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第百十三話 閑話休題その7 爆乳祭

「爆乳美少女のおっぱいを言葉責めする祭を見学しに行きませんか?」


「はぁ?」


 竜胆少年の異常な言動には慣れっこになっていたはずの俺も、この時ばかりは呆気にとられてしまった。


「以前話した僕の幼馴染の李布ちゃんが、彼女の親戚に頼まれて、今度巫女役でその祭に出ることになりましてね、僕に是非力を貸してほしいとの事で、行く約束をしちゃったんですよ。というわけで、平日の昼間っから暇そうな大人の知り合いは……」


「その後はもうわかってるから話さなくていいよ! てか李布ちゃんってクリスチャンなのに巫女役なんかやっていいのかよ!?」


「ああ、実は例のクリスマスの一件以来、彼女のうちは全員改宗してるから大丈夫ですよ。じゃあ、お願いしますね。美少女の生乳が拝める貴重なチャンスですよ、砂浜さん」


「うぐぅ、人の足元を見やがって……」


 とまあなんやかんやあって、七月初旬のある晴れた日の朝、俺は彼と花音を愛車のポルテに乗せて北上し、一時間以上かけて、周囲に海と田園と森しかない凄まじいド田舎までやってきた。


「しかしいったいどういう祭なんだよ?」


「昔はこの近辺に伝わる『いどり祭』と同様、当番役が造った大きな二つの鏡餅に対し陪賓役がいろいろ難癖をつけ、当番役が弁解するという行事だったそうですよ。


 しかある年飢饉のために鏡餅を造ることが出来ず、代わりに村一番の爆乳の娘を巫女に仕立て、その乳について激論する内容に変更したところ、非常に好評だったため、それが代々数百年も受け継がれているというわけだそうです」


「そりゃ好評だろうけどなんか違うよ!」


「おっぱい! 巫女みこナース! 愛のテーマ!」


「ちなみに僕たちは当番役サイドで参加しますから、彼女の爆乳を精一杯褒め称えて下さいよ」


「相変わらず貴様の頼み事はハーブ過ぎるな! わかったよ、やりゃあいいんだろ、やりゃあ!」


「そろそろ着きますよ、あそこです」


 というわけで、俺たちはその村で一番大きな神社の前に停車した。中に入るとさっそく控えの間に通された俺と竜胆は黒い紋付羽織袴に着替えさせられ、花音を引き連れ広い拝殿に通された。


 一段高くなった奥の間に座る年老いた神主を挟んで、右側に当番側が、左側に陪賓側が座っている。ちなみに俺たち以外は全員中年〜初老のオヤジばかりだった。


 皆、緊張した面持ち……と言いたいところだが、期待に目を輝かせ、心ウキウキワクワク状態にしか見えなかった。当然と言えば当然だが。


「そろそろ主役のお出ましですよ」


 竜胆の言葉とほぼ同時に、神主が、「かしこみかしこみ申す……」と何やら祝詞を唱え始めた。


 やがて銅鑼の音とともに、奥の方から白い小袖と緋袴に身を包んだ美少女が、薄紫色の長髪をなびかせて登場した。


 驚くべきことに、白衣は彼女の肩に引っかかっている程度で、運動会の大玉転がしも凌駕するかのような大きさの(言い過ぎ)、内側から光り輝くように見えるほど美しい双丘が、どどんとまろび出ていた。


