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第百二十話 閑話休題その8 だんじょんのみ

-七月十三日、「メゾン・ボトムズ」にて-


「花音、早くベッドに来なさい! 明日、『わぬわぬわぬだーらぬど』に行くし、もう寝るよ!」


「パパ! 昔話! アーナルト・ブストデモネルガー!」


「『コマスドー』は昔話じゃなくて名作映画キャラをパロッた強姦魔がいっぱい出てくるエロ漫画でしょ! ったく、じゃあ今日は、パパの創作昔話をしてあげるよ!」


「ブラボー! お話出てこい! とっぴんぱらりのぷう!」


「昔々、とある猟師のお爺さんが、歯科で噛み合わせの矯正中にトラックが突っ込んできて、神様の気まぐれで異世界に転移してしまい、その時ついでに、『名前を呼んで答えた者を何でも飲み込むことが出来る』という、けっこうチートな能力を貰いました。


 とりあえずお爺さんは村の教会に難民として保護され、牧師から読み書きや知識を教わって賢者技能を修得し、その世界の共通語をマスターしました。まずは言語を話せないと名前が呼べませんからね。


 ストーカーもどきの大活躍で、『デスノート』の月ばりに村人の名前を全部調べ上げたお爺さんは、少しずつ、少しずつ、気付かれないように村人を飲み込んでいき、ついには教会の牧師以外を全て体内に収めることに成功し、村人の財産全てを手中に収めました」


「鬼畜! エステティカ! エタる!」


「まあ聞きなさい、花音。さて、飲み込まれた村人たちは、仕方が無いのでお爺さんの体内で村を形成し、お爺さんが飲み込んだ野菜の種を体内で植えて育てたり、寄生虫を食べたり、挙句の果てにはお互いに食べ合ったりして、なんとか社会を形成していました。


 しかし、さすがにお爺さんも歳のせいか胃もたれがしてきたので、ソドムとゴモラを滅ぼした神の如く、村人どもを滅ぼそうと、教会の牧師に相談しに行きました」


「ラーマーヤナ! インドラの矢! 目がーっ!」


「牧師は、『村人を滅ぼすには、そりゃゴブリンがいいですよ』と言いました。それでお爺さんは首都まで旅に出て、賢者の学院に村中の財産を捧げてなんとか入学を果たし、ゴブリン語をマスターしました。


 そして、新米冒険者のパーティーに荷物持ちとして加わったお爺さんは、元来持っていた猟師技能でゴブリン集落に先回りして情報収集し、ゴブリン集団と新米冒険者の戦闘中に、彼らをまとめて飲み込み、ただ一人帰還し褒め称えられました。もちろん報酬は独り占めです」


「まさに外道! 糞爺! それからどんどこしょ!」


「しかし冒険者まで飲み込んでしまったため、体内では村人+冒険者対ゴブリン集団の戦力が拮抗し、日夜バトルが続いたので胃痛が更に悪化しました。


 困ったお爺さんは再び牧師に尋ねました。『ゴブリンを倒すには、エルフなんかがいいですね』と牧師は適当に答えました」


「エルフ=猿説! 駄エルフ! エルフ風呂!」


「そこでお爺さんは更に猛勉してエルフ語を習得し、エルフの住むと言われる伝説の古代の森を目指し、一人旅を続けました。この世界では結構エルフは貴重種だったのです。


 遂にエルフの隠れ里を発見したお爺さんは、エルフと対立していたダークエルフを数人飲み込んで見せてエルフの信頼を得、厚遇されました。そして安心させきった頃、徐々にエルフたちを飲み込んだのです」


「長い! 眠い! はよ終われ!」


「もうちょっとだぞ。さて、エルフを飲んだはいいものの、先に飲み込んだダークエルフがゴブリンを組織化し、しかもゴブリンは多産なのでどんどん増え、再び善悪の勢力が拮抗し、慢性胃炎は悪化する一方でした。


 仕方なくお爺さんがまたもや牧師に尋ねると、『エルフにはオークって決まってるでしょーが』と彼は鼻糞をほじりながら教えました」


「メスオーク! 高峰先生! そうめん!」


「急に眠気が覚めたようだな。でも失礼だぞ。さて、またもや学園でオーク語を習得したお爺さんは、さっそく様々な中堅どころのパーティーに参加して、次々にオークを飲み込みましたが、その都度パーティーごと吸収するし、賢者の学院の生徒や先生にもうっかり話しかけて数人腹の中にいたし、最早体内バランスは滅茶苦茶でした。


 恒例となった牧師への問いに、さすがの牧師も、『勇者とか魔王とか飲み込んだら、いい感じになるんじゃありませんか?』と完全に他人事でした」


「勇者! 魔王! なろう!」


「途方に暮れたお爺さんでしたが、既に冒険者ギルドでは高い評価を得て、S級クラスとなっていたので、勇者に面会することが出来ました。


 そして魔王討伐の面子に加えて貰い、長い旅に出て、ついに最終決戦の舞台で全員飲み込み、世界には平和が訪れました」


「ね……眠い……パパ……それから?」


「もう少しで本当に終わるから頑張れ。世界は平和でも、お爺さんの体内は地獄でした。胃炎は胃潰瘍と化し、胃穿孔も起こしかねない聖戦状態で、お爺さんは死ぬ思いで牧師に尋ねましたが、『勇者と魔王を滅ぼす方法? そりゃ、テンプレートってやつでしょうよ。ラノベでも読んでみたら?』とメタっぽいことしか教えてくれません。


 でも、ラノベ世代でないお爺さんは、ファンタジーのテンプレなんて知りません。そこで、お爺さんは怒りのあまり、とりあえず役立たずの糞牧師を飲み込んだ後、歯科で噛み合わせの矯正に使用していたテンプレートを飲み込んだのです!」


「ZZZ……」


「ふぅ、やっと寝てくれたか、落ちをまだ考えてなかったので、やばいところだった……では、これにて今晩のお話、『だんじょんのみ』はおしまいです。また明日な、お休み、花音」


 ちゅっ。

というわけで、すいませんがまだまだ闘病中で、しばらく不定期更新にさせてください。ちなみに尿道カテーテルは骨折並みに痛かったです!wはやく歩けるようになりたいですね。では。

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