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第九十七話 宮内レミィのパンツ集めで挫折したっけ……

「うーん、しかしいくら考えても占いで人を殺す方法が思いつかないな……」


「別に、まだ殺害されたと決まったわけじゃないですけどね」


 何となく糸口を掴んだような気になったのはいいものの、そこから先が続かず、俺たちの推理は早くも暗礁に乗り上げていた。所詮素人が探偵を気取るのは無理なのだろうか?


「何か遺体に外見からはわからない変なところはなかったんですか?」


 俺は何となく、高峰先生に尋ねてみた。


「検査でも特に異常はなかったしな。先程遺体の採血結果が出たが、血中の薬物濃度も、普段飲んでいる薬の有効血中濃度の範囲内で、内服してないとか、逆に多すぎるということもなかった」


「つまり、普段飲んでいる薬をいつも通り飲んでいたということですか?」


 そう再確認しながら、俺は何か違和感を感じていた。


「おそらくな。もし彼が大量に睡眠薬または他の薬をトイレで飲んで、ぶっ倒れたとかならまだ理解できるんだが、血液データからは否定されるわけだな」


「なるほど、血液は誤魔化しようがないでしょうから、それは真実ですね」


「機械の故障でもなければな。畜生、こんなことなら遺体をバーニングさせるんじゃなかったぜ」


 女医は形のいい桜色の唇を歪ませ、悔しげに歯ぎしりをする。


「でも、もう燃やしてしまったものはどうしようもないですし、実際にもっと調べたとしても、これ以上何もわからなかったかもしれませんよ」


「そうだな、私もあれ以上両親を説得するのは不可能だったしな……仕方がない、今のところはここまでとしよう。また何か気付いたことがあったら教えてくれ。お前さんには密偵を申し付けるぞ」


「なんか御庭番衆だかCIAだかみたいですね……わかりましたよ、俺もいろいろ調べてみます。エロゲーのこととか気になりますし」


「任せたぞ、うまくいったら私の陰毛くらいやるぞ」


「いりませんよ!」


 俺は背後に怒鳴りながら、そそくさと、長居し過ぎた面会室を抜け出した。



「何ですって、HMX-12マルチのことを教えてほしい、ですって? お任せください、お安いご用です、行く行くマイトガイ!」


 自室に戻ってさっそく寝そべっていた篠原に問いただしたところ、彼は二つ返事で快く了承してくれた。少しは慎め。


「まずは光栄の『ナイトライフ』や国会で取り上げられた『177』から話した方がいいですか、ヤブユム?」


「そんなエロゲー史を一から講義しなくても別にいいよ! 何時間かけるつもりだよ!?」


「そうですか、残念ですね。でも初期の四大エロゲー会社の話は避けては通れないのでよく聞いてください、イクイクパックン!」


「わかったから早くして!」


「いいですか、簡潔にまとめますと、ほぼエロゲー専用機と化していたPC-98全盛期にエロゲー業界で最も猛威を振るったのは、東の横綱と言われるelfや、その母体となったフェアリーテール、初期ソフ倫のトップにもなったD.O.、そして西の横綱と言われるアリスソフトの四社だと、僕は個人的に思っています。


 某エロゲー雑誌にコラムがあったのがその四つって理由もありますけどね、天使たちの午後!」


「……はぁ、それで?」


「しかし1990年代後半に入ると、ストーリー性を重視したノベルゲームと呼ばれる一派が台頭してきまして、鬼畜系の『雫』や『痕』を発表した後、何故か急に純愛系の『To Heart』を発売して世間の度肝を抜いたLeafと、『ONE 輝く季節へ』などの泣きゲーをヒットさせたKeyが二大巨頭となり、両者の社名をとって、いわゆる葉鍵時代が訪れます。


『遺作』シリーズは、そのアンチテーゼとして生み出されたともいわれます。ここまではいいですか、沙織事件!」


 デブは興が乗ってきたのか、六尺扇子を噺家の如く器用に操り、多分マウスやキーボードを操作している真似を合間に入れながら、唾を飛ばしまくっている。非常に暑苦しい。


「わかったわかった。で、まるちぷるたいたんぱあとやらはいつ出てくるんだ?」


「なんでそんなネタが出てくるんですかその名はアムネジア野郎! てか、さっき僕が説明した『To Heart』に登場するメイドロボットの名前がマルチなんですよ、秘密指令1919!」


「そうか、人間じゃなかったのか。どうりでドライヤーが耳から生えてると思ったよ」


「それはドライヤーじゃなくってヘッドギアです! ちなみに僕の一押しは、主人公の友達の佐藤雅史ですけどね、モロ感!」


「そういやあんたゲイだったな! なんでエロゲーなんかやってんだよ!?」


「僕はどっちかというとバイセクシャルですし、二次元美少女は大好きですよ。もっとも二次元ショタはもっと好物ですが、昔は弾が少なくてですね。まぁそれはさておき、本題は奥村伸一氏の件でしょう、クルージングスペース!」


 そういや彼には、奥村がマルチの絵を咥えて死んでいたことは話したんだった。


「ああ、彼はそのキャラが好きだったのか? それとも何かこだわりでもあるのか?」


「はて、マルチはLeafを代表する有名なキャラなんですが、そもそも彼は、Leafのゲーム自体やってなさそうでしたねぇ。


 僕が、鬼畜な『雫』や『痕』をお勧めしといたんですが、『でも、濃い竿キャラがいないって噂じゃないか』と言って、あまり興味なさ気でした。確かにそういわれたらそうなんですけどね、デンタルダム!」


「うーむ、結局謎は謎のままか……」


 俺は、その後もエロゲー概論をだらだらと垂れ流し続ける篠原教授を放置したまま、一人物思いに耽った。いろいろと引っかかる部分はあるんだが……。

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