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第十話 SM倶楽部の人気女王様のような広い心で適当に読んで下さい

「どんな人間も、すべからく気分の波を持つ。


 気分の波は躁と鬱からなり、人間である以上感情の変動から免れることは出来ない。


 躁であれば波は高くなり、鬱になると低くなる。


 波はサインカーブで表現されるが、人によってその周期や揺れ幅は様々である。


 この世界ではアキスカルという精神科医が波を六つの型に分類したが、そのスペクトラムはまだ様々なタイプに分けられると予想される」


 司令はここまで一気に話すと、ビールを一口飲み、喉を湿らせた。


 う~む、いきなりよく分からんぞ。


「さて、次元を超えて伝わるものに重力波があるという仮説があるが、実はこの感情の波、エモーショナル・ウェーブも、異次元にまで届き物理的に多大な影響を及ぼすものである。


 このことは未熟な地球の科学および医学からは知る由もないが、私の本体が存在する次元……バイポーラー次元では良く知られており、長年研究が進んでいた。


 バイポーラー次元では元来女性の気分変動が著しく強く、易怒性が実体化し、周囲の物を物理的に破壊する現象が頻繁に見られた」


 んー、要するに女性が怒りっぽいって話か? 


 それなら理解できるぞ。何しろ愛しの我が子を見ただけで一目瞭然だ。


「近年その被害が災害レベルにまで達したため、早急な対策が必要となり、私はエモーショナル・ウェーブが異次元に届く研究をしていたので、対策チームの長に選ばれた。


 私は従来僅か数パーセントしか伝導しなかったエモーショナル・ウェーブをほぼ百パーセント異次元に送り込むための装置を開発し、被害を食い止めることに成功した。


 つまりエモーショナル・ウェーブが次元を超え、こちら側の世界で実体化したものが、あの様々な人体パーツというわけだ。


 この物体、つまりエロンゲーションは、破壊衝動に突き動かされ、こちらの世界で破壊活動を行い、その衝動が解消されると消滅する。


 地球の現在の兵器では倒すことは不可能に等しい」


 えーっと、つまりこっちに不燃ゴミを押しつけたってわけか? 


 おいちょっと待て、と思ったが、まだ話の途中なので、茶々を入れるのは遠慮した。


 俺も少し酔って来たようで、思考がやや緩慢になりつつあった。


 元からそんなに酒に強くないのだ。


「しかしこれでは単にやっかいものを他所に送り込んだことにしかならず、そのことで私は心を痛めていた。


 そこで私は極秘裏に別の研究を同時に進めていた。


 女性に比べて遥かに劣るが、男性にも存在するエモーショナル・ウェーブを集束し、コントロール可能な状態に変換して同じく異次元に送り込む……つまり、OBSの開発を行ったのだよ。


 これこそが、エロンゲーションに対抗出来得る、唯一にして無二の兵器である理由だ。


 OBSはエロンゲーションに対して非力ではあるが、理性の力で操作すれば、必ずや打ち勝てる、と私は踏んだわけだ」


 確かにあの連続ビーム攻撃に対してこっちはちょっと非力すぎたな。


 もうちょいゲームバランス考えろよオヤジ。しかし長い話だ……ふぁ。


「私は計四体のOBSを生み出し、こちらの次元に転送させることに成功した。


 三体は、外部からコントロールしなければ動かないが、一体のみ、私の全てを注ぎ込み、私と同様の知識を有し、自力で活動できる特殊仕様とした。


 誰かがOBSについて説明し、必要な器具を開発しなければならないからな。


 もっとも戦闘機能は負荷がかかり過ぎるため殆どつけれなかったが。


 つまり、今こうやって話している私自身がその最後のOBS、というわけだ」


 な、なんか今、さらっととんでもないこと言ったような気が……。


「この世界の時間にして十年前、私達四体はこちら側に転送された。


 それが高峰先生が院長をしている高峰クリニックの現在ある場所だ。


 そこには以前廃病院があり、長年放置されていたのだよ。


 私はかの場所で、他の三体同様休眠モードとなり、来るべき時まで仮死状態で眠っていた。


 しかしその眠りを覚ますものが現れた」


「それがこのあたしってわけ」と羊女が口を挟む。


「以前から廃病院が気になっていたし、知り合いの高峰先生が今度そこを更地にして建て直すって聞いたもんだから、最後のチャンスと思って、こっそり探検に来たのよ。


 そしたら美味しそうな裸の殿方が四人もロッカーの中にいるじゃないの。


 さしずめ眠れる森の熊さんって感じね。


 気がついたらつい、あたしそのうちの一人の唇にむしゃぶりついちゃってたのよ。


 すると突然緑色に光り輝いて眼をさましちゃうんだもん。びっくりしたわよ」


「何でキスするんですか!?」


 今まで黙って傾聴していた俺は、さすがに我慢しきれず突っ込んでしまった。


「あら、だって身体がひとりでに動いちゃったんだもん。


 仕方ないじゃなーい。


 でもひょっとして、妬いてくれたの、太郎ちゃん?」


「誰が妬くかあああああああああ!」


「パパ! どうどうどう!」


「ああっ、花音! 乳首を攻めないで!」


 さっきまでチクチンや竜胆少年と戯れていた花音が知らないうちに机の下から顔を出し、俺のジャージの中に手を突っ込んでいた。


 とりあえず俺は、落ち着いた。

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