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第九十八話 昔トイレの壁にオカズ用イラスト(確か昏睡レ○プもの)貼ってたら突如やってきた友達に見られましたorz

 俺は、午後の日光を浴びつつベッドに日向ぼっこ中のアザラシのように寝そべりながら、今までわかった点を独自研究かつ整理してみた。


 奥村伸一が殺した弟・健二は、師匠・海野思羽香の元カレで、彼女が伸一を殺害する動機は十分にある。


 しかし伸一はおそらく自らトイレの便器に首を突っ込み死んでいた。誰も手をかけた形跡はないし、実行することも状況的に不可能だ。


 だが俺は、奇妙な点がいくつかあることに、高峰先生との会話で気付いた。


 まず、いつも睡眠薬を飲んだら朝まで爆睡してしまう彼が、何故昨日に限って夜中ごそごそと起きていたのだろう? 


 しかも、何か準備をしてからトイレに行ったのは明らかで、通常の用足しとはちょっと考えにくい。ここに謎を解くカギがありそうな気がする。


 ここでは薬は、全員デイルームで看護師からそれぞれ手渡され、衆人環視の中内服する規則になってはいるが、師匠のように、眠前薬を飲むふりをして舌の裏などにこっそり隠し、用事の為、わざと眠らなかったのだろうか?


 でも、それにしては、採血では普段と特に変わらなかったとのことだし、ちゃんと内服はしていたようだ。うーむ、わからん。何か睡眠薬を飲んでも眠らない裏ワザでもあるのか?


 また、鬼畜ゲームの濃い竿キャラばかり好んで描く癖に、何故よりにもよって純愛ゲーのメイドロボットなんぞを描写した絵を犬みたいにくわえてくたばっていたのかも謎すぎる。


 ダイイングメッセージにしたってもう少し常識的なことをするはずだ。てかわざわざダイイングメッセージ携えて死ににいく馬鹿もいないだろうな。


 たとえばオナニー用におかずイラストを持って行ったという説が考えられるが、俺の目の前で型月がどうのと熱く述べ続ける豚マン野郎によれば、彼はこのバーバラセクサロイドだったかが出てくるエロゲーを製作したLeafに関してはあまり詳しくないとのことだし、どうも彼の性癖からは外れているらしいし、その可能性は薄そうだ。うーむ、さっぱりわからん。


 そして、例の占いの件だ。昨日、伸一はあまり触れたがらなかったが、師匠との話の後から彼の様子がちょっとおかしかったのは明らかだ。


 つまり、そこで何かを吹き込まれ、夜中に何らかの行動に出たと考えるのが正しい道筋かもしれない。彼が一番気にしていたことと言えば……。


「家族か?」


 思考が口から無意識に発露し、室内の淀んだ空気をかき混ぜる。


「急にどうしたんですか、終わらない夏休み?」


 篠原が、扇子を動かす手を止める。お前まだ講義してたのか。


「いや、ちょっくら聞きたいんだけど……」



「エロゲー各論ならまだこれからですよ、序ノ口譲二!」


「それはもうええっちゅうねん! 奥村伸一は何か悩んだりしていなかったかい? 何かを占ってほしがっていたとか……」


「先週までは存在しない奥さんの妊娠中の子供の名前ばかり考えてましたけどね。でもここ数日は、妄想がスイッチングしていったようで、『嫁さんが俺と別れたがっているようだし、新しい恋でもしちゃおうかなー』とかほざいてましたよ、NTR!」


「ああ、そういえば俺にも妻と不仲だって言ってたっけ……」


 俺は、一昨日のデイルームでの彼とのやり取りを思い浮かべた。ということは、師匠に尋ねたのは、それに関するいわゆる恋占い?


「僕が知っているのは西洋で発達したといわれるおっぱい占いと、独自発達したち○こ占いぐらいですが、どちらに関しても諸説ありまして、難しいもんですね、パールネックレス!」


「聞いてねえ! ところでここって、なんか占いについての本ってないの?」


「確か図書室に行けば、置いてあったと思いますよ、イリュージョン!」


「わかったよ、サンキュー」


 俺はそう言い残すと、ズボンのポケットにメモ用紙とボールペンを突っ込み、エロゲーにおけるポリゴン技術の導入と進化について熱弁を振るい続ける講師を置き去りにして、真理の探究のため、自室を後にした。



 デイルーム付近の小さな図書室(六畳間程度しかない)には、幸い先客はいなかったため、俺は存分に本棚を検分した。


 汚豚の言った通り、占いに関する雑学本が一冊隅に挟まっていたので、手に取ってその場で読書タイムとした。机と椅子はそれぞれ一つしかなく、今が誰にも邪魔されないまたとない好機だった。


 本はイラスト付きで素人にもわかりやすく解説してあり、手相やタロット占い、星座占いから始まって、夢占い、こっくりさん、ダウジングと続き、果ては占星術、四柱推命、紫微斗数など幅広い知識を網羅しており、読み物としても非常に面白かった。


 だが、いくら捜してもトイレで行う占いなんぞは中々載っていない。ま、そりゃそうだろうな。う○こからわかるのは、せいぜいお腹の調子ぐらいだろうし……と思ったら、欄外のコラムに、「『シャルビューク夫人の肖像』という小説には、雪の結晶や大便から未来を占う占い師たちが登場するが、現実には確認されていない」云々という記事があったけど、さすがに違うよね、これ!(ちなみにう○こ占い師のことは汚穢学者というらしい。へー)


 眼も疲れてきたのでいいかげん部屋に戻ろうとして、本をパラパラ流し読みしていた時、とあるページで俺の指先が止まった。


「ん? これはひょっとして……」


 何かのピースが、カチリと音を立てて、俺の脳内で見事にはまった。

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