新たなる旅路 そのいち
敗北に近い勝利から一週間が経過した。
1~3日目は、戦闘終了直後のゴタゴタで忙殺され、まともに機能して居ない状況が続いた。この際に帝国に攻められたら、この『浮空島』は正に全滅して居た事だろう。
3日目で、『アナピヤ』での元帝国兵達の身元の確認と奴隷解放の手続きが完了した。老若男女の残人数は1万5千人余り。門を吹き飛ばし一点突破を図った為、帝国の正確な兵数は不明だったが残兵力だけでソレである・・・。『空賊』総兵数の凡そ3~4倍は居たんじゃないかと、今更ながら恐怖した。古来より攻城戦は、守備手の3倍から5倍が必要と言われ、安心して攻略できる人数が10倍だと言う・・・。真逆、此方よりも兵数が多かったとわ・・・。帝国兵は各所に散らばり、戦力が分散して居たとは言え、『空賊』達の人外な戦闘能力が無ければ、壊滅どころか文字通り全滅して居たのは間違いない。正直運が良かったとしか言えないな。その元帝国兵だが、約1万人が『タンピヤ』への移住を希望、5千人が『アナピヤ』へ留まった。
クレインさんは4日目で目を覚ますも、力の喪失が起こって居た。今までは『トロール族』に数倍する能力を有して居たが、今は『トロール族』と同等の戦闘能力である。それでも十二分に人外な存在だが・・・。
5日目に、『空賊』達の後方支援部隊、所謂家族達が到着、その数は5万人。あの夜の戦闘要員が1万人強、1人に3人の家族としても3万人であるからして、それほど多い数ではないと思う。聞く所に因ると、移住者以外にも各拠点に居残りした人も大勢居るらしい。どんだけ構成人員が居たんだよ?っつ~話だな。だが、空を一面に埋め尽くした大艇団と言うのは壮観だった・・・。帝国の逆襲か!?・・・と、非常呼集が掛けられたのはダメダメであったが。その際に、非常用連絡網の構築と監視部隊の設立が要請され、その日の内に受理。現在に至る。
同5日目、この『浮空島』の名称が『浮空都市アナピヤ』から『要塞都市ガレアス』に名称変更された。行く行くは『シュトゥルム機関』や『トルネー機関』を利用し、移動要塞として機能させる腹積もりの様だ。・・・え?俺が反対しなかったのかって?当然俺はそんな面白そうなことに加担しない訳が無いよなぁ。『浮空島』そのものを戦闘艇にする・・・正に浮沈戦艦の出来上がりだ。そんな面白そうな事は是非にやるべきだ!
6日目に、『タンピヤ』からの補充物資が到着。食料や医薬品と言った必需品から、新造された『飛翔艇』X40と『空翔艇』や『浮空艇』用等の補修用物資が到着。これに因り、市街全域と要塞の復旧作業が着手された。この補充の際、『神聖皇帝 スレイジア・ガウ・ロウ・タンピヤ』から『覇王 ガレアス・アーモナルド』へ友好の証として250サンチ要塞砲2門が譲渡された。材質はミスリル製で、コレだけでも並のバトルシップ級なら簡単に沈める事の出来る火力を有して居る。『ま、武器は貸してやるからしっかりとタンピヤ防衛に協力しろよ?』的なモノだろうが、今は正直に言うととても有難い事だろう。最終的には、『要塞都市ガレアス』の主動力になっちまいそうな気もするが。
そして7日目である今日、ミレーヌの為の魔導工房が完成、『オーグル』の修理に着手したってトコだ。『オーグル』に関しては、ミレーヌからこっ酷く叱られた・・・御機嫌取りに、秘蔵の料理の数々を振る舞う羽目になった。あ、そうそう、俺の異世界料理は、この『要塞都市ガレアス』の名物料理となる様だ。その功績に因り『覇王』から、この都市に居る限りは旨い料理がロハで食べられる『永久フリーパス』を授与して貰った。あの地獄の料理人の日々に見合う対価か?・・・と、聞かれたら、正直悩む所ではあるが。
漸く体裁が整えられた。後は新兵器開発が主な仕事になりそうだ。あの時に現れた『重装甲艇』には今までの『岩石弾』に因る、高速戦闘は通用しなさそうだしな。アイツを大量生産されたら此方の攻撃部隊は確実に詰む。ま、この辺りに関しては複数案がある・・・実現出来るかどうかは別として。
差し当たっての戦力は、『空賊』達の無数にある輸送艇を戦闘艇にでっち上げて対応するしか無いだろうな。武装と『シュトゥルム機関』を載っけて各所を補強したら、それなりの戦力になるだろうし。
そして、故シュルツ殿の子飼いの部隊『狂騒戦闘団』だったかな?彼等は皇国の『飛翔艇部隊』で預かる事になった。一人一人の戦闘能力が皇国の最高クラスの兵士に匹敵し、その白兵戦能力もさる事ながら彼等の戦闘意欲は『空賊』内部でも群を抜いて居る。暇を持て余して居た彼等を試しに『飛翔艇』に載せてみたところ、スンゴイ適性が在り、初めてだと言うのに熟練兵に匹敵する操作をしてのけた。流石に『グングニール』には勝てなかったが。それは仕方ないとしても、『狂騒戦闘団』の残兵力、実に554人もの『飛翔艇搭乗員候補生』が確保出来た訳だ。忠誠心が少々アレだが彼らが『覇王』を裏切る訳は無いだろうし、戦闘ダイスキ~な人間が報奨に釣られて寝返るって心配もしなくて良いだろう。帝国はシュルツ殿の仇でも在る訳だし。正直、『タンピヤ』での人員確保は限界を迎えて居たので、実に嬉しい誤算である。
こうして新体制に移行しつつも旧体制がゴッチャになったまま、『要塞都市ガレアス』の幕開けは開始された。
導入部なので、軽めでUP。
いや~20時間近く爆睡したのは久しぶりだわぁ~。




