第百四十七話 子宮脱は絶対検索しない方が良いですよ
『ったく、なにキレてるんですか、ハゲのくせに……』
「す、すまん……」
いかん、サイコ小僧にすら呆れられてしまった。平常心、平常心。
「パパ、あれ見て! ポルチオ!」
「花音、そんな危険な単語、二歳児が使っちゃいけません! お前本当にどこで覚えたんだよ!?……って、ポルチオだと!?」
俺の後ろの席で巨大昆布をしゃぶっていた愛娘の指摘通り、レインボー・システムの画面をジャミジャミ状態の血便垂れ流し羊から竜胆に切り替えて凝視すると、なんと蘭布ちゃん(でかいあれ)の子宮孔から犬神家状態で飛び出していた会長の貧相な下半身が、徐々に内側に吸い込まれていくのが目に飛び込んできた。
「ど、どういうことだ!?」
『今の戦闘でちょっと小腹がすいたんじゃないんですか、蘭布ちゃん?』
「あれって非常食なの!?」
『とっても不味そうですけどね……』
俺と竜胆が無駄な言葉のキャッチボールをしている間にも、哀れな快楽殺人鬼の両足は短くなっていき、とうとうチュポンと音を立てて深淵に飲み込まれ、姿を消した。合掌。
『あっ、砂浜さん、よく見てください! こんなもの滅多にお目にかかれませんよ! 眼福眼福ぅ!』
「い、いきなりなんだよ、竜胆!?」
『ほら、今なら蘭布ちゃんの神秘極まる子宮内部が覗き放題ですよ! こればっかりは内視鏡写真にもなかった激レアなものです! これぞ目の正月とクリスマスとお盆とハロウィンじゃあーっ!』
「……」
サイコ野郎の熱弁につられ、内臓で興奮するという性癖はない俺だったが、つい視線をポッカリと洞窟のように口を開けた子宮孔の中に向ける。
確かに暗赤色のヌラヌラした内壁が、外からの光を浴びて妖しく輝いている様が視認できた。
ただし全部が眺められるわけでもなく、内部に取り込まれた会長の姿はちょっと確認できなかった。
「ん、なんか変やのう……」
今まで黙って座席にふんぞり返っていた先生のワニに似た口元から、気になる発言がこぼれ落ちる。
ちなみに彼女もサングラスだが俺と同じくレインボー・システムを装着済みだ。サイズが無茶苦茶会ってないけど。
「えっ、どこが変なんですか?」
「ちょっと倍率を上げてよーく見てみい、太郎」
「はぁ……」
元主治医の命令に脊髄反射的に従って先程と同様に画面を拡大すると、俺にもやっと彼女の違和感の正体がわかった。
「子宮の内部は……粘液が流れていない!」
「その通りや!」
外側の滝のごとき水流は、内壁の上には少しも確認できなかった。
「ということは、どないすればええんかいな?」
「よし、竜胆、よく聞け! OTの先端をよく絞ってウロ・シュートを子宮孔一点に集中するように発射しろ!
あそこならガードされていないし、必ずや効果があるはず! って痛てててて!」
俺は興奮のあまり車内にもかかわらず立ち上がり、ヘルメットを天井に激突させた。
『もう手遅れですよ、砂浜さん!』
「えっ?」
サイコソルジャーの悲痛な言葉通り、今まであくびをしたカバのように大口を開いていた子宮孔が再びじわじわと小さくなっていき、貝のようにピタッと閉じてしまった。
「しまった、遅かったか!」
『おそらくあの中が弱点だってことは蘭布ちゃん自身も無意識的に気付いているんですよ。
だから必要時以外は閉まっているんじゃないですかね。元よりそういう風に身体の機構が出来ているのかもしれませんが』
「うーむ、なかなか良い作戦だと思ったんだが……」
悔しさでいっぱいの俺は、思わずハンカチを噛みしめたくなった。
『そもそも子宮孔って通常は非常に固くて狭く、せいぜい麺類一本しか通ることが出来ないって言われますよ。
開くのは、出産か中絶手術の時ぐらいですしね。
たまにエロ漫画で子宮の奥までち○こが入っちゃうって描写が未だにありますが、すごく丈夫なウネウネ動く触手でもない限り場所的にも不可能です。
僕やチクチン師匠もそこは特に念入りに注意して描いていますよ。
後は、ごく稀にエロ漫画で見られる子宮脱についてですが……』
「貴様らの腐った執筆活動に対するこだわりはどうでもいいから!」
俺は子宮姦について更に講義したがっている奴の狂った多弁攻撃を得意の絶叫で打ち消した。助けてジョン・K・ペー太!