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章間話 飛翔艇突撃隊長の目線

 『鳥人とりひと』の眼にはこの距離は関係なく『オーグル』の働きぶりを捉えて居た。


「うぬぅ。ヒョーエ艇長殿もやるのであるな。しかし、あの速度は一体全体、何であろうか?拙者せっしゃに内緒であの様なモノを・・・ぐぬぬぬぬ」


 『鳥人』には歯が無い為、歯ぎしりは出来ない。


「隊長殿!われらの出番はだなのであろうか?」

吾輩わがはいも待ち草臥くたびれたでそうろう!」

「隊長殿!未だでごわすか?」


 騒がしい通信を送ってきたのは、スカイマークの直参じきさんの部下達だ。『鳥人』のみで構成された突撃部隊『グングニール』の隊員達である。第一機動艇隊だいいちきどうていたいに配属されるまでは、集められた浮空艇で見張り要員として働いて居た者達である。空を飛ぶには飛んでは居たが、あくまでも浮空艇に便乗して居ただけに過ぎない。しかし、今回『飛翔艇ひしょうてい』の搭乗員に抜擢された事で、空を飛ぶ楽しさを思い出した者ばかりである。突撃隊隊長のスカイと共に『飛翔艇ジャンキー』と言っても過言ではない位に、『飛翔艇依存症ひしょうていいぞんしょう』を発症して居る。

 そのジャンキー達の初めての実戦だ。元々は狩猟民族である『鳥人』達の気性は激しく、戦闘向きの性格を『見張り』と言うおりに閉じ込められて居た為、自らで戦えると言う現在の状況が嬉しくてたまらない・・・そんな感じで戦闘開始を待ちびて居た。


「ハハハハハ。待ちくたびれたのは拙者とて同様である!サー・・・今は指揮官殿の下知げちを待つのである!」


 突撃隊の皆が、今まで押し込められて居た戦闘衝動がハチ切れる程に膨れ上がって居る。

 コレ以上は待ちきれない・・・そんな黒い感情に支配され掛かった時、ようやく待ち望んだ通信が入って着た。


『聞いてるかい?アタシの可愛い子供達!ヒョーエのボウヤが男を見せたんだ!次はアタシ等の番だよ!抜かるんじゃ無いよ?帝国の糞野郎共に眼に物を見せてやる良いチャンスだ。さぁ、蹴散らして来な!』


 この通信と共に、スカイも隊員達へ通信を放つ。


「待ちに待った攻撃開始の合図である!我が『グングニール』は名誉な事に先陣を仰せつかってるである!取り決め通り3艇を1小隊とし、小隊長の定めた目標に攻撃をするのであるっ!各員の健闘と武運を祈るのであぁ~~~るっっ!突撃ぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっっ!!・・・なのである」


 その通信を合図に猛然と15艇の『飛翔艇』が敵の浮空艇に襲いかかった。眼下には40艇を超す敵の浮空艇がひしめいて居る。各隊員が針に糸を通すかの様な巧みな操艇ですり抜けつつ『岩石弾ロックバレット』を叩き込んで行く。最初の突撃で、3つの大穴を開け戦闘不能に陥った敵浮空艇は5艇、返す刀の様に上昇しつつ攻撃し、更に5艇を戦闘不能に追いる。

 その苛烈さに敵は包囲陣を敷く為に散開をし、火線を集中させようと試みたが、散開して孤立した所を3艇ずつに別れた突撃隊員により喰われてしまう。各小隊は三角形の陣形を保ったままや、隊長機を軸に螺旋を描きながら攻撃する隊、一列縦隊を維持し攻撃の際のみ散開し一撃を加える・・・と、言った、各隊長の好みにあった戦術をって居る。戦闘中でありながらも、思わず見惚みほれてしまう程の美しさだ。


