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音楽について(純正律と平均律):音楽理論 その1 純正律

最近 音楽を題材にする小説が出てきて、とても楽しく読んでいます。

それらに触発された事もありますが、より多くの作者や読者に、音楽について知ってもらいたいと思い、私なりに音楽の発生と現代音楽と古典音楽の違いについて説明したいと思います。 ネタや知識として読んで頂ければ幸いです。

キーワードは、数学とピアノ、ピタゴラスと平均律です。


1.古代の音楽:人と音楽の出会い

人が、言葉を発してコミュニュケーションを取れるようになった事と、音を利用した情報を伝えたり、言葉に調べを合わせて歌ったり、更に楽器を作り演奏する事は、文明の発達という点で、大きな進化だと思います。

 古代の遺跡からは、骨を加工して作った笛や、木や骨を利用した打楽器、弓を改造した弦楽器なども見つかり、音楽は文明の発生と共に人類と有ったのだと思います。 

音楽は、民族を問わず世界全般に分布しており 不思議と初期の音楽は 共通の理論に基づいており、歌う事(言葉を音楽にのせる事)は宗教と密接な繋がりを持っていました。歴史上でも、自前の書き言葉を持たなかった民族は少なくありませんが、音楽を持たない民族は稀で、それだけ人間にとっては自然な営みであったと考えられます。 

原始的な楽器は、人の声と打楽器が多いのですが、次に骨や植物を使った笛が登場し、弦楽器が出てくる事が多いようです、 弦楽器が登場し楽器の種類が増えると、音楽の理論が発展してきます。 こうして出てきた基本的な音楽の理論が、純正律と呼ばれるものです。 この純正律には、ピタゴラスが深くかかわっており、音楽と数学は深い関係があります。 


2.音楽の基本理論

地域や民族を問わず、歴史的な記録でみると古い音楽は似たような音楽理論(楽論)で構成されていたようです。 ここで取り上げるのは記録から理論が推定できる、ギリシャの音楽理論と、中国の音楽理論、そして中国の音楽理論を継承し 現代まで残している日本の雅楽の楽論などをもとに、私なりにまとめてお話します。

各分野の専門家の方からみると、突っ込みどころが多いかもしれませんが、知らない人に概要を理解して頂く為の内容と、ご寛恕をお願いします。

楽論に慣れない人は、数学(算数程度)が出てきますので、嫌わないで下さい。

音とは、空気の振動であり、振動する周波数が、音の高さ:音程、音階になります。

ですから、音楽の理論と、数学は切り離せないのです。


1)基本的な音の構成:倍音と音色

弦楽器は、弓のようなもので、弦を弾いて音が出たところから出来たと想像できます。

なぜ弓かと言えば、狩猟は食糧に必要で、弓の出現は様々な地域や民族で、初期段階から見られるからです。 ここでは弓を狩猟につかわず、音楽に使います。

弓や琴、ギターでも構いませんが、1本の弦(糸)が両端を固定された状態を想像下さい。 便宜上長さを10cmとします。 この10cmの弦を弾いて出た音を、とりあえず基本の音として、とりあえず「ド」と名付けます。

このままでは音が一つなので、弦の中央を指で押さえるか琴柱フレットを置いて、半分の長さ 5cmで、弾いて音を出します。 すると同じ音階の音=「ド」が聞こえると思います。但し、音の高さは、元の音より高い事が判ります。 この音の高さ違いを、1オクターブと呼びます。 また同じ音階の音でも、高さの違う音を倍音とか、n倍音(nは2以上の整数)と呼びます。 


倍音が出るようになったので、同じ弓を2つ用意して、一つの弦は10cm、もう一つは半分の5cmにして一緒に弾いてみると、同じ「ド」の音が出ますが、一つの時よりも音色が異なる事が判ると思います。この音の高さを「オクターブ」(1オクターブ)と読んでいます。更に、もう1つ弓を追加して5cmの半分2.5cmにして一緒に弾いてみると、更に音色が変化する事が判ります。(2オクターブ上の「ド」)

つまり、音色(音の種類の違い)は、倍音の混じり方で変化する事が判ります。

 

私たちは、同じ高さの「ド」の音でも、バイオリン、トランペット、クラリネット、そして人の出す音でも、音色により聞き分ける事が出来ます。 これは倍音の混じり方が違う事が脳が判るからです。 そこで、これを逆転して考え、トランペットの{ド}の音が、どのような倍音の混じり方で出来ているかを、電気的な装置スペクトラムアナライザで分析して、その音を電気的に再現すると トランペットに聞こえる音を作る事が出来ます。 同じように、バイオリンでも、人の歌声でも、電気的に分析して、電気的に再現する事が出来ます。 これが、シンセサイザ、電子楽器、そしてボーカロイドが行っている事です。


