眠っていたのだ。
喜んでいいことなのかどうかは、今のところ判断しかねるのだが……。
これは思わぬ発見だったが、相変わらず、どの絵もこまっしゃくれた少女のお眼鏡には叶わず、延々と駄目出しされていた。