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第百三十五話 復讐その3

「後は薬の効果が切れて目覚めるのを待つばかりでしたが、さすがにそこまで僕も悠長ではないので、早めに起きていただくため、口に貼ったガムテにそれぞれ1センチ程度の切れ込みをカッターで入れ、念のために持参した、かつて砂浜さんが使用した人知を超えた化学兵器級の猛毒物質をそれぞれ一個ずつ彼らのお口の中に押し込みました」


「……猛毒物質? いったい何のことだ?」


「ヒントその1・森薫先生の好物」


「わかるかよ! てかさっさと教えろ!」


「ヒントその2・フィンランド」


「……あっ、わかった!」


 ようやく脳裏に稲光に似た閃きが走った、何故か金髪巨乳ふたなりの映像とともに。


「サルミアッキだろ! 本当にえげつねーな貴様! てか窒息しちゃったらどーすんだよ!?」


「それはそれで復讐完了です。どうせドス汚れた人殺しどもなんですから仕方ありません。オムツは消毒だーってやつですよ」


「それを言うなら汚物だろ!」


「さて、殺人飴は効果覿面で、たちまち腐れ馬鹿ップルはお目々をぱっちり開けた後、老人の誤嚥性肺炎もかくやというほどの激しさで盛大にむせこみ、双眸から涙を流しながら、わずかに開いたガムテの穴から痰を吐き出し、身体をくの字に折り曲げて尺取り虫状態となりました。


 僕は羊女さんに教わった裏声の発声法を駆使して、『お久ぶりですね、会長と副会長』と蘭布ちゃんの声真似をしました。見ものでしたよ、彼らの表情ときたら」


「……まぁ、これぐらいは当然の報いだろうな」


 俺もついそのシーンを想像し、内緒だが溜飲を下げてしまった。


「僕は出来るだけぶりっ子顔を作り、蕩けるように甘ったるいファルセットを発声しました。


『んも〜、会長ったらそんなにびっくりしないでくださいよ〜、ぶっかけられちゃった仲じゃないですかぁ〜。


 それにしても会長のポークピッツは包茎短小早漏の三重苦だったのでがっかりしちゃいましたよ〜。


 そんな粗チンじゃ私の陥没乳頭の二◯ルファックも出来ませんよ〜。


 あんな腑抜けのジョニーで無理矢理満足しちゃう副会長が気の毒でなりませんね〜。


 というわけで、今からお二人にはデスゲームをしていただきま〜っす!』」


「なんでそうなるんだよ!?」


「やれやれ砂浜さん、本当に情弱ですね。今やデスゲームの主催者は、エロゲーのシナリオライターを抜いて、子供が将来就きたい裏職業ナンバーワンの座を占めているんですよ。


 ちなみに僕が将来なりたい職種は、鎌倉あたりで悠々自適の隠居生活をしているところを時々現役の総理大臣がお忍びで訪ねてくる謎の老人ですが、そこまで行くにはやっぱりクローズドサークルの一つや二つはインシテミなきゃ駄目ですからね、平たく言えば初期投資って感じです」


「デスゲームってそんなに気楽にやるものかよ!」


「帝愛グループや週刊少年マ◯ジン編集部じゃ毎週のようにプレゼンしてるって噂ですけどね。


 早速僕は、チクチン師匠と考案したカードゲームの一つを鞄から取り出すと、床に薩摩芋みたいに転がっている彼らの前に置きました」


「……ひょっとして、以前言ってた自作の四肢欠損キャラ最大トーナメントカードゲームとやらか?」


「それもやってみようかとは思ったんですが、ルールがちょっと複雑なので、もうちょっと簡単な、古来から殷の紂王などの帝王が好んだ高尚なやつをチョイスしました。ジャジャーン! 『妊婦の腹裂きゲーム』です!」


「ムグァっ!」


 俺の残った胃液が不意打ちに逆流しやがったが、何とか直前で押し留めた。


「えーっ、簡単に説明しますと、様々な妊婦の写真が貼られたカードに対して、中の胎児が男か女か当てるだけという、シンプルかつスタイリッシュなゲームです」


「もうちょっと穏便な名前付けろや!」


「最近はインパクトが大事なんですよ。本来はエコーカードや問診カードなどの診察カードを使って診断を絞っていくんですが、面倒臭さいので彼らには写真を見ただけで推測してもらうハードモードでプレイしてもらうことにしました」


「……それって無理ゲーだろ」


「どうせ二択なんですから適当にやっても当たりますって。もっともプレイヤーが発語できない状態なので、男だと思ったら右目を閉じて、女だと思ったら左目を閉じるという方法で意思表示してもらいました。


 ちなみに間違えた人には一回ごとにサルミアッキを一粒追加で、最終的に負けた方には蘭布ちゃんと同じくトイレにゴーしていただくというルールです」


「……」


 俺は絶対デスゲームには参加したくないと心の底から思った。


「さて、最初に提示されたカードは、お腹の突き出た金髪爆乳美人さんでした。プレイヤーたちは謎のアイコンタクトをした後、会長が右目を、副会長が左目を閉じました。おそらくリスクを分散させたんでしょうね」


「なるほど、敵も考えるな」


「しかし残念なことに、その女性とは、僕のメル友こと、アルダ・サーナンのお母さんでした〜! というわけで、答えは『真性半陰陽』だったので、二人とも間違いだったため、僕は、『ドーンだYO!』と宣言し、両者サルミアッキの刑と相成りました」


「正解ないじゃねーか!」


 俺は胃液を吐きつつ突っ込まざるを得なかった。

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