2)音階とは何か:ピタゴラスの音楽

音質と倍音が説明出来たので、音の高さの違い:音階について説明します。

始めに出てきたピタゴラスの楽論が、算数程度で判り易いので、これを基本に説明します。 題材にするのは、前にも出てきた弦楽器(弓)です。


10cmの弦を弾いた時の音を、半分にすると同じ音「ド」ですが、高い音が出る事が判りました。 そこで、他の音を出してみましょう。

古代の音楽で、とても大事にしたのは、音の響きです。 古代の人は、経験的に音程が異なっても、心地よい響きをする音がある事が判っていました。 そしてピタゴラスは、数学の理論を導入して、心地よい響きの音は整数倍の長さの関係で成り立つ事を理論づけて、音階(音の高さ)を定めました。 その比率は3:2(三対二)というのが基本的な数値です。 このような音階をピタゴラス音階:Pythagorean tuningと呼びます。


前の10cmの弓の「ド」を基本にしてみましょう。

10cmの2/3(三分の二)の長さは20/3cm(6.6666・・・cm)です。 この長さの弦の音は、音階でいう「ソ」になります。 音楽をやる人は、ドとソは、きれいな基本和音を作る事がご存じと思います。

「ソ」に対して、更に2/3の弦の長さをとってみると、20/3×2/3=40/9(4.4444..)cmとなり、音階でいえば「レ」の音になる事が判ります。 

音階を得るには、2/3だけでなく、1/3を加える方法もあります。

「ソ」20/3cmに対して、1/3の長さを加えます。 つまり1+1/3=4/3(四分の三)を掛けます。 40/9×4/3=5.9259…cmとなり、この弦を弾くと「ミ」の音が得られます。 先の「ソ」と合わせると、ドミソの基本和音になります。


こうした2:3や、1/3を加える操作で音を取ってゆく計算を続けると、10cmの「ド」と5cm「ド」の間に12種類の音階が得られます。 このような音階をピタゴラス音階と呼び、1オクターブを12の音に分ける音階を十二律音階と呼びます。 

日本の雅楽の世界では、1/3を加える、1/3を減じる(2/3を掛ける)調律方法を「三分損益の法」と呼びます。 このようにギリシャや西洋の音階も、中国や日本の音階も、この十二律を採用しており、基本的な音階の取り方は同じです。

ですから、音楽については、基本的には同じ理論が、採用されていると思っています。

参考までに、日本の雅楽の音階では、これらの音に壱越いちこつ断金たんぎん平調ひょうじょう下無しもむ勝絶しょうぜつ双調そうじょう鳧鐘(ふしょう)黄鐘(おうしき)鸞鏡(らんけい)盤渉(ばんしき)神仙(しんせん)上無(かみむ)と名付け、これらを十二音と読んでいます。 調律や音程は、これらの名前で行います。


さて数学の話しに戻ると、正確に言えば2/3を何回か掛け合わせても、1/2ピッタリにならないので一部に綺麗に響かない音の関係(2:3で無い音)が出てしまいます。

ですから、ピタゴラス音階の音楽では、12個の音全てを使わず、基音を中心として5-8個くらいの音を使ったシンプルな旋律の音楽が多いのです。

曲が使う音や和音によっては音が綺麗に響かない場合があるので、これを防ぐのに各音の高さの調整が必要になります。 この微調整をするのが調律(弦楽器ならば調弦の役割です。 全体的に音がきれいに響くように調整を行ったものが純正律:Just intonationと呼ばれる音階です。


ピタゴラス音階に基づく音楽は、古代の音楽の基本であり、和音が整数比(2:3など)で表せ、各音程の関係も整数比で表現できる事が特徴です。


3.純正律、ピタゴラス音階の問題点

この旋律における音階(調律法)では、基音(基本になる音)を決めて、そこから2:3の関係になる音を定めてゆきます。 この良い点は、音の響きが良い関係で調律しますので、きれいな和音や響きが得られます。 これはルネサンス以前の西洋音楽の特徴でもあります。

反面 欠点は、基音が変わると、全ての楽器を再調律する必要がある点です。

雅楽の楽曲も、平調、盤渉などの調があり、調がもつ基音に合わせて弦楽器(琵琶や箏)を調律します。演奏会で複数の曲を演奏し、その調が異なる場合には、曲の間で調律を行う必要があります。

この調律の問題は、西洋音楽で 楽曲が複雑になるにつれて問題になります。

西洋音楽の基礎になった古典派の代表 バッハ(Johann Sebastian Bach, 1685-1750)の楽曲を例にとってみましょう。 バッハの頃になると、曲の途中で転調(臨時記号を含む)が行われます。 曲の途中で転調する場合には、調律は出来ません。 ですから、はじめから転調する調まで考慮して、楽器を調律しておく必要があります。

同時に、作曲も 転調による再調律が不要なように、音を選ぶ事が行われました。

バッハの邦題『平均律クラヴィーア曲集』は、その代表的な楽曲集です。

クラヴィーアとは、ピアノが登場する以前の鍵盤楽器で、演奏者が曲に合わせて調律します。 「平均律」という邦題がありますが、これは誤解を招く名前で次の章に書く平均律とは異なります。原題はDas Wohltemperirte Clavierで、Wohltemperirteは正しく調律されたとの意味で、「転調しても再調律が不要な鍵盤楽器の楽曲集」が、本来の意味です。

長いので分割しました。 次は平均律の話です。

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