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新たなる旅路 そのに

 今現在『要塞都市ガレアス』は、復興作業の真っ最中である。その為、少々と言うか、かなり騒がしい。

 街や要塞の各所で『ガコンガコン!』だとか『ドリュリュリュリュッ!』等といった音が聞こえて来る。小型の浮空艇からワイヤーが伸ばされ、建材を吊り下げている光景が各所で見受けられる。

 浮空都市の建物は、岩から削りだした石材を積み上げ、木製か金属製の天井を載せただけの簡素なモノである。地震や嵐とは無縁な空中都市ならではであるのだが・・・その為、帝国の法撃によりアッサリ瓦解がかいした訳である。

 この辺りのもろさは『覇王』も辟易へきえきして居た様で、木造建築物の方が遥かに強度は高い。その為、俺の進言も有り建物の一つ一つが強固な要塞と成る様に基本は石材だが鉄骨と鉄筋を組み込み、コンクリートを使用した強固な構造で形作られる事になった。今回使用されるセメントは、この世界でも安価で大量に産出される石灰岩を焼成して造れるモノになってしまったが、石を積み上げただけのモノに比べれば強度は過分と言えるだろう。

 そして、建物は基礎からやり直す必要が有る為、かなり綿密な都市計画が練られその企画に駆り出される事になった・・・歴史は好きだが、都市計画に参画さんかくする事になろうとは・・・世の中何が必要になるかは分からないモノではある。


 騒音にちた都市部から離れ、独り手荷物をげて王宮の在る山裾に向かって居る訳だが・・・都市部より数キラム離れて居るにも関わらず、相変わらず騒がしい。

 向かう先は元王族専用の格納倉庫であり、現在はミレーヌの工房『深遠なる密林』の所在地だ。巨大な格納扉の横に据えられた人用の比較的小さな扉へと向かう。扉のそばには機密防衛用の衛兵詰所がもうけられ、門番は常に10人体勢で配備されて居る徹底ぶりだ。

 扉をくぐると、もう2つの小部屋と扉がある、此処にも衛兵が5人ずつ待機してり、もしもの事態に備えて在る。中に入ると外の騒がしさは消え、静寂が訪れたかの用に感じる。だが、工房内部は人であふれ、喧騒けんそう振りは外に引けを取らない。『ガンガン』や『コンコン』と言った音と共に、何かを削る『チュイーーーン』だとか『チュミミーーン』だとかいう音も聞こえて来る。この甲高い音は俺が技術提供した『エアードリル』を魔導具化したモノだ。この世界は電気文明は未発達すぎて電力工具は使用出来ない。しかし、ソレに変わる動力システム『シュトゥルム機関』がソレを可能にした。通常の『エアードリル』は強力なエアコンプレッサーが必要だが、この魔導具は『ストーム』の魔導筒を組み込んである。その為、単体で動かす事が可能。持ち運びも取り扱いも容易であり、尚且なおかつ魔導筒の交換で出力も自由自在だ。

 この理論を応用した『自動車』の様なモノも研究開発中だ。通常の内燃機関は燃料を瞬間的に燃やす事で膨大な量のガスを発生させピストンを動かすが、この『空気自動車』とも言うべきモノは、『ストーム』の魔法が生み出す膨大な量の風力を動力源とする。『ストーム』で勢車はずみぐるまを回し歯車ギアを組み合わせ回転力を増大させ、車輪を回すと言った手法を採って居る。既に実験は成功して居り後は実用に向けて開発するのみだ。ただし、この方法だと操縦者と魔法発動者の2人が運転者として乗り込む必要がある為、個人向けではなく『要塞都市ガレアス』を巡回する『巡回バス』的な乗り物にする予定だ。イザと言う時には移動型対空砲としても機能出来る様に重装甲にする予定。ちなみに、『空賊』独自の技術にする為、皇国にはこれらの技術は伝えて居ない。

 ここに在籍してる正式な『魔導士』は約200名、それを支える作業員が約1000名位居る。作業員の大半は、先の戦いで親を亡くした孤児がメインである。孤児院への収容も考えたが、何もせずにやしなうのは筋が違うし、此処で手に職をつけさせれば将来は魔導士へ進む事も可能なので今回の措置そち相成あいなった。え?児童労働は虐待じゃないかって?基本希望者のみで、賃金は大人と同じ金額支払うし、労働内容は魔導具での細かい作業の為、肉体的負担は殆ど無い。地獄を見て居るのは『魔導士』くらいのモノだな。


 工房の広さは浮空島中心部の山裾やますそ全体に広がり、幾つかの太い柱で支えられて居る。高さは100メルトは在るだろうか?各所に足場が組まれ『浮空艇ふくうてい』や『空翔艇くうしょうてい』の修理や建造が行われて居る。その中に一際目立つ『オーグル』の姿も在った。その直ぐ傍にお目当ての人物が居た。


「よぉ、ミレーヌ!調子はどうだぃ?」


 結構大きな声を掛けた筈だが、気づいた様子は無い。仕方無いので傍まで近寄る。が、相変わらず認識をしてくれない。

 ふむ、どうしたモノか・・・。

 ふと思いついた悪戯いたずらを実行に移す。

 両手の人差し指で、ミレーヌの両脇腹をチョコンとつついてみた。


「うっひょわおぇ~っ!!」


 矢鱈やたらと面白い悲鳴で飛び上がってくれた。周囲の魔導士や作業員等は、一体全体何事か!?・・・と、視線を向けて来て居る。


「よぉミレーヌ、調子はどうだぃ?」


 ミレーヌは何事かと振り返りつつ、ジト目でにらんで来た。


「こんなアフォな真似をするのはもしや・・・と、思ったらりジンちゃんか・・・何時いつまで経っても子供なんだから・・・」


 

 子供とは失礼な!・・・否定はしないけどもな! 


