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反撃開始 そのさん

 機関室員が右舷噴射用魔導筒を慎重に操作し、巨大樹の浮空艇発着場と思われる枝に近づいて行く。当然、左舷砲座は巨大樹に向けてある。10サンチとは言えソレが6連装ともなれば凄まじい連射速度を実現する。高性能化を施してあるから事実上は50サンチ6連装だが。今現在の状況で敵を捕捉可能なのは、左舷砲座4門である。

 スレイは周辺を哨戒中で轟音を上げつつ飛翔中だ。あの姿だけでも十分な脅威に映るはず

 砲座を活かすため、完全に着底はせずに少し艇を浮かせた状態で留める。『浮空石ふくうせき』と言う物質のお陰で、ホバリングは安全に行う事が出来る。しかし、枝までは少し高さがあるので、ハッチを開けてから階段状の梯子を下ろす。


「良し、交渉に行ってくる」


 俺の護衛は『猫人ねこひと』であるターニャとタマリンだ。もう片方が心配だが、戦闘能力の高さには替えられない。一応、帯剣はさせてるが『ばくト弾とだん』を1本ずつと弾頭を各自2つずつ持たせてある。使う様な事態にならない事を祈るだけだ。

 俺の装備としては、簡易通信用魔導筒と受信用ヘッドセットだ。後は10サンチ魔導筒1本。剣を扱う技術は会得して居ないので魔法に頼らざるをえない。ってか、コッチに来て半年程度じゃ剣技などを覚える暇も無いっつ~の。


「ま、艇長さんなら問題無いと思うけど、無事に帰って来ると良いのね。アタチじゃこの艇の面倒を見きれないのね」

「ポーラは可愛いな」

「な・・・なな何を言ってるのかちら?艇長さんの作る料理が食べられなくなるのは困るのね。ソ、ソレ以外の何の価値が貴方に有るのかちら?」

「はははは。アリガトな。皆んなも抜かるんじゃないぞ?相手は『空賊』だ。俺たちが軍属なら容赦なく襲ってくる筈だ。唯でさえ武力を振りかざしての威圧的な交渉なんだしな」

「艇長様はボクが護るにゃん」

「アタシも居るから問題にゃいにゃ。浮空島に乗った気分で待つと良いにゃ」

「タマちゃん・・・『様』は付けるなって」

「『ちゃん』を止めてくれたら止めるにゃん」

「んじゃ、『様』付けで良いや。俺の警護、宜しく頼むな『タマちゃん』」

「・・・・・・にゃぅん・・・」

「ははは、マダマダ若いな」


 何やらジットリとした視線を感じたので、視線の先を辿たどってみると、少し不機嫌そうなミレーヌが居た。


「ジンちゃんってば、最近・・・タマちゃんと仲が良いよね・・・」


 相変わらずミレーヌってば可愛いなぁ・・・アッチ方面に目覚めてしまいそうだ。因みに『タマちゃん』の愛称の考案者はミレーヌだったりする。


「嫌だなミレーヌ・・・俺が愛してるのはお前だけだよ!」

「え!?ちょっ・・・なっ!・・・バッ!」 

「ふむ・・・通訳すると『え!?ちょっと何を言ってるのさっ!バッカじゃ無いのっ!』・・・ってトコか?」


 ミレーヌはふくれっ面でコチラを睨んでいる。


「相変わらずにゃかが良いにゃ~」

「ははは、褒めても何も出ないぞ。因みに一噛りとかは許可しないからな?」


 一応は釘を差して置かないと、こいつは予測不能だ。


「チッ」

「ターニャさん・・・?」

「にゃ、にゃでもにゃいにゃ?」


 首を軽く傾げながら『何でも無いよ?』をアピールして居る。見た目が知的なだけにそのギャップは掛け値なしに可愛い。タマなんぞは明らかに、その仕草に見蕩みとれて居る。

 この食欲魔人がタマに悪影響を与えなきゃ良いが・・・下手に凄腕なのが厄介だよな。同族の凄腕っぷりに魅せられて感化されないと良いのだが。タマがアレに染まってしまうと・・・俺がサーシャさんに殺されそうだ。 


