第百二十四話 肛門外科で美人女医にア○ルを内診されると何かに目覚めますよね
「に、二度と来なかったって……どういうことだ!?」
知らず知らずのうちに、俺は竜胆少年のややマッドな話に引きずり込まれていた。花音もラジオペンチを放り出して傍らで聞き耳を立てている。
「最初は学校側も、『今日はお休みです』としか説明せず、登校しない日が続いても、元から休みがちなこともあって、誰も疑問にすら思いませんでした。
しかし僕だけは、前日の彼女との会話の件があったので、不信感を抱きました。
そこで一週間後、とりあえずピッキングツールと小型ウェアラブルカメラと盗聴器としっとマスクを持って彼女の自宅にこっそり侵入しました」
「まだ持ってたんかいしっとマスク!」
「砂浜さんに以前あげたのは布教用です。彼女の家は不用心なことにセコムにも入っておらず、簡単にお邪魔できました」
「……お前さん、俺なんかよりよっぽど探偵に向いているよ」
「僕は犯人に接触したら乳首がキュンと締まる能力とかはないので、別に刑事とか探偵とかにはなりたくないんですがね」
「俺にだってそんな能力ないよ!」
また糞ガキが意味不明なことを口走ったので、ラジオペンチのせいで右乳首が真っ赤に腫れていた俺は、条件反射で突っ込んでしまった。
「で、そんなこんなで様々な情報を得ることができましたが、結局彼女は僕に話しかけた日を境に家に帰っておらず、行方不明になっていたのです。
しかしエリート階級の両親は醜聞を恐れ警察に通報しておらず、経過観察状態でした」
「ひょっとして両親と仲が悪かったり、それとも彼氏がいたとかじゃないのか?」
「いえ、家族仲はとても良く、未だにお父さんと一緒に入浴するほどだったそうです」
俺は、中学生の巨乳美少女と一緒に湯船につかる脂ぎった中年オヤジを想像した。
「……きっと父親が犯人だ! 殺そう!」
「羨ましいからって興奮しないで落ち着いてください、砂浜さん。さすがに蘭布ちゃんはバスタオルを身体に巻き、お父さんもいつもちゃんと前を隠して入っていたそうですよ」
「だからお前はそういった超個人情報をどうやって入手したんだよ!?」
「それは企業秘密です。とにかく彼女の家庭はとても厳格で、父親は、『顔のいい男は、皆ホストかヤクザだ』という持論を常に唱え、ラプンツェルの継母の魔女の如く、彼女に虫一匹つかないように、いつもうるさかったとのことです」
「ちょっと極端すぎるよお父さん! てか、なんでそんな箱入り娘が爆乳祭に出させられそうになったんだよ!?」
「あまりに無名な祭りでしたし、名誉なことだとかなんとか家族中騙されて出場を約束しちゃったらしいですね。
その後真実を知って激怒した父親が権力を駆使し、祭りは廃止に追い込まれたそうです。とっても残念で僕は蘭布ちゃんの父親を殺したい! 殺しましょう!」
「お前が興奮してどうする! 落ち着け!」
いつの間にやら立場が逆転していた。さっきからちっとも話が先に進まねぇ!
「というわけで、彼女の失踪理由は不明でしたが、その代わりと言ってはなんですが、僕は彼女の巨大ブラや、染み付きパンティ、使用済みナプキン、それにお宝写真など、様々なレアアイテムをゲットし、しばらくウハウハ状態でした」
「お巡りさーんっ!」
俺はマイ携帯を引っ掴むと迷わず110番しそうになったが、花音に手刀で叩き落とされ、激痛とともに、まだ話が終わっていなかったことを悟り、通報を断念した。
絶対こやつを野に放っては、今後の人類のためにならないと思うのだが……。
「砂浜さんだって、依頼人の個人情報をゲットしたら、ちょっと嬉しくなっちゃいませんか?」
「ならねーよ! ていうか、人に話せねーし、ストレス溜まることの方が多いわ!」
「そうですか。とにかく僕も、これ以上はどうすることも出来ず、仕方ないのでエロ本を切り抜いて自作のおっぱい神経衰弱カードを造ったり、なかなかへたれ主人公がヒロインといたさないラノベの余白に勝手にセックスシーンを書き込んだり、録音した自分のエロ音声を倍速で美少女声に調節して聞いたりして、静かに時を過ごしました」
「……」
俺は突っ込みたいのを敢えて我慢していたが、今までの話の流れから、このサイコ小僧に聞きたいことがあったのを思い起こし、口を開いた。
「で、お前さんの相談ってのは、その蘭布ちゃんって娘を俺に捜してほしいってことか? 行方不明になってからだいぶ時間も経過している様子だし、難しいとは思うが……」
「いえ、そんなつまらない用件ではないです。だって、彼女は既にここにいるんですから」
「……えっ!?」
竜胆が理解不能なことを口にしたため、俺はその場に凍り付いた。