「一応は声をかけたんだが・・・無反応だったのでツイ・・・な」

「正面に回れば良かったじゃないか。んで、何しに着たの?」


 ほおを膨らませた『草原の小人』は掛け値なしで可愛い。獣人をモフるのとはまた違う、別種な良さがソコには在る。


「まぁ、要件はアレだ。差し入れと例の機構の相談にだな・・・」

「例のって・・・新しい『飛翔艇ひしょうてい』の事?」

「そうそうソレだ。ソレとミレーヌの好きな玉子綴たまごとじもあるぜ」


 ミレーヌは卵料理全般がお気に入りの様だ。この世界、食用鳥の養殖は一応は行われてるモノの元の世界ほど大規模ではなく、卵はかなりの高級品である烏骨鶏うこっけいの卵並の値段がしたりする。だが、滋味じみ栄養にみ、病人向けの万能栄養食として食されて居る。その為、趣味で食べられる様なモノではない。だが、俺達の今の存在なら問題なく口にする事が出来る。


「え?本当っ!ちょっと待っててね、コッチの案件は直ぐ片付けるからねっ!」


 ふふふふ・・・ミレーヌの胃袋は既にガッチリ掴んである。本当に『草原の小人』は食欲に忠実だぜっ!


 暫く待って居ると、仕事に一段落を付けたのかミレーヌが走り寄って来た。そのまま2人で工房内の小屋へと向かう。この工房は余りにも巨大な空間の為、『魔導士』用の宿舎も完備されて居る。って言うか、機密情報漏洩防止の為だけに缶詰状態だ。ミレーヌは此処の責任者の為、個室というか小屋が与えられて居る。


 小屋の中は完全防音になって居る。外の喧騒が嘘の様に静まり返り、静寂が訪れる。


「さて、食事の前に必要な要件を済ませてしまうか?」


 ミレーヌは明らかに落胆した表情だ。だが、ソコは技術者の端くれ、自らの感情を抑えこむ。


「前に聞いた話だと、現行の『飛翔艇』は総て仕様変更なんだよね?」

「あぁ、今の火力じゃどうにも成らない状況だ。スッパリと武装は切り替える」

「例の格闘戦仕様に?空対空戦闘なんて有り得るのかな?」

「帝国には見られたし、解析もされるだろう。ならば、先手を講じて置くのは必要不可欠だ」

「ふむ・・・だとすると、新型艇の開発が必要なんだね?」

「設計図と言うか青写真は既に此処にある」


 俺はそう言うと、手荷物から幾つかの図面をテーブルに広げた。


「ふむふむ、成る程・・・でも、コレって大丈夫なの?」

「初期型でかなりのデータは採れてるだろ?『ばくだん』の実戦データも採れたしな」

「う~~~ん・・・って事は対艇専用の部隊と制空戦専用の部隊とに分けるんだね?」

流石さすがはミレーヌ、理解が早くて助かるぜ。現行の『飛翔艇』は総て練習機かガレアス直掩機とする。飛翔艇候補生も数だけは確保が出来たしな。数艇の練習艇じゃ間に合わないし」

「制空戦闘艇の武装は『オーグル』の対空砲座と同じ様な『小口径連装式』で良いんだね?」

「あぁ、恐らくは敵も『飛翔艇』モドキを戦線に投入してくる筈だ。その時に慌てたんじゃ、技術で先行して居る旨みは無くなるからな。常に先へ先へと歩まないと」

「・・・・・・ふぅ・・・現行の修理や『空翔艇』の生産で手一杯だけど、なんとか遣り繰りしてみるよ」

「ありがとう。さて、面倒な話はこれくらいにして、飯にするか」

「そだね。さっきから良い匂いがして来てて、我慢はもう限界だよぉ・・・」

「ははは、スマンスマン」

 

 俺は料理の入ったバスケットから幾つかの料理を片付けたテーブルの上に広げた。

 ミレーヌと2人で美味しい料理に舌鼓を打ちつつ、取ち留めの無い話をする。


「しっかし、帝国の新型プロペラ艇・・・まさか人力だったとはなぁ・・・色んな意味で驚きの技術だよな」

「そうだよね・・・真逆まさかアレだけの大きさのモノを人力で動かして居たとはねぇ・・・」


 そうなのだ。例の帝国の新型艇の動力は、足漕ぎ自転車の様な機器を用いた『人力』だったのである。使用人種は無尽蔵むじんぞうの体力を誇る『オーガ族』や身体能力に定評のある『獣人族』が主に使われてた様だ。これらの事は、捕虜となった元帝国兵や、修理中の帝国艇から明らかになった驚愕の事実である。まぁ、大昔の『ガレー船』なるモノは人力で漕いで居た訳だから、理論上は不可能では無いにせよかなり無茶をしてた様だな。


「そういや、『オーグル』の修理状況はどうなんだ?」

「ん~外装の取替、主砲の調整、対空砲座の修理・・・と、大忙しだよ。誰かさんのお陰でね!」

「う・・・うぬぅ。しかし、アレは一種の事故だぞ?真逆跳ね返されるとは・・・」

「判ってますよ~っだ!」

 

 イーっと歯を剥きだしにして威嚇いかくして来る様も非常に愛らしい・・・あぁ、何時から俺は、こんなダメ人間になってしまったのだろうか?・・・え?最初からだって?

 こうして、限られた短い時間だがミレーヌと2人きりの時間を過ごすのであった。

いやぁ~昨日は風邪で寝込んでました。季節の変わり目は恐ろしいぜっ!

しかし、更新しないわけにもイカンので何とかUP。


さて、もう少し寝るとするか・・・誤字脱字の再編集は夜にでも・・・。

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