 色々有ったが、巨大樹の枝に降り立つ。降りる順番はターニャ、俺、タマの順だ。この順番は死んだら困る順なのは言うまでもない。

 『空賊』側の出迎えは隊長らしき者を先頭に、その背後には戦闘用魔導筒を小脇に抱えた20名ばかりの、兵士職と思われる雑多な種族から構成される兵士たちであった。


「出迎え御苦労!皇国第一機動艇隊こうこくだいいちきどうていだん所属、空翔艇くうしょうてい『オーグル』艇長、ヒョーエ・ジンナイだ。そちらの指揮官との対談を望む」


 ソレに対し『空賊』側の返答は無い。


「ふむ。聞こえなかったのかな?」


 ここでようやく相手からの返答があった。


「つまりは君があのふねの指揮官な訳だ。ここで君を討てば私たちの勝ちと言う事かな?」


 その言葉と共に、背後の兵士が魔導筒を一斉に構える。ソレに対し『猫人』2人は『ばくト弾とだん』を構えて身構えて居る。見慣れぬ兵器に『空賊』は明らかに動揺して居る。

 ふむ・・・圧倒的な戦力を誇る敵を虚偽の降伏で敵の指揮官を呼び寄せ始末する・・・か、中々の策だが・・・。


「スレイ。俺の左隣の発着場を『岩石弾ロックバレット』で粉砕出来るか?」


 簡易通信機のスレイ直通ボタンを押し込みつつ魔法を発動。スレイに連絡を取る。


うけたまわったでござる」


 今現在『空賊』とコッチは膠着状態だ。


 スレイに通信してキッカリ10秒後、超高速で飛来している『飛翔艇』から解き放たれた『岩石弾ロックバレット』が、凄まじい轟音と共に巨大な枝をアッサリ貫通し、粉砕された木屑が辺りに飛び散る。


「ん~どちらかと言えば狙ってるのはコチラなのだが・・・さて、どうするよ?」


 腕を組みつつ高圧的な態度をとる。さっきの木屑がコッチに飛んできて頭に直撃し、何やら流血して居る様だが、えて無視をする。・・・っつ~か、何と言う不運!他に当たってる奴なんか居な~いじゃ~んっ!


「ふみゃぁ~~っ!」


 何やら奇声が聞こえたので見てみると、ターニャの様子が明らかに可怪おかしい。もしや、俺の血の匂いで興奮状態か?血走った目でコチラを伺ってるので間違いなさそうだ。理性と本能の間で葛藤があるのか、プルプルと小刻みに震えて居る。

 何も見なかったと表情を引き締め、更に『空賊』達に告げる。


「お前さん達は、アレがトルピードクラスを強化したふねだと思ってるのかね?ふむ・・・実は生命の危険があるのはお前さん達なんだがな」


 そう言い放つと今度は『オーグル』に合わせたボタンを押しこみ、簡易通信機を発動させる。この新しい通信システムは、ボタンに魔導金属を使用し発条バネを仕込んで押し込んでも戻る様にしてある。魔力を篭めた指でボタンを押し込むと、あらかじめ設定された通信相手に発念はつねんが出来ると言うモノで、魔方陣を交換せずに素早く複数の相手に発念が可能。自由な空間に乏しい『飛翔艇』の為に開発された通信システムだ。当然、他の用途にも使用可能だ。


「敵さんの鼻っ面に『氷槍アイススピア』を叩きこんでやれ。使用砲座は左舷全部だ」


 既に待機して居た様で、今度は通信直後に魔法が放たれる。


 『オーグル』の舷側には基本的に何も無い様に見える。が、しかし、良く目を凝らすと、僅かな継ぎ目と6連に並んだ穴が見て取れる、横2連に縦3連だ。そして、その魔導筒群の中心には照準用の『魔法投影マジックスクリーン』の魔方陣が刻まれて居る。高速飛行を行うに辺り空気抵抗を考えた結果、魔導筒の砲身は総てが艇体に埋まる様に仕込まれて居る。射角は仰角120°俯角90°とソレほど自由は利かないが、基本は弾幕や地上掃射用だ。それ程自由度は必要無い。この機構に因り、一見すると何も無い場所から魔法弾が放たれた様に見えるって寸法だ。

 左舷砲座4門、計24発の50サンチ魔導筒に匹敵する火力の魔法が『空賊』達の直ぐ目の前に次々に着弾する。口径は10サンチの為、『氷槍アイススピア』の大きさは個人用魔導筒と変わりは無い。だが、貫徹かんてつ能力が段違いだ。『ヒュカンッ!』と連続して音を立て、アッサリと木に穴を開け『氷槍アイススピア』が埋め込まれて行く。

 『空賊』の隊長は腰を抜かしたのか、恐怖に引きった表情で床に座り込みプルプルして居る。


「さて、お前さん達の指揮官に会わせて頂けるかな?」


 そうニヤリと不敵にわらった所で、いきなり横から押し倒された。押し倒された勢いで『ゴツンッ!』と側頭部を床で強打する。


「うみゃ~我慢できにゃいにゃ~っっ!!」


 そう言いつつ、ターニャは頭から滴って居る血を舐めとり始めた。

 朦朧とする意識を奮い立たせ何とかタマの方を見てみると、憧れの存在の異様な行動に完全に引いて居る様だ。

 ・・・良かった、ターニャが完全に規格外なんだな・・・と、安心しつつ意識を手放したのであった。 

物語の本筋に突入中なので少し長めです。

いや、こうしないと多分10話には収まらないから~。

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