「フハハハハハッ!もろい!脆いであるな!帝国軍は脆いである!そして、『飛翔艇』は速くてスンバラスィ~~~のであるっ!」 


 戦える喜びと大空を舞う喜びで高揚して居る為か、言動が少々可怪おかしくなりつつあるスカイマークであった。

 例えどんなに戦闘で興奮して居ても、『鳥人』の習性で戦場を俯瞰ふかんして観てしまう。そして、1艇のあまりにも無謀な動きをする『飛翔艇』が眼に入った。


「アレは危険であるな・・・。あの艇は・・・サーシャ殿か!?イカン、そっちはイカンのであるっ!」


 スカイの眼には、獲物を追うのに熱中する余り敵の浮空艇に捕捉された『飛翔艇』の姿が映って居た。


「スライン!スーシャ!小隊を率いて拙者に続くのである!指揮官殿の危機なのであぁ~る!」


 スカイの言葉に反応した6艇が、スカイに追従ついじゅうし猛加速を開始する。その時、スカイの眼には、サーシャ艇が天敵に睨まれ逃げる事を諦めた獲物の様に映って居た。


「サーシャ殿に死なれては拙者が困るである!指揮官とか任されたら自由に空を飛べなくなるのである!ソレだけは何としても避けねば成らないのであるっ!」


 スカイの妄執もうしつとも言える攻撃により、敵浮空艇の艇体には法撃開始直前に7つの大穴が空き、発射された魔法も目標を捉える事を出来ずに霧散して行く。


「飛翔艇指揮官殿!油断大敵ですな!指揮官殿に死なれては皆が困るである!」


 と、サーシャに向けて通信を行う。


「スカイ!助かったよっ!この礼は必ずするよ」

「フハハハハハッ!期待しないで待ってるである!」


 そう通信を終えると、スカイ達は新たな敵に向かい突撃を開始した。


「正直、拙者の為に助けたのであるからして、礼など不要なのである!」


 そう独白し、通信機を起動させ部下にねぎいの言葉をかけた。


「スライン、スーシャ、飛翔艇指揮官殿を助けた功で、皆に何らかのお礼が貰えそうである。協力感謝なのである」

「我は酒が良いですな」

「吾輩はドラグル豆を所望致しょもういたす」

「了解なのである。其其それぞれの部下達にも聞いて置くのである。その為にも死ぬのは許さないのである!」



 『グングニール』隊の働きは目醒めざましく、他の『飛翔艇』載りが1艇落とす間に、3艇4艇と落として行く。


「フハハハハハッ!もう1艇蜂の巣なのである!拙者達を止められるモノは、この空には存在しないのであぁ~るぅ~~っ!」


 正に縦横無尽じゅうおうむじんの大活躍だ。

 かなり敵の数も減り、友軍にも手柄を立たせる為、後は任せてノンビリしようかと『グングニール』隊を纏めて高空待機を命じて暫く経った時、スカイの『鳥人』としての眼が、異変を捉えた。

 それは、今まで圧倒的だった『飛翔艇』破砕され撃墜されて行く姿だった。


「アレは・・・何であるか?」


 お椀を伏せた様な形に、大量の長い魔導筒を備え貫徹かんてつ能力を増した対空浮空艇とも言うべきモノであった。速度自体は旧式の浮空艇よりも遅いくらいだが、長い砲身から放たれる魔法は優に2000メルトにまで到達し、肉薄してすれ違いざまに『岩石弾ロックバレット』を投下する事で打撃を加える『飛翔艇』の天敵とも言える兵装の浮空艇だった。


「うぬぬぬ・・・アレはマズイであるな・・・」


 友軍の苦境に見かねた1小隊が突入を開始した。それを観て慌ててその小隊長を説得する。


「スードラ!駄目なのである!行く事は許さないのである。これは突撃隊長としての命令なのである!」


 『鳥人』の世界では部族長の命令は絶対に聞かなければならなく、この場合は隊長であるスカイマークの言葉は絶対である。


「どうしてでらせられますか?我らが行かねば友軍は壊滅するのは必然!我らならば必ずや討滅うちほろぼしましょうや!」

「不確定要素が強すぎるのである。拙者達に欠員が出る事は許されないのである。拙者達の存在が『鳥人』の地位向上に役立つからなのである。それ故に無駄死は許されないのである!」

