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馬について

ファンタジーの定番、欧州中世世界。 馬が良く登場しますが、馬について思うことを書いてみました。

多くのネット小説や、ファンタジーでは、ヨーロッパ中世のような設定をもとにしている場合が多いようです。 ですから、人間の移動手段は、馬に騎乗するか、馬車を利用することになっています。また、物の移動には荷車が使われ、それも馬が牽引する事が多いようです。 余計な話ですが、日本では、車の軸受けが発展しなかったので、江戸末までは、高速な馬では無く、ゆっくりと動く牛が荷車を牽く事が多かったようです。


さて、馬についての描写を読んで気になる点をいくつか書いてみます。

一つは、馬が、現代の車やバイクのように、とても手軽で高速に移動できる手段と見える点です。 実際に、馬を使って移動をしてみると、非常に手間がかかる動物である点に気づきます。 まず、馬に乗るには、馬具が必要です。 グッチなどヨーロッパの高級ブランドは、かつては馬具屋であった事から判るように、馬具は非常に高価です。

また、馬具の発達を考えると、あぶみが発明されるまでは、騎乗の姿勢は非常に不安定で、武具を使う事は簡単ではありませんでした。 ヨーロッパでは、ローマ時代は鐙が無く、6-7世紀に東欧に伝わったようですし、中国では4世紀くらいまでは用例が無いので、三国時代には 鐙はありません。 ですから、三国志の英雄が馬上で武器を振り回したり、矢を射て活躍するには、鐙無しで足が馬体をグリップ出来る超人的な下半身の力が必要だったと思います(笑)


野生馬にいきなり馬具をつけても、使えません。 馬には調教をしないと、思った通りに動いてくれません。 馬は非常に憶病で用心深い動物で、まず人間に慣れてくれないと、健康な状態を保てません。特に、戦争で使う場合には、銃声や号令など、大きな音で怯えない訓練は必須です。 また、牡馬ならば、去勢をしないと、非常に気が荒く、発情期には制御が利かなくなります。 このように、馬を使えるようにするには、その為の訓練システムと、馬具などの補助機器が揃っている必要があります。


さて、使える馬が手に入ったとして、自分が馬に乗って移動する場合を考えてみましょう。

馬は、大量の飼料と水を消費します。最低でも、飼料は体重の1%、通常は2%必要です。

馬の体重を500kgとすれば、毎日10kgの飼料が必要で、水は30-40リットルくらい飲みます。 

つまり、馬が、バイクや車と違うのは、自分が一日に必要な量の飼料を積んだら、何も積めなくなるという事です。 短距離の移動や、宿場(馬のサポート施設を含む)があれば、このような飼料を持って動く必要はありません。 しかし、そのような用意がなければ、馬は動けなくなるか、都度 水を探し、草を食べさせる必要があります。 野生の馬は、水と草がある場所にしか住めず、そこから人間の都合で離れるならば、水と食べ物は必要だという事です。 

10kgの草を食べさせるには、草原や森で、短時間休憩しても不可能な点は明白なのです。

ならば、当時の人は、どのように移動したかと言えば、ある程度のグループを作り移動し、騎乗の馬 5頭くらいに対して、飼料専用の駄馬を1-2頭用意したのです。

つまり、一日 移動するならば、騎馬以外に馬の飼料を運ぶために最低限 1頭の駄馬が必要なのです。飼料とは、地面にある草よりも栄養価の高い食べ物で、それゆえ馬の食事時間を短縮できるのです。 準備の良い旅人ならば、馬の故障に備えて、替え馬も用意しました。


無事に一日の移動が終わっても、まだ仕事があります。

馬から馬具を取り、飼料と水をやり、体をマッサージしてやり、体や蹄に異常がないか確認をする必要があります。 太平洋戦争では、日本を含み多くの国が馬による移動を行っていました。 従軍経験のある人に聞くと、一日の移動が終わった後、馬の手入れに最低でも3-4時間かかり、寝られるのは2時過ぎだったと聞いた事があります。

ですから、ファンタジー中世の世界だろうが、馬が この世界と同じようなものならば、本当はかなり手間がかかるものです。 西欧の騎士や、日本の上士が、馬に乗り複数の従者を連れているのは、単に威厳の為だけではなく、馬の世話をする人間が実際に必要だからなのですね。


多くの現代人は、馬とは離れた生活をしていますので、あまり違和感を感じないかもしれません。 しかし、馬の世話をした事がある人や、乗馬の経験がある人ならば、馬による移動が、いかに金と手間がかかるものであるかは、良く判るとおもいます。

そうした人にとって、馬を、車やバイクのような、手軽で便利な移動手段といて描く事は、違和感を持たせる事になります。


もちろん、魔法による治癒や強化をすれば、多くの問題は無くなるかもしれません。

しかし、食べ物と水は、相変わらず必要なのです。 これらも魔法で処理すれば、構わないし、馬では無く頑丈な魔獣ならば、それでもかまわないのです。 ならば、その魔獣や魔法が、どのような現実問題を解決できるかは、最低限 描写をするのが望ましいのだと思います。


もし転移もので、チート知識を発揮できるとしたら、

三国志やローマ時代ならば、鐙の導入は 騎射を容易にし、武器も有利に使えます。

日本の戦国時代ならば、蹄鉄の導入、去勢の導入により馬の集団行動を可能とさせる事があります。

日本には本格的な騎兵がなかったといわれる理由は、牡馬の去勢が導入されていなかった点です。

去勢されない牡馬は、喧嘩をして集団行動が不能、雌馬が居れば追いかけてゆきます。

よって、集団的な騎兵を作るならば、去勢技術は必要と思います。

くわえて西洋馬の導入による馬体の改善(時間は必要)などが想定できます。


西欧や中東、北アジアは、馬に関しては先進地域ですから、専門的知識がないとチート能力を出すのは難しいかもしれません。


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