第百六十四話 星の…… その3
「ア◯ルローズは寂しがり屋でね、いつもア◯ルに尿を直接かけてくれとか、夜は冷えるからア◯ルに太いロウソクを刺してくれとか、口うるさいし一々注文が多くて困るけど、でも本当はとっても良い奴なんだよ」
「それ良い奴なんかじゃなくて禍々しい邪悪な何かだよ! あんた絶対だまされてるよ!」
「えー、そうかなあ? とってもナイーブで、夜は一緒に寝てくれって言ってくるよ」
「やめとけや! それよりこいつはどうだ? さっきよりは力作だぞ」
俺は先ほどのポンチ絵よりも時間と情熱を込めて端正に描いたチ◯ポ絵を、うやうやしく差し出した。
この短時間で結構デッサンが上手くなったんじゃないかと我ながら思う、って文字通り自画自賛だけど。
「おっ、これはさっきのやつよりも元気そうにそそり立っているのがとてもいいね!
しかも真珠が埋め込まれているっていう点が、普通じゃなくてグッドだね!
でも、凶悪過ぎるからちょっとボク的にはキツいかな……」
「あんたが使うのかよそのチ◯コ!? ていうか絵だよこれ!」
「絵だろうが何だろうが、そんなことはごく些細な問題なんだよ。
クリトリ スウドンミタイニチュルチュルススル!」
彼女がどこかで聞いた気がする謎の文句を唱えながら、素晴らしきヒッツカラルドのようにパチンと指を鳴らすと、なんとスケッチブックに激写されたイボだらけのエイリアンの子供的なブツがムクムクと盛り上がり、恐るべきことにポンと音を立てて飛び出してきた。
「な、なんじゃこりゃあああああああ!」
恐れおののく俺に対し、伝説のハーブ漫画の風のちんころうの如く独立独歩する醜悪な怪奇生物(?)は、ブルンと身体を震わせたかと思うと、俺のまだ血が乾ききっていない鈍痛の響くア◯ル目掛けて飛びかかってきた。
「嫌ああああああっ! 犯されるぅぅぅぅっ! てか何で俺だけこんな危機ばっかりなんだよ!?」
「ほう、どうやらおじさんに懐いちゃったようだね。やっぱり描いてくれた人のことは自分の母親みたいに思うのかな? いわゆる胎内回帰願望ってやつだね」
「少なくとも俺は肛門からこいつを産んだ覚えはないぞ!」
「ところで動くタイヤとかを卵から孵ったばかりの鳥の雛に見せたら、母親と勘違いしてずっと後を追いかけるって教育番組があったけど、ああいうのってその後どうするんだろうね? 結構悲惨な未来しか想像出来ないんだけど」
「んなこと俺が知るかよ!」
永劫の夕陽の下、ジリジリと熱さを増してきた砂の上を狂ったように飛び跳ねる俺は、その痴態ぶりを興味深そうに観察している少女に向かって絶叫した。
元気よく首を振る我が息子、じゃなかった悪魔の落とし子のようなイボイボ野郎はどういう原理で動いているのかさっぱりわからないが、まるで目が見えているかの如く、正確に俺の後を追いかけてくる。
……そういえば、この現象ってどこかで聞いたことがなかったか?
絵の中から、邪悪な存在が肉の身体を得て襲いかかってくるという現象……
「ちなみに刑務所の男性囚人の中には、出所しても女性に相手されるようにプラスチックの歯ブラシの欠片をお◯んちんの表皮の下に埋め込んで、化膿して凄いことになっちゃうケースがたまにあるそうだけど、そういう腐りかけたバージョンのやつも試しに描いてくんない、穴が血おじさん?」
「いいからこいつを早く何とかしてくれええええええっ!」
俺は小悪魔の語る無駄知識をスルーしながら血の涙を流しながら哀願した。