反撃開始 そのよん
目を覚ましてみると、周囲一帯が灼け爛れていた。ここから確認できるだけでも、巨大な樹の枝や葉がが灼き払われ、幹のあちこちが抉れ、無残な様相を呈して居る。
焦げ臭い匂いが充満し、負傷者がアチコチに横たわり、治療士達が慌ただしく行き交って居た。よく見たらターニャも混じって治療をして居る。その傍らにはタマが補佐をして居る様に見える。
更に周囲を見回してみると、1人の『鳥人』が平伏して居た。これは・・・土下座?
その『鳥人』の周囲にはボロ布を纏い、血の滲んだ包帯を巻きつけた者も居る。その者達は土下座して居る『鳥人』を憎悪の眼差しで睨んで居る者、諦めの境地に居るかの様な眼差しの者、完全に恐怖や畏怖の表情を浮かべた者・・・様々な感情を抱いて土下座する『鳥人』を囲んで居た。
「某とした事が・・・申し訳ござらん!」
この声はスレイだな・・・一体、俺が昏倒している間に何があったのやら。良く見ると、その隣にはミレーヌもチョコンと正座して居た。この惨状は二人が原因か?
暫く呆然として居ると、俺が意識を取り戻した事に気づいたのか、クリスさんが近寄って着た。
「ヒョーエ艇長殿、お目覚めですか・・・」
「おぉ、クリスさん。一体、何事ですか?この惨状は・・・」
俺の質問に、苦虫を噛み潰した様な表情をし答えてくれた。
「結論から申しますと、スレイミー殿とミレーヌ殿が暴走致しました」
「は?暴走?ドウイウコト?」
一体全体、何を言ってるのかサッパリ判らん。
「ヒョーエ艇長殿がターニャ殿に押し倒された事を攻撃され倒れ伏したとスレイミー殿が判断し、攻撃を加えた事でミレーヌ殿も『空賊』の襲撃でヒョーエ艇長殿が攻撃されたと判断し、徹底的に攻撃した結果・・・がこの惨状です」
「・・・は?なんじゃそりゃ?」
能々ハナシを聞いてみると、俺の頭部は元々はスレイの攻撃に因り負傷したのだが、その際には攻撃後の転回中でコチラを視認出来て居なかった。いくら『鳥人』でも、真後ろは見れないもんな。そして、まさか自分がやったモノだとは気付かなかったらしい。ターニャに押し倒された時には、『空賊から攻撃を受け倒れ伏した所をターニャが身を呈して庇い、治療を行なって居る』様に眼に写ったらしい。『鳥人』の視力の良さが裏目に出たと言うコトか・・・。そして、その事に逆上したスレイが空賊の拠点である巨大樹を無差別法撃したんだとか。その状況に至り、ミレーヌも『スレイの判断だし、現にジンちゃんの頭は血塗れで倒れ伏して居る。空賊共に殺られるまえにジンちゃんを救うぞ!法撃開始だ!空賊共に報復を!』と、ばかりに舷側砲を乱射するように命じたんだとか。
二人共に『空賊』に捕らえられ、使役された経験がある為、『空賊』に対して偏見を持って居たのがこの惨状の原因とも言える。『空賊』達には『身から出た錆』とも言えるが、平和に住んでいた者達からしてみれば、暴虐な行いにしか映らない訳で・・・先ほどの微妙な表情をした人達の気持ちが、何となく判った気がする・・・。
「あ~ウチの若いモンがなにやら迷惑かけたみたいだが、ソレ位で勘弁してやってくれないかな?」
このまま見過す事も出来ないので仲裁に入るとする。
「元々はオタクらが攻撃してきたんだしな。しかも騙し討ちみたいな事もしてたし。ま、生きてるだけでもメッケモンだろう?」
気楽な俺の発言に、睨んで来る『空賊』達も居る。
「なんなら、徹底的に殲滅でもしようか?『空賊』の拠点が一つ潰れた所で皇国にゃ打撃は無いしな」
その発言に大半の『空賊』が色めき立つ。
「先ずはその二人を返して貰おうか?クリスさん、抵抗するなら殺ってしまっても良いですよ」
『空賊』達に背を向け、クリスさんに目配せしながらそう言い放った。
「艇長殿の命ならば致しかた有りませんな」
そう言いつつ、肉体強化の魔法を発動させて行くクリスさん。『な!オーガが魔法だと・・・』『いや・・・そんなまさか・・・』等と言った声も聞こえて来る。うむ。彼は非常に役に立つ存在ですな。
「さて、二人もコッチへ来なさい。まぁ、失敗は失敗として次に活かせば良いさね。それよりも怪我とかはしてないか?アイツらよりもミレーヌとスレイの方が俺には大事だしな」
「主殿・・・申し訳ござらん・・・」
「ジンちゃんゴメン・・・」
「謝る必然性は無いってば。結果はどうアレ、俺の為に動いてくれたんだしな。心配掛けてスマンな。そしてありがとう」
二人に正面から軽く抱きつき頭を撫でる。その後で胸の前で腕を組み『空賊』達に向き直り、出来るだけ傲岸そうな表情を作りつつ言い放つ。
「さて、今度は間違いなくこの拠点の指導者に会わせて貰えるかな?駄目なら殲滅して他の拠点を捜すまでだ。浮空艇の艇長なんてモノをやってますが、こう見えて私は荒事はあんまり好きでは無いのですからね。良い返事を期待してますよ?」
肉体強化の魔法で身体が巨大化したクリスさんを背後に従えて居るのは言うまでもない。完全なる脅迫だが、一応は戦闘を回避可能なのも伝えておく。逃げ道は開けて置かないとな。
さて、この状況で抗えるだけの根性はあるのかねぇ。スレイとミレーヌの暴走は正に天佑だった。あの暴走でコチラの戦闘力は把握出来た事だろう。飴と鞭で、先にかなり手痛い『鞭』を与えてしまったが、次に与える予定の『飴』は相当に甘い筈だ。『空賊』の協力を取り付ける事が出来る様に上手く話を持って行かないとなぁ。
さて、どうなる事やら。
個人的な事情でほぼ一週間、ネットから隔絶した生活を送ってました。
携帯からの投稿とかは、文字入力が面倒そうなので断念。
再接続可能になったのでUP致します。
ネット依存症では無いモノの、普段在る存在が無くなると、結構苦痛なモノなんですな。
もし、私が異世界にトリップする様な事が有ったら、ネット中毒症で悶死しちゃうかも?(笑