 ぷっくりとしたピンクの乳首がとても可愛らしい。


 彼女こそが噂の李布ちゃんに違いない。


「なんて大きさだ! 下品すぎる!」


「体重計に乗った時、自分の体重見えねぇだろうが!」


「こいつに合うブラどこに売ってんだよ! 欧米か!」


「おまえのような中学生がいるか!!」


「てめぇのおっぱいもさぞ重かろうがこっちも股間に色々背負ってんだよ!!!」


 さっそく陪賓側の方から様々な罵声が飛び交い、神殿中に響き渡る。聞いていて割と酷い。


「ほら、僕たちも言い返さないと負けちゃいますよ!」


「わ、わかったよ! えーっと……オラなんだかムラムラしてきたぞ!」


「その調子です、ものすげぇ乳だ……! まだまだでかくなっていくぞ!」


 一方、相手側も負けてはいない。


「爆乳スランプ!」


「きたねえ乳輪だ! こいつはくせえッー!」 


「げげらのにおいがプンプンするぜッーッ!!」


「あんなもの飾りです。エロい方にはそれが分からんのです!」


「パフィーニップルが許されるのは小学生までだよねー!」


 李布ちゃんはもはや涙目状態で、俯いて「ううう……」と声を殺して泣いており、見ていてこっちまで辛くなってくる。


「クッ、敵もさるものですね、デカルチャー!」


「あそこを観たいわ! その子のま○こをみせてちょうだい!!」


 俺の声援(?)に対し、神主が何故か黄色いカードをさっと出す。


「砂浜さん、それはNGワードです、気を付けて!」


「それを先に言ってくれよ!」


 とかなんとかしているうちに、あまりの恥ずかしさに耐えきれなくなったのか、とうとう李布ちゃんは真っ赤になってうつむき、両手をクロスさせるようにして胸を隠してしまった。


「ギャハハハ、とうとうしまいやがった! おうちに帰って母ちゃんの、じゃなかった自分のおっぱいでも飲んでいるんだな!」


「恥を知りなさいッ!」


 陪賓側は大喜びで、彼女を追撃する。誰の眼にも、落城は時間の問題かと思われた……ただ一人を除いては。


「よし、李布ちゃん! それでいい! それがベスト!!」


 なんと竜胆だけ、彼女に対してガッツポーズを見せ、勝利を確信したかのように微笑んでいる。


「ど、どういうことだ、竜胆君!?」


「彼女のポーズは、いわゆるフラッペンハンドといわれる触診方法です! 


 ああやって親指以外の四指を癌の好発部位である乳房の上外側に当てて揉むことによって、乳癌をより発見しやすくするんですよ! 


 彼女は無意識のうちにその奥義を身に着けていたのです!」



 彼の熱い台詞に押され、敵側のパワーも徐々に沈静化していく。


「そういや俺、そこまで気をつけてうちのカカアの胸を揉み揉みしてやってなかったな。なるほど、ああやるのか……」


「参考になるわ。うちのやつも昔片方手術したし……ところで本当は俺、ここだけの話だけどげげらっぱい大好物なんだわ」


「オラもだ。やっぱ自分に嘘はつけねえ。負けだよ」


 俺は青菜に塩を振ったようにどんどんしおれていく敵陣営を見てあきれ返った。さすが現代のエロ孔明こと竜胆、恐るべし!


「まあまあ皆さん、お互いよく頑張りました。ここらで引き分けといたしましょう」


 ここでようやく審判員である神主が柔和な笑顔で試合終了を告げ、皆そろって柏手を打った。


「爆乳万歳! 爆乳万歳! 爆乳万歳!」


「感動的じゃないですか砂浜さん、爆乳の前では人はノーサイドなんですよ。まさに爆乳こそ全てを支配する独裁者・ビッグブラジャーですね!」


「それを言うならビッグブラザーだろう! てかどういう祭なんだよこれ!?」


 俺の悲鳴は爆乳を称える歓喜の渦にかき消された。

おっぱい、おっぱい!というわけで、実は冗談抜きで数日前に転んで片足を骨折し、現在入院中です!(泣)幸い次回更新分はなんとかなりそうですが、その後がすいませんがしばらく不定期になるかと思います。どうも皆さんごめんなさい!次回は2月25日更新予定です!では。

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― 新着の感想 ―
[良い点] なんてうらやまけしからん祭りだ! ぜひ全国規模に展開していただきたい!
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