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新たなる旅路 そのきゅう

 敵の極小型艇がまた1艇、爆砕して地上へと堕ちて行く。

 我が法擊手達は、対高速艇戦術へのコツつかんだ様だ。その時、後方へ下がった防空隊からの援護射撃も始まった。遥か後方に待機したにも関わらず、非常に密度の高い支援法擊だ。防空隊の練度の高さがうかがえる。だが、その分『オーグル』にも至近弾が飛来し、艇をかすかに揺らす。

 防空隊の援護射撃により、敵の極小型艇がまた1艇吹き飛び堕ちて行く・・・。装甲よりも速度重視の極小型艇である以上、直撃弾を受けたら脆いってのは、敵味方共に変わらぬ様だ。


「敵の小型艇がこちらに回頭してくるにゃん!距離約7000にゃんっ!」


 正面を見ると、敵の小型艇がコチラに艇首砲を向け様として居る所だった。


「ふっ!この『オーグル』へチキンレースを仕掛け用ってのか?甘いな。フェルっ!主砲発射っ!法種は『聖光矢ホーリーレイ』!ちかましてやれっ!」


 『聖光矢ホーリーレイ』は新たに追加した主法弾である。中位神聖系攻撃魔法に位置し、発動に多大な魔力と制御機構を必要とするが、敵の重装甲艦に対応する為に仕込んだ逸品いっぴんだ。これを組み込むに当たり協力者を探した所、他に適任者は居らず、『覇王』と『大魔法使い』の両者に俺の世界の『すい~つ』の数々を披露する羽目になった。 


「ふぐっ!モグモグ・・・うぐっ!ゲホゲホッ!・・・ふぅ。りょ、了解っス!」


 ま~た食ってやがったか・・・まぁ、キチンと働くなら問題無い・・・と、今はして置こう。


 『聖光矢ホーリーレイ』は威力は高いが、超高性能魔導筒を搭載した『オーグル』でさえ、チャージに少し時間が掛かる。その時間は約5秒。その間にも敵との距離が縮まる。敵の小型艇は法擊準備を終え、法擊を開始した様だ。大小様々な『岩石弾ロックバレット』がコチラに放たれたのが見て取れる。


「行くっスよっ!」


 フェルの言葉と共に『聖光矢ホーリーレイ』が発動。『オーグル』の艇首部分に巨大な魔法陣が垂直展開される。


 『聖光矢ホーリーレイ』の魔法は、超高密度の光の粒子を放つ魔法で、所謂いわゆる荷電粒子砲と呼ばれる類のモノでる様だ。原理は良く判らんが、『大魔法使い』殿に因る講義 (っても、本人との意思疎通が図れない為、通訳を介してであったが)では、魔力を膨大な量の荷電粒子に変換し、2枚の魔法陣でソレを挟み込み、その力場で反射増幅させ貫通力を高め、比較的反射能力の弱い方の魔法陣 (主に発射側)を貫通させ、その直後に強力な磁場で収束させる事により発動させる魔法だそうだ。膨大な量の魔力を消費する為、連戦に次ぐ連戦で鍛えられた『オーグル』の主法擊手であるフェル以外では、制御も維持もままならない程の魔力喰いな魔法ではあるのだが・・・。

 この悪魔的威力の魔法が、何故に神聖系魔法に分類されるのかが非常に悩む所だが、『発射されるレーザー状の光が真っ白だから聖なるモノに違い無い』と言う見た目重視が理由であると教わった時には、魔法の分類なんていい加減なモノだよなぁ・・・と思ったものだ。


 『雷撃槍サンダースピア』を遥かに凌駕りょうがする超高温の荷電粒子砲の為、魔導筒内部で発動させると魔導筒自体を融解させ兼ねないと言った理由から、艇首砲の外部で魔法陣を展開させると言う方式を採用した。その分大型化が可能になり、より一層、夢の『波動砲』へと近付いた訳だが・・・まぁ、それは置いておくとしよう。艇首付近に魔法陣が展開される為、ビジュアル的にはイマイチなのが難点か?ソレ系が好きな人には堪らないだろうけども、正直に言えば俺の趣味ではない。外部から見たら迫力はあるらしいんだけどもね。

 『オーグル』の数倍にもなる巨大な魔法陣から魔法陣の直径に等しい光の柱が解き放たれ、数メルト前方で超強力な磁場で『オーグル』よりも少し小さい程度にまで圧縮、収束される。強力な磁場により肌が粟立ち、ちょいとクラっと来るが・・・これ、健康に悪影響とか出ないのかしらん?正直心配ではある。強すぎる磁場は健康を害すると聞いた事が有る様な無い様な・・・。ま、多用しなけりゃ良いだろうし、最悪、魔法で治療出来るだろ。


 この強力過ぎる光の柱が、敵の魔法弾諸共に小型艇の大部分を消滅させ遥か彼方まで地表面に沿って伸びて行く。うむ。アレだな、友軍が近くにいる状況で使うと、間違いなく巻き込むな。ってか、試作段階より威力が上がってね?あの腐れ『大魔法使い』が何か仕込みやがったかな?問い詰めた所で『すい~つのお礼』としか言わなさそうではあるが。アレも通常の人間の感性とはちと違うからなぁ・・・。

 小型艇の破片は、き切られた様な綺麗な断面から炎を吹き上げつつ森林部へ落下して行った。これ、火事になったら、俺たちが原因かね?・・・と、少々心配になった。が、今は戦闘中だ。気にしない事にしよう。

 その様子を目撃したもう1艇の小型艇は、反転しこちらから距離を取ろうとして居る。

 だが遅い!


