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分水嶺 そのなな

 一度『休憩室』に行き、保存食と削り落として置いた炒飯もどきのオコゲを入れた容器を持って『指揮所』へ戻る。そして、戻る途中で保存食を噛み砕いて飲み込む・・・。保存食はクッキータイプで、食感は某バランス栄養食に似てるが只管ひたすら不味まずくてにがい。栄養重視なのだろうが、せめて味の改良を行いたい所だ。皆に不評なのもうなずける味だ。

 指揮所に戻ると、そこに居た大柄な人に声をかけた。


「クリスさん、指揮権を戻しましょう。『休憩室』にクリスさんの分が置いて在るので食べて下さい」

「それは有難いですね。それでは、艇長殿へ指揮権の返還を行います」

「はい、確かに受け取りました。それでは大休止へどうぞ行ってらっしゃいませ」

「はい、有難ありがと御座居ございます」


 この辺りの遣り取りは、茶番っちゃぁ茶番だが、一応は組織である以上は最低限のお約束事は存在する。この辺りの決め事をキチンとして置かないと、物事はうまく回らなかったりするから困りモノだ。


「あら、艇長さん、あたち達を差ち置いて美味ちいモノでも食べたのかちら?そんな身体から美味ちそうな香りを漂わせて良い御身分なのね。あたち達がこんな不味いものを食べてるって言う『お?ポーラ、ほらよっと』」


 俺はポーラの言葉をさえぎりオコゲの入った容器を投げ渡した。


「あったったった・・・なんなのよこれは?」


 お手玉しつつも何とか受け取るとそう聞いて来た。


「開けてみな」


 容器は木製で、ネジ式の木の蓋で閉じられて居る。


「あら・・・」


 中から漂う香りと中身を見るなり嬉しそうな表情に変わった。


「ま、料理の全部とはいかないけどもな。それに保存食は食べただろうしあんまり入らないだろ?おやつ代わりにそれをやるよ」

「ふ、ふん!こんなので誤魔化ごまかされると思ってるのかちら?」 


 そう言いつつも、眼はオコゲに釘付けだ。口の端からよだれが垂れそうになっても居る。


「あ、ポーラ・・・口の端から汁が・・・」

「えっ!?」


 自分でも気づいたらしく『ジュルリ』と涎をすすり上げた。


「ま、まぁ良いのね。これでゆるちてあげるのね。こんなモノで許すなんて、あたちは優ちいのね。感謝かんちゃちて欲ちいのね」


 そう言いつつも、まだまだパリパリしてるオコゲを口に運び始めた。


 ふぅ~、何とか押さえ込めたか・・・。ポーラに対しては美味しいモノを与えて置くに限る。ポーラの連続射撃を食らうと精神が死にかねん。


 さて、そろそろ頃合いか。


「良し!小休止は終了だ!『機関室』!機関発動!高度は任せるが少し低めでな」


 俺は伝声管に向かいそう叫んだ。


「『空賊』達に発念!『オーグル』はこれより活動を開始する。戦況はどうなって居るか?」

「了解ですわ」


 返答が有るまでしばし待つ。


「『空賊』から入念ですわ、『我らは地下も含めた市街地の全域を制圧した、明日の朝より要塞部分への突入をする。『ホークウィンド』の助力に感謝する!』・・・以上ですわ」


 ありゃ?終わっちまったか。ま、楽が出来たのなら問題無いわな。やっぱり、スレイに頼んで正解だったな、お陰で楽が出来た。還って来たら何か美味しいモノでねぎらってやるとしようかね。


「『オーグル』各員につうず!市街地での戦闘は終わったが、まだまだ気を緩めるわけにはイカンだろう。って、市街地の上空警戒を行う。不審なモノがらば報告せよ!以上だ」


 指揮所や伝声管からは『まだやんのかよ・・・』だとか『えぇ~っ!』等と聴こえて来るが、ここで放置する訳にもイカンだろう。


「各砲手!敵の姿を見逃すなよ?機関室!微速前進だ、ゆっくりと市街地上空を旋回する」


 ま、やれる事はやっとかないとな。


 そのまま暫く上空を旋回して居ると、思い出したかの様に魔法攻撃を受けた。『空賊』には『オーグル』の存在は行き渡って居る以上、間違いなく帝国からの攻撃だ。攻撃を受ける都度つど、その位置を確認、攻撃し『空賊』へ通達をして行く。暫く後に激しい戦闘音が聞こえ、静寂がまた戻る。それを何度か繰り返し日も落ちたかけた頃、小休止を摂った広場に戻る。


「各員に通達する、今日はご苦労さんだった。周辺警戒は『空賊』達がするそうなので、しっかり休息を摂る様に!以上だ」


 その言葉と共に、艇内の各所から歓声が巻き起こる。この広場は大部隊が駐留するだけの広さが在り『空賊』達も休息を摂る為に集結して居る。ま、本音はイザという時に『オーグル』の支援射撃を受けられるから・・・だろうがな。


「あ~そうだ、伝え忘れるトコだった。『空賊』達が外で炊き出しをしてるそうだ。彼らに抵抗感の無い奴は自由に食事をしてくれ。もっとも、帝国人が紛れ込んでる可能性があるから機関室要員には申し訳ないが艇内待機な」


 炊き出しをしてる・・・の辺りで何故かブーイングが聴こえて着た。『忘れてるんじゃねぇぞ、このボケがっ!』等とも聴こえてきたが、恐らくはラクールのアホだろう。今晩にでも皆のオヤツに、奴の苦手な物でも仕込んで置くとしよう。食をつかさどるモノを怒らすとどうなるか・・・身をて知るが良い!


 ま、機関室要員には申し訳ないが、彼らが居なくなるとこの艇は動かせなく成る。可哀想かわいそうだが致し方なし。


「艇長さん!スレイミーさんから入念ですわ。『帰還するのでハッチを開けて欲しいでござる』以上ですわ」


 お?スレイか。彼女には今日も助けられたな。


「了解!・・・と伝えてくれ。シャーゲル!クルマール!申し訳ないが『飛翔艇』用ハッチを開いてくれ。スレイの御帰還ごきかんだ」


 暫し時間が空き、諦めた様な声音こわねで『了解』との返答があった。ま、あの二人には、俺の秘蔵の酒でも振る舞ってあげるとするかねぇ。

 

やべ、更新期間が開いちまった。

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