side-B 再会の日
私が短期間で目覚ましい活躍を見せると、最初は軽視をしていた連中も対応が変わった。
『家畜兵』などと私を嘲っていた奴らも気付けば『戦乙女』と持て囃すようになり、ついには私も主力部隊の末端に加えてもらえるようになった。
しかし、栄光はいつまでも続かなかった。
誘い出された我らの部隊は、いつの間にか伏兵に背後を固められていた。
敗走していた正面の敵軍が反転し、気付けば四方を囲まれていた部隊は大混乱に陥る。
統率が崩れて逃げ惑う友軍を叱咤しながら、私は今後の戦況を見据える。
これだけの戦力を失っては我が国に勝ち目は無いだろう。
既にこの戦争の勝敗は決したと言っても過言ではない。
ひとり、またひとりと迫り来る敵兵を打ち払いながら、私の頭にはある男の姿が過ぎっていた。
まだ死ねない。
まだ、あなたとの約束を果たしていない。
背後にいた敵兵を蹴り飛ばすと、私は転進を開始した。
***
どれだけの追撃を退けたろうか。
共に転進した友軍と合流し殿軍として敵軍を退けていたが、敵部隊が戦力を集中させると我が部隊は為す術も無く壊走した。
散り散りになった仲間たちを心配しながらも逃げ続け、何とか追っ手を撒く。
平野部を避け、森林地帯を突き進み、私はあの街を目指す。
見覚えのある街道に出ると力の限り駆け抜ける。
体力の限界を感じ始めた頃、漸く懐かしいあの街が見えてきた。
いつも通っていた道を真っ直ぐに歩む。
この角を曲がるともうすぐだ。
曲がり角から見上げると、あの看板が見える。
毎日見ていた、あなたの看板。
その下には、私の蹄鉄が寄り添っていた。
私が入口を開けようとすると、扉は自然に開かれる。
目の前にはあなたの姿。
「ただいま」
その言葉を口にした時、私の身体は温もりに包まれた。