序章
【戦の神の叙事詩】シリーズ【新しい国の小さな波乱】の続編兼、【緑の夢、光の目覚め】の番外編となります。
あの少年は…如何しているのだろうか?あの戦火を潜り、無事でいるのだろうか?
噂では、光の神の預かりになっているとか、神子だったとか色々聞いているのだけど…どれもはっきりとした真実だと判らない。
会えると思えない、噂ばかりが耳に届く。それでも私は、彼に会いたい。
三年前の約束を…私はまだ、果たしていないのだから…。
風の精霊の竪琴を携えた詩人は、旅空の途中で何時も、そう思っていた。
三年前、マレーリア王国がエストラムリア国と呼ばれていた時に、出会った緑の髪の美しい少年。
彼との約束を果たせないまま、その国の改革の戦火に巻かれた詩人は、当時匿ってくれていたエーベルライアムによって、戦火が大きくなる前にこの国を出された。
無事に国を離れ、旅を再開した詩人は、少年の噂を幾つか聞いていたが、何処の場所ならば、彼と会えると言う確証へには至らなかった。
これ故に彼は、事ある毎に新しくなったこの国を訪れ、少年を捜していた。
この場所なら何時か、少年と会えると感じる、確証に似た己の感で、この国を幾度と無く訪問している。
少年と交わした約束を果たす為に。
少年に再び会いたいが為に。
未だ目的の少年に会えない詩人は再び、三年間、通い詰めている、マレーリア王国の王都で開催される祭りへ参加する為に、足を進めていた。
今度こそ、少年に会えると思い、漸く詩人はマレーリア王国へ入国を果たした。