反撃開始 そのご
「がははははっ!アンタがあの浮空艇の艇長かぃ?おっソロしい火力だねぇ。あんなのを喰らったら、今頃儂等は丸焼きになってろうな。あのチッコイのもバカ強いしな。アレが皇国の新しい主力兵器ってトコかぃ?」
このガハハ笑いをしてるのが、ここ『空賊』達の拠点のボスであるクレインさんだ。種族は『オーガ族』。中身や発言は完全にオッサンだが、見目麗しい大柄な美女である。この手のタイプは完全に興味の範疇外なので、基本的どうでも良いが。
俺の隣に控えて居るクリスさんが、妙に引き攣った表情で『いや・・・まさか・・・』だとか『見た目は似てるが中身が・・・』等と、ブツブツ呟いて居る。常に冷静なクリスさんらしからぬ行動だ。
そして、一見して和やかに会話をして居る様に見えるが、円座に座る俺達を取り囲む様にして、この拠点の幹部達と思われる者達が壁際に立って居たりする。皆が一様に険しい表情をして居るのが見て取れる。『空賊』は完全に実力制社会の為、見た目はオッサン臭い美女でも、相当な凄腕の筈だ・・・ソレこそ護衛すら要らないクラスの。現に今もビリビリとした威圧感みたいなモノを感じて居る。もしかしたら、幹部の人達はクレインさんが暴走した場合に備えて控えて居るんじゃ無かろうか?・・・なんか、そんな気もする。
ここで呑まれてしまうと交渉どころじゃ無くなるので、敢えて平然と受け流してたりしてるが・・・実際は、かなりガクブルしてるんですけどね・・・。
「まぁ、そんな所ですね。あのチッコイのが『飛翔艇』と言います。アレが約100艇程。私の浮空艇は『空翔艇』と申しまして、アレが4艇。『空翔艇』と同じ推進装置を組み込んだ艇が数艇程でしょうかね?今現在の皇国の主力は」
「あれ?儂の持ってる情報では、チッコイ奴は120艇、チッコイ奴の母艦とやらが1艇、新型浮空艇と同じ推進装置は10艇と聞いてたけどもな・・・?」
「あれ?そうでしたか。どうやら数を間違えてた様ですね」
「がははははっ!間違いは誰にでもあら~な。ま、気にすんなぃ」
「いや~私としたことが・・・申し訳ありませんですね」
完全に腹の探り合いである。ってか『空賊』の情報網は意外と侮れんな。この様子じゃ帝国にも戦力は知れ渡っていそうだ。だが、手を出してきた辺り、実際の戦闘能力はまだ掴んでは居ない様だ。ソコに付け入る隙が有りそうだ。
「ところで・・・ソコに座って居るオーガだが・・・名前は何てんだ?」
「クリスさんですか?あぁ、クリストファーさんですね。彼が一体どうかしましたか?」
クレインさんは、男臭い表情でニヤリと笑いつつ言い放った。
「やはりクリスか!久しぶりだなっ!」
え?知り合いか!
「おや?クリスさん、お知り合いでしたか?」
「いや・・・確かに似ては居ますが・・・?」
気づいては居るが認めたくない・・・と言った表情だ。
「フンッ!儂の顔を見忘れたか!?クリストファー・ガウ・オーグルニス!」
何だ?同族だし、昔の許嫁か何かか?
「私の真名を知って居ると言う事は・・・間違いなく貴女なのですね・・・クレイン・ガウ・オーグルニス・・・」
え?『ガウ・オーグルニス』?意外にも血縁か?しかも『ガウ』って事は『王族』じゃん。さっきの『空賊』達の反応はその可能性が有った為なのかねぇ。
「はんっ!やたらと他人行儀な呼び方をしやがるじゃねぇか!昔みたいに『クレインお姉ちゃん』と呼んだらどうだってんだ!」
え?姉弟の関係?あ~そう言えば、子沢山な家族なんだっけかな?確かになんか顔つきが似てる・・・様な気もしなくはない感じ?