「ならば、如何様いかように討滅しましょうや?」

「うむ。拙者にはヒョーエ艇長から授かった秘策があるのである」

「?」


 こうしてスカイ率いる『グングニール』の隊員達は、帝国の新型浮空艇の直上8000メルトで縦に輪を作るかの様にグルグルと回り始めた。最下点に到達する位で『岩石弾ロックバレット』を射出し、また上昇して次の艇が落として行く・・・落ちて行く岩石弾は、自由落下に毛が生えた程度の速度だが、高度が8000メルトにもなればそれなりの威力と成る。しかも、雨の様に降り注ぐ為、少々外れても問題ない量の岩石の雨が、敵の対空浮空艇に降り注ぐ結果となった。

 元々この戦術は、頑丈な装甲に包まれた要塞砲を攻撃する為に用いられる戦術で、動かない的に対して使われるやり方だ。だが、速度が遅く回避もままならないのではないか?・・・と、看破かんぱしたスカイにより、今回、対空浮空艇用の戦術として用いられたと言う訳だ。

 射程外からの攻撃には、コチラも射程外の攻撃で対応する・・・『鳥人』は実に柔軟な発想をしていると言えよう。

 岩を落下させてるだけなので目に見えた打撃は与えられないモノの、着実にダメージを積み重ねていく。その様に続けて居ると、少なくない数の友軍が駆けつけてきた。


「僕はユーミルともうすです。部下共々に助太刀に参りましたです」

「アタシはビフローよ。攻撃に参加するわね」


 助太刀は『草原の小人』達の部隊で、総数が30艇ばかりである。先程までの攻撃は、可も無く不可も無くと言った無難なモノであったが、臨機応変の素早さは流石さすがではある。熱血馬鹿な『エルフ族』は真正面から突撃し、撃墜されて損害を増やして居るのが対照的だ。 

 合計45艇となった高高度攻撃隊は、敵の新型の殲滅せんめつ速度を早める事に成功して居た。

 数の増えた攻撃隊を統率する為、独り戦列から外れたスカイに、サーシャからの通信が入った。


「スカイかぃ?またしても助けられたね!」

「ハハハハハハッ!この程度お安いご用なのである!礼はヒョーエ艇長殿に言って欲しいである。彼から聞いてた戦術ですしな」

「ボウヤには助けられっぱなしだね・・・でも、損害を出しちまったけど大丈夫かねぇ・・・。ナタリアにも叱られそうだし。はぁ・・・どうしたものか」

「過ぎた事を悔やんでも仕方ないであるな。ヒョーエ艇長殿も言ってたである『世の中、成るようにしか成らない』とですな」

「あのボウヤも、前向きなんだか後ろ向き何だか判らない所があるさね」

「全くである。そこが楽しいところであるな」

「あぁ、それはアタシも同意するよ」


 そんな会話をして居ると、今、最後の1艇が操艇不能となり森へ降下して行った。 

 その時、サーシャからの勝利宣言とも言える通信が入ってきた。


ようやく終わったかぃ?損害が出たのは悲しむべきだが、悲しんでも居られない。しばらく別命あるまでは敵の残党をいぶり出すよ。決めた通りに探索班と援護班に分かれて敵の捜索。ここで抜かって落とされた奴はアタシが絶対に許さないからね!覚悟しておきなよ!!』


 『飛翔艇』の中でも一番危険なポジションに居る『グングニール』隊だが、1名の欠員を出す事も無く初陣を戦い抜く事が出来た。だが、帝国への反撃は未だ始まったばかりである。彼らはどう考え、どう想い、戦い抜いて行くのであろうか?


「ふぅ~流石の拙者もクタクタであるな。だが、マダマダ載り足らないのである。老衰で死ぬまで載り続けたいのであるっ!」 


 まぁ、『グングニール』隊の面々は、おおむねスカイと同じタイプみたいなので、一切心配する必要は無さそうではある。



 この戦いで『グングニール』隊は皇国に於いて一躍有名になり、その隊長であるスカイに、人生初の『モテ期』が訪れるのだが・・・それはまた別の話しである・・・。 

次のお話は数日後・・・と、書きましたが。次の日も『数日後』に含まれますよね?(笑


と、言う事で更新しておきます。


いや、今週は忙しいんですよ・・・マジで。


誰かタチケテ~っ!

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