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風の詩人  作者: 月本星夢
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友人達との再会

 翌日、光の屋敷に三人の騎士が、普段着のままで、訪れた。

少々緊張気味の彼等に、光の騎士が声を掛ける。

「御久し振りですね、エニア、ファム、レト。リシェア様が御待ちですよ。

何か、変更があるそうですので、直接御本人に御聞きして下さいね。」

そう言われ、彼等は屋敷の中に案内された。屋敷内は神の気配が満ちている為、一瞬、緊張が強まったが、優しく包み込むそれに気が緩む。

慈悲を沢山含む、気配の大元へ彼等は案内され、その部屋に入る。中には光の神と大地の神、そして、その家族が集まっていた。

「良く来たね、エニア、ファム、トア。判っていると思うけど、一応紹介するよ。

僕の家族…父上と母上、兄上とリーナだよ。」

簡単に説明するリシェアオーガに、エニアことエニアバルクは頭を抱え、ファムことファムトリアと、レトことレトヴァルエは、普通に挨拶を告げる。

一人頭を抱えたままのエニアバルグは、挨拶と共にリシェアオーガへ文句を付ける。

「初めまして、オーガの友人のエニアバルグ・ラサ・クームトと申します。

……オーガ……家族が来るなら、前もって伝えておけよな!まさか本当に、ジェスク様まで来るなんて……もう少し早く知っておけば…。」

「…知っておけば、剣の相手をして貰う心算(つもり)だった?

御免、エニアに知らせようと思ったんだけど、用意をあれこれしてたら、出来なかったんだ。剣の事なら、祭りの後で、稽古を付けて貰えるように頼んでおいたけど…それじゃあ、駄目?」

エニアバルグの言いそうな事を予測した、リシェアオーガの返事で、言われた本人はぐうの音も出なかった。彼等の様子を見て笑い出したファムトリアは、そのままの表情で勝敗(?)を告げる。

「……オーガの勝ちですね。エニアの行動は予想し易いですからね。」

ファムトリアの突込みに、レトヴァルエも頷き、自分達もと付け加える。彼等の意見に快く承知する光の神へ、やんわりと大地の神が意見を述べる。

「ジェス、リシェアのお友達だと言っても、勢い余って怪我をさせないで下さいね。

そんな事をすると、この子が悲しみますよ。」

「「「リュース様、御気持ちは嬉しいのですが、我等は騎士。

剣の訓練での怪我は付き物ですから、御心配いりません。」」」

口を揃えて言う彼等へ、リュースは仕方無く納得した様だった。

その様子に、リシェアオーガも言葉を掛ける。

「母上、もし彼等が怪我をしても、僕がいるよ。

剣の訓練の怪我なら、十分治せるし、怪我も経験の内だよ。」

「そう言っても…え?リシェアも、怪我を治せるの?なら、大丈夫ね。」

我が子の言葉で、心底安心した顔となったリュースは、彼等から見ても、母なる御方にしか見えない。

母なる大地の神…その呼び方に相応しいリュースの心遣いに、青年騎士達は思わず一礼した。彼等の姿を見たジェスクとカーシェイクは、感心して、リシェアオーガの友人を見ていた。

姿、性格はそれぞれ異なるが、信頼と信条いう物は、彼等に共通する。

リシェアオーガに向けられる、信頼の念と友情の念。

同じ位の年頃の者が育むそれを、彼等は心の内に住まわせている。

勿論、リシェアオーガにも言える事。

彼等を信頼し、友人としての口調で対応する。

そこに、神と人間の垣根は無い。

単なる友人達の集いに、光の神と知の神は、微笑んで見守っていた。


 そんな彼等を、羨ましそうに見つめるリルナリーナだったが、不意に、リシェアオーガに引っ張られ、彼等の前に出された。

急な行動に驚き、キョトンとする彼女を、リシェアオーガは紹介する。

「この子が、僕の双子の兄弟のリルナリーナ。

今日、一緒に行きたいって、言っているんだけど、良いかな?」

「私達は構いませんけど…リルナリーナ様が、ドレス姿で無いという事は、オーガと同じ性別にお成りですか?」

ファムトリアの即答に彼等は、彼女(?)の服装を確認する。リシェアオーガと同じ形、同じ色で、金の線と紫の実の房は同じだが、薄紅の花弁がその違いを示す。

上着の下には剣の存在が無く、代わりに小さな袋が存在していた。何時もの少女に見える姿で無く、少年に見える彼女が口を開く。

「我儘を言って、ごめんなさい。

如何しても、オーガのお友達と一緒に、回りたいな~っと思って…。

この格好、可笑しくない?」

初めて着る男物の服装に、不安になっているリルナリーナに、彼等は首を横に振る。

綺麗だとか、可愛いだとか思っても、あまり少女には見えない姿…隣にいるリシェアオーガにそっくりな姿に、違和感は無い。

まあ、女性らしく見える少年で通じる姿なので、左程可笑しくなかった。

双子の兄弟の姿が、微笑ましく映ったようで、周りの家族や精霊達は、優しい微笑を浮かべていた。


「リーナでは女の子らしいから、リルで呼ぶけど…いい?」

「判ったわ…じゃなくて、判ったよ。ええっと、リシェ。」

双子の会話に、騎士達も納得し、彼等の呼び名も決まった。リシェアでも良いのだが、双子の兄弟同士なら、リシェの方が自然に思えた。

リシェアオーガの友人達と合流した光の家族は、人々が祭りの最初にする事である、神殿の参拝へ向かう為に屋敷を出発する。

この時、不本意な顔をしたエニアバルグの両腕は、光地の兄弟で固められ、半ば強引に連れて行かれた事は言うまでも無い。その姿を、ファムトリアとレトヴァルエは笑いながら眺め、光地の家族は微笑ましそうに見ていた。

こうして、新しい国の建国祭は幕を開けた。

穏やかに始まる祭りの喧騒は、神々の姿を内包して、更に賑わって行く様相を見せて始めていた。

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