分水嶺 そのさん
最大の見せ場を『大魔法使い』に奪われはしたモノの、まだまだ『オーグル』の活躍の場は残って居る!
そう自分を奮い立たせ、門の跡地直上を通り過ぎる。そのついでに大魔法の行使された爪痕を見てみた。魔法陣で完全に防がれたらしく門の土台と基礎には損傷は無く、構造材のみが灼け融けた様な断面を晒して居た。
「う~わ~・・・こんな威力と精度が魔法で出せるんスね・・・」
フェルの驚嘆する声に激しく同意だ。何と言う隠し玉、引き篭もってさえ居なければ名を馳せるだけの実力は所持してるだろうに・・・実にモッタイナイ話である。
ここは既に門の内側、敵地である。その為か、個人用魔導筒からと思われる魔法が散発的に飛んで着て居る。この程度なら無効化出来るからどうでも良いが。
暫し上空で待機して居ると、再編が終わったのか『空賊』達も門の内側へと侵入して行く。どうやらメインの部隊は、重装甲に身を包んだクレインさんの第三陣の様だ。市街地戦で重装甲か・・・うむぅ、お手並みは意見として置こう。
第三陣の先頭には、翠に煌めく全身鎧に身を包み、巨大なモールを両手で構えた偉丈夫の姿と、軽装ながらも巨大な剣を携えた小人の二人が居る。
「あの二人が突撃要員か・・・敵に同情しちゃうな」
「ほんとっスねぇ・・・」
フェルの意見も同様の様だ。
「さっきは見せ場を奪われたが、今度は間違い無く活躍するぞ!総員、抜かるなよっ!」
さて、火力支援の用意と行きますかぁ!
「3番4番並びに7番8番そして10番砲塔!地上掃射準備!間違って『空賊』達に打ち込むなよ?」
「3番砲手ハインツ、地上掃射、了解致しました」
「4番砲手クルツ・・・承知致した・・・」
「こぉ~ちらぁ~7番~砲ぅ台ぃ~ラクールぅ~・シャぁ~インブレスぅ~っ!了解でっすぅ~っ!」
「8番シャゲル。地上掃射任務、了解で在ります!」
「10番クーラル、了解です」
『オーグル』の対空砲は1~10番迄有り、その全てに専用の砲手が載って居る。1番砲手は『エルフ族』シャーゲル・アルフェィド 45歳 ♂ 真面目で無口だが、射撃のセンスが高く魔力制御も申し分ない。フェルーナンよりも魔力適性は高いが、フェルは前の艇からの馴染みと言う事もあり、シャーゲルには申し訳ないが主砲操作者には就いて居ない。
2番砲手は『草原の小人』のクルマール・シャインバス 31歳 ♂ 常に沈着冷静で状況判断に優れて居る為、『スレイヤード』から引き抜いた逸材だ。彼が欠けた為に制空戦では大打撃を受けた可能性もある。いや、正直申し訳ない事をしたかも知れん。
3番は『エルフ族』のハインツ・シュルーヘッド 24歳 ♂ 非常に元気の良いエルフでかなりの脳筋なのだが、射撃のセンスがあり、魔力量も高いので採用した。暴走しない様にしないといけないが、『オーグル』の砲塔には『機関室』で制御可能な安全装置を組み込んで在るから一応は安心出来る。
4番は『エルフ族』のクルツ・クリーバンク 27歳 ♂ 先の戦いで戦死した『オーガ族』のジョン・クリーバンクの同郷人で幼馴染らしい。ジョンの死を受け戦いに参加する為に参加、魔力適性が非常に高く長時間の射撃を可能として居る。
5番は『草原の小人』のドリス・クリーバンク 30歳 ♀ クルツと同様にジョンの同郷人。志望動機はクルツと同様で、クリーバンクの郷では、全種族が家族付き合いをして居たとか何とか。その家族・・・と言うか、仲の良かった弟が殺されたと言う事で参陣した。だが、ドリスとジョンを姉弟と見るのはちょいと身長差が・・・とは思ったが、怖いので何も言えなかった。
6番は『草原の小人』のサーガッタス・ウルフゲイン 35歳 ♂ 『草原の小人』らしい活発とした男の子 (?)であり、明朗快活なイタズラ好き。そして、ターニャに匹敵する程のトラブルメーカーでもある。だが、任務には忠実で能力も高い為、黙認をせざるを得ない。
7番は獣人族の一種族である『虎人』のラクール・シャインブレス 26歳 ♂ 獣人族の中でも希少種である『虎人』でかなりの実力者。その反面、かなりのお調子者で、言動が原因で色んな艇をたらい回しにされてたのを拾った・・・と言う経緯がある。だが、そんな経緯があろうとも彼の言動は変わらない。お調子者同士の為か、フェルーナンと仲が良いみたいだ。彼の能力は皇国全体で見ればTOPクラスだが、体毛はかなりゴリゴリとして居て硬い為、モフり要員としての才能は無い。
8番は獣人族の一種族である『犬人』のエルニ-・ブルーミー 22歳 ♂ 獣人国家である『ブルーミー共和国』出身で、魔法の才能はズバ抜けて居る。その反面、なぜか体術系が苦手で近接戦闘を苦手として居る。見た目が長毛種の愛玩犬的な顔立ちなので、その辺りが原因かも知れない。彼の体毛と皮膚は非常に柔らかく、『オーグル』随一のモフり要員である。・・・いや、その為だけに雇ったって訳じゃ無いからねっ!