「確かに姉上なのかも知れませんが・・・口調が昔とは違ってましたので確証が持てず・・・」
おや?昔から『ガハハ笑い』をする様な女性では無かったのか。まぁ、確かに、基本的に礼儀正しい『オーガ族』だし、その中でも『王族』だもんな。逆にこんな女性の『王族』が居たら、その国はなんつ~かヤバイよな。
「あれ?昔からこんな感じでは無かったのですか?」
「昔は、如何にも深窓の令嬢・・・的な話し方でしたので・・・」
うぬぅ・・・見た目は一緒でも中身が違えばそりゃ~困惑もするってなモノかねぇ。
「はっ!アレから儂も色々と大変だったんだぜ?そりゃ~性格も少しは変わろうかってモノさ。『空賊』は実力主義社会なんでな、お嬢様言葉じゃ~評価して貰えんのよ。しっかし、久しぶりに逢った弟だってのに・・・すっかり他人行儀になっちまって・・・お姉ちゃんは哀しいぜ!」
クレインさんは、矢鱈と大袈裟なジェスチャーで嘆きを表現して居たりする。実は結構、剽軽な性格だったり・・・?尤も、『空賊』を纏める上で必然的に身に着けた所作かも知れないが・・・。
「す・・・少しって言う様な感じではありません・・・それにお互いそんな歳でも無いでしょうに・・・」
クリスさんは血を吐くかの様な感じで受け答えをして居る。実は少し憧れて居たのかもなぁ・・・こう見ても、かなりの美人だし、頭もメチャメチャ切れそうだしな。理想の女性像がガラガラと音を立てて崩れ去ったってトコなのかもな。
御愁傷様です。
「姉弟の感動的な再開はそれくらいにして・・・本題に移りたいのですが良いでしょうか?」
良い加減に話を戻さないと、このまま永遠に脱線したままになりそうだ。まぁ、相手はそれが目的なのかも知れないが。
「おぅ。そうだったな。んで、結局、皇国は儂等『空賊』に何をやらしたいんだ?」
話が早い御仁だ。コッチとしても助かるね。
「単刀直入に行きましょう。皇国は貴方達『空賊』に求めるモノは『歩兵戦力』ですな。敵の手に落ちた浮空島の奪還の為の戦力が欲しいです」
俺の言葉を聞くと、コチラを試す様な目付きでこう言い返して来た。
「『空賊』っても、所詮儂等は犯罪者の集まりだ。儂等に捨て駒になれ・・・と?」
ふむ。良いね。こう言ったギスギスした空気は好きだね。
「捨て駒なんてとんでも無い。現状、私達は制空能力は非常に高いですが占領能力が弱点でしてね。『空賊』の白兵戦能力の高さは噂に聞いてますよ。『トロール族』が在中する帝国の艇でさえ拿捕出来ると・・・その卓越した戦闘能力を買いたいのですよ」
「へぇ~儂等の腕を買ってくれるのか?皇国ってのは、儂等を意外と高く評価してくれてるんだな?」
「えぇ、捨て駒なんて有り得ませんね。皇国っても、一部の頭の堅い人達は認めようとはしませんけどね。少なくとも私は『空賊』の能力を高く評価して居ますよ」
一応、興味を持ってはくれたみたい・・・かな?
「儂等の腕を買うのは良い・・・だが報酬はなんだい?」
イタズラ好きな子供の様な目付きで聞いて着た。美人がやると、お茶目で可愛いが・・・この話し方じゃ~色々なモノが台無しですな。
まぁ、漸く、望んだ流れに成って来たな・・・巧くノッてくれれば良いのだが・・・。
「先ずは手付にコチラを・・・クリスさん、宜しくお願いします」
そうクリスさんに促すと、矢鱈と強固で重量のある箱を目の前に差し出して来た。『解錠』の魔法を掛け蓋を開ける。
中身を見てクレインさんは目を見開いた。
「ほぉ・・・コイツは・・・『オリハルコン』かぃ?」
箱の中身は、浮かび上がらない様に厳重に包まれた握り拳大の『オリハルコン』が納められて居た。ソレを見て『空賊』達はざわめき立つ。『アレがオリハルコンか・・・』とか『初めて見た・・・』とかの声が聞こえる。
クレインさんは流石は元王族ってトコか、狼狽えたりは欠片もしない。やはり、この辺りは雑魚とは違うな。
「捨て値で捌いても50アダムにはなるでしょうな。ま、買い手が居れば・・・のハナシですがね」
「確かに報酬とするならかなりの高額だが・・・『空賊』全体から見りゃ~そんなに高額じゃねえぜ。ま、端金でも無いのは確かだがな」
まぁ、コレ1個じゃ、精々ドレッドノート級が建造出来る程度だしな。
「あぁ、これは手付と言うか前金ですな。他の『空賊』の方々を説得する為の見せ金と思って下さいな」
「ほほぅ。これだけじゃ無ぇってのか?」
この報酬なら間違い無く釣り合う筈だ。ってか、これを蹴られたらこれ以上の報酬は現状じゃ出せないんだが・・・。ま、良い反応を期待する事としますかね。
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