「2番4番8番砲座!目標敵小型艇!土手っ腹に風穴を開けてやれっ!6番は対空任務を維持。敵を寄せ付けるなっ!」


 右舷側の対空砲座に敵小型艇への攻撃を命じる。その間、対空法擊が手薄になるが、6番のサーガッタスに一任する。仕留められる時に仕留めておかないと、後々に影響が出る事だろうしな。


 小口径ながらも圧倒的密度の高威力魔法弾に連打された敵小型艇の側面装甲が、見る間に歪み凹み風穴が開いて炎上して行く。攻撃開始から十数秒の後に、制御を失ったのか森林部へ降下して行った。


「良し、後は敵の極小型艇のみだな。各員、追撃態勢に移行!1艇足りとも逃すなよ!?」 


 俺の言葉と共に『オーグル』は敵の殲滅せんめつを行うべく、追撃戦に移行した。







 追撃を開始したのは良いのだが、こちらの戦力アピールが強すぎたのか、敵極小型艇はこちらの射程内に踏み込んで来なくなった。瞬間的な最大速度は出力的にも『オーグル』の方が遥かに上だが、こんな状況では使用も出来ず、あと少しの所で逃げられてしまう。特殊な機動な為、俺の体は痛みに悲鳴を上げ、胃袋からせり上がって来る液体が臨界点を突破しそうな感じだ。うぷっ!正直もう限界・・・。

 そればかりか無駄死にはしない!・・・とばかりに、後方に下がった防空隊に襲い掛かりつつあった。遠距離から弾幕を張って落とす事は可能だが、懐に潜り込まれたら為すすべは無い。たちまちの内に防空隊に損害が出始める。


「いかん!」

 

 俺の脳裏に浮かんだのは、先ほどのクラウスとか言う、防空隊の臨時隊長の涼やかな声だった。


「機関全速!防空隊の救援に向かう!1艇足りとも落とさせるな!」


 俺の思いとは裏腹に、高速で飛行する敵極小型艇を中々捕捉出来ない。こちらに向かって来る飛翔体を落とすのは難しくはないが、逃げる敵を落とすのは容易では無い。

 そうこうしてる間にも、防空隊の損害は目に見えて増えて行く。


「クッソ!対空砲座!友軍には当てるなよ!?」


 この様な乱戦では友軍に被害を与えかねない為、対空法擊も控えざるを得ない。スレイを飛び立たせれば事態は挽回出来るだろうが、高速戦闘中ではそれも侭ならない。自らの出し惜しみを後悔するも、後の祭りだ。

 後悔する俺を尻目に、防空隊は更に損害を増して行く。


 その時、防空隊の1艇が身をていして敵極小型艇の進路を塞いだ。当然の如く両者は激しく激突し、豪音と共に破片を周囲に撒き散らし、森林部へ仲良く墜ちて行った。

 あまりの事に暫し呆然としてると、ユーリスより報告があった。


「防空隊より入念ですわ。そちらに繋ぎますわ・・・」


 今の特攻と何か関係が?繋いでくれ、と言葉を発する前に防空隊より報告があった。


わたくしは第4防空隊第3中隊長エレモアと申します。クラウス中隊長が戦死した為、指揮を引き継ぎました。私達わたくしたち『空賊』の名に恥じない立派な最後でした。これより勇士をつのり、敵極小型艇への体当たり攻撃を敢行かんこう致します」


 ・・・は?勇士を募り体当たりを敢行する?


「ちょっ!そんな無茶苦茶なっ!」


 つい声を荒げてしまったが、致し方なかろうか?特攻だなんて無茶苦茶な話は無い!どこの世界の暴走した軍部だよ!?って話だ。


「現状での彼我ひがの戦力差を考慮した結果ですわ。無駄に墜とされ犬死するよりかは建設的です。後の指揮はお任せ致しますわ。私達は常に勇敢であった・・・と他の者にはお伝え下さいませ。それでは御機嫌よう・・・」


 その言葉の終了と共に、防空隊の内の4艇が敵極小型艇の進路を塞ぎ、その内の1艇が共に爆砕し、それと同時に通信も途絶えた。残る敵極小型艇は3艇。体当たりを警戒しつつ回避行動をとって居た。


「クソッタレがぁ~っ!!」


 艇長席の肘掛を思い切り打ち据えるが、それをした所でうしわれた命は戻らない。自らの無力感に打ちひしがれる。

 その時、タマちゃんから報告があった。


「距離約6000!5時の方角より『飛翔艇ひしょうてい』とおぼしき反応があるにゃん!気づくのが遅れて申し訳ないにゃん!」


 援軍か?だとしたら助かる。極小型艇同士なら何とか出来るかも知れん。


「増援か?数は?」


 俺は素早く確認をする。


「それが・・・1艇・・・みたいだにゃん・・・」


 しかし、居ないよりかはマシか。


「ユーリス!その『飛翔艇』と連絡はつくか!?」


 どんな奴か確認はして置きたい。が、ユーリスからの回答はそれを不可能とするものだった。


「対応する魔法陣が無いから無理ですわ。あの『飛翔艇』は第一世代みたいですから『オーグル』には通信手段がありませんわ」


 確かに遠目ながら良く見ると、卵型に翼の生えた旧式艇で在る事が、俺の目にも確認出来た。

 残る極小型艇の残数は3。第一世代でも『飛翔士ひしょうし』の腕と『オーグル』の支援があれば何とか成るかも知れん。

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