9番は『大地の小人』の トルフィー・アームアーツ 67歳 ♂ 『大地の小人』には珍しく、高所を恐れない異端者である。長時間の戦闘が可能で、主な任務は後部上空警戒として居る。特殊な魔具を制作するのが趣味で、俺と色々な話の合うオッチャンである。
10番は『エルフ族』のクーラル・ホムテップ 52歳 ♀ サーシャさんの古い戦友で、故ザードにも面識があった。今回はサーシャさんの推薦でこの艇に載る事となった。普段は真面目で任務に忠実だが、サーシャさんからは酒だけは飲ますな!・・・と、厳命されて居る。
上空警戒要員に小人族が多いのは、彼らは方向感覚に優れ長時間の仰向けでの配置に耐えられるからであり、『エルフ族』は森の緑を見ないと落ち着かない為である。この辺りって、難しいよね。
砲手に命じた後、『空賊』を上空から眺めてみると、戦闘が開始された様だ。建物が邪魔で所々は良くは見えないが、概ね『空賊』が押して居る様だ。
クレインさんは自らに飛んでくる魔法を無効化し、実弾系は鎧の強度と装甲の角度を利用し跳ね返しながら戦って居る。その手に握った巨大なモールの一振りで敵兵が粉微塵の肉片となり、嘗ての仲間に降り注いで居る。シュルツ殿の避ける戦いとは違った、圧倒的な強さだ。
先頭の二人は圧倒的な強さがあるものの、やはり配下の者達の強さはバラバラである。その為、局所的に不利な状況に追い込まれて居たりもする。
「4時の方向、距離200、敵数200!友軍が追い込まれてるにゃんっ!」
「良し!3番、7番、効力射を開始!友軍を援護しろ!」
「了解!」
「おぉ~ぅっ!ま~かせてぇっっ!」
ミスリル製6連装10サンチ短砲身限定旋回式砲塔は1秒間に2斉射が可能で、秒間12発もの高速射撃を可能として居る。並の術者であれば瞬く間に魔力が枯渇してしまうが、『オーグル』の砲手達はズバ抜けた才能を持つ者で構成されて居る。
法擊開始から僅か30秒程であらかた掃討し終えた様だ。
「敵殲滅確認」
「やっふぅ~~~っっ!敵全滅っ、俺貧血っ!ヤハッ!」
いや、ラクールは全力を出し過ぎだろ?
「6時の方向、距離50,敵数120。3時の方向、距離500、敵数450。友軍が追い込まれてるにゃん」
まぁ、重装甲だしなぁ。しかし、追い込まれてるのか重装甲で攻撃を弾きつつ着実に進んでるだけなのか、判別が難しい所だよなぁ。まぁいっか、適当に蹴散らして置くとしよう。
「2番、4番、6番、8番、10番、各自の判断で攻撃開始!」
「了解!」
「・・・了解した」
「ボクに掛かれば御茶の子さいさいさっ!」
「私に任せてくれるとは嬉しいワン」
「了解です」
しかし、6時の方向ってなんだろ?しかも、ほぼ真下じゃん?先頭の二人は何処に居るんだ?
「タマ、クレインさんとシュルツ殿は?」
「ちょっと待ってにゃん・・・恐らくは11時の方向、距離500に強大な2つの反応があるにゃん」
わぉ!かなり先行してるのか・・・強いってのは考えものだなぁ・・・。それで何とか成るんだから恐ろしい話だが。配下を置き去りにして先行・・・と、言うか、二人共お互いを意識し過ぎて、引っ込みがつかなくなってそうだな・・・。負けず嫌いそうだもんなぁ、二人共に。
「マズイにゃん・・・先頭集団が孤立し始めたにゃん」
何と言う力押し・・・。このままじゃ各個撃破されそうだな。
「各砲手!敵の殲滅状況は?」
「クルマールです。もう少し猶予を頂きたい」
「・・・4番、もう少し掛かる・・・」
「6番だよっ!あ~もうっ!隠れたら当たらないじゃないかっ!出て来いよっ卑怯者めっ!」
いや、コッチの方が卑怯者だと思うぞ。当たらない距離から一方的に蹂躙してる訳だし。
「エルニーだワン。もう少しかかると思うワン」
「10番、敵の殲滅完了。指示を待ちます」
10番の目標は少なかったし、背後・・・と言うかほぼ真上から襲う事になったから当然か?後方砲塔は現状じゃあまり役には立たんな。
「9番、10番は現状維持。その他の砲塔は各自の判断で法撃続行。魔力が枯渇する前に法撃中止」
戦況は有利な位だが・・・先頭の集団を援護するべきか、此処に留まり支援を行うか・・・悩む所だ。
更新していないのにユニーク数が伸び、お気に入り登録者が増えて居る・・・何があったのだろうか?
今日は時間に少し余裕が出来たのでUPします。
一週間に一度くらいの更新の予定が、少しずつ延びつつあるなぁ・・・何とかしないと。




