これから進むべき道 そのきゅう
「なんじゃぁこりゃぁ~~~っっ!」
つい、大声を張り上げてしまった。
コチラをギロリと睨む(そう見えた気がする)120名ばかりの『飛翔士』達の冷めた視線が俺に突き刺さった(様な気がする)。
何故その様な大声を張り上げる事に成ったかと言えば、『飛翔士』の育成状況の確認に、新設された特殊兵種練兵所に やって来た事に端を発する。
聞く所に因ると、『飛翔艇』搭乗員である『飛翔士』達の訓練は、過酷を極めて居るらしい。
だが、その甲斐あって、モノになって来たと言うので様子を見に来た訳だが・・・。
正飛翔士80名、予備要員40名、計120名の総て・・・総てが『スネックヘッド』となってソコに居た。
赤や茶色や黄色(金髪)や白(銀髪)、緑や青など、実に色取り取りな『スネック』達がソコには居た。『エルフ』はもとより、明らかに子供としか思えない『草原の小人』も、そして男女の区別なくその場に居合わせた総ての者が整然と整列し、しかも『スネックヘッド』と言うのは、実にシュールな光景である。何らかのコントとか映画の撮影にしか見えんな。
ふと視線を感じ左手を見ると、実に晴れやかな笑顔で拳を握り、親指だけを天空に突き出して勝ち誇るフェルーナンの姿があった。
「どうっすか?見事なモノでがしょ?」
「う、うぬぅ・・・これは一体・・・?」
「オイラが姐さんに掛けあって『スネックヘッド』を『飛翔士』の正式な髪型に制定して貰ったんでさ~『飛翔士』が活躍すりゃ~『スネックヘッド』も一躍有名になるってな寸法でさ」
「うぬぅ。考えたな・・・」
「へっへっへ・・・。『スレイプル』の連中のあの冷めた目・・・絶っっっ対に見返してやるぜっ!」
「まぁ、ぶっっちゃけ、腕があれば髪型はどうでも良いしなぁ。フェルも望みが叶った訳だし否定する理由が無いよなぁ・・・」
「ヒョーエ艇長もこの機会にどうですかぃ?一世を風靡する髪型になるやも知れませんぜ?」
「いや、俺は遠慮しておくよ。そういや、サーシャさん達も『スネックヘッド』に?」
「流石のオイラもそこまでは無理でやした・・・今は見習い達だけだが・・・何れは皇国に、いや世界中に流行らせてやるぜ!」
以前から、間違った方向だが野望だけは大きかったが・・・賛同者と言うか強制したと言うか、同類が増えた事で気が大きくなって居る様だ。
「ははは・・・頑張ってくれ。俺は元の世界の風習でこの髪型以外に出来ないのが残念だ。『スネックヘッド』には出来ないが応援してるぞ」
そんなモノは存在しないが、こう言って置けば勧誘される事は二度と無いだろう。
「ヒョーエ艇長はそんな理由があったのか・・・なら無理強いは出来やせんな。あ、ヒョーエ艇長を皆に紹介するから待ってて下さいや」
「え?紹介?何故に?」
俺は様子見に着ただけなんだが?
「ヒョーエ艇長と言えば『飛翔艇』の生みの親!ならば、ここにいる奴らの大恩人と言う事になるっしょ?」
「そう言ってしまえばそうかも知れんが・・・開発構想を練っただけだぞ俺は。それに『飛翔士』としての適性は殆ど無いしな」
「まま、良いから良いから」
そう腕を引っ張り、壇上の様な所に押し上げられた。エルフの筋力に太刀打ち出来たりする事が出来たら、色々と苦労はしないっつ~の。
「お前ら!良く聴け!ここに居るのは『飛翔艇』開発者、ヒョーエ・ジンナイ艇長だ!新造戦闘艇である4艇しか存在しない『空翔艇』の艇長でもある!これから先の戦場でお前らの大先達に当たる御方だ。目ん玉ひん剥いて良~く脳裏に叩きこんで置けよ!」
フェルがそう怒鳴った直後から『飛翔士』達の俺を見る目付きが『胡散臭い人間族のオッサン』から『憧れの英雄』を見るかの様なモノへと変貌した。
っつ~か、お前ら単純過ぎだろぅ?オツムの方の特訓はして居ないのか?コイツらは。
紹介された上に壇上に立たされた以上、何も言わずに帰る事は出来ないよなぁ・・・はぁ、仕方ない。
腕を胸の下辺りで組み、傲岸な眼差しで『飛翔士』候補生を睥睨しつつ扇動ってみた。
「今、フェルーナンから紹介された、ヒョーエ・ジンナイだ。諸君らの駆る『飛翔艇』の構想は俺が練り、飛行試験を行った。載った者なら理解して居るだろうが、見た目からは想像も出来ない程に辛く厳しい乗り物だが、諸君なら耐え抜き、皇国に栄光を齎しくれるモノと信じて居る!皇国に繁栄を!諸君らに栄光をっ!!」
俺の言葉に触発されたか、目を潤ませて居る者、雄叫びを上げて居る者、隣同士で肩を叩き合って居る者・・・等々、好意的に受け止められた様だ。
しかし、それだけで言葉は終わらない。
「但ぁしっ!『飛翔艇』を載り熟すには操縦技術だけでは足らん!類まれなる戦術眼が必要となる。皇国お得意の突撃戦術では諸君らの生命も瞬く間に潰えてしまうだろう!」
先程とは違った批判的な言動に、ギョッとした視線を向けてくる候補生達。
「帝国の参謀は異世界人と言う話を聞いた事がある者も此処に居るだろう。かく言う俺も異世界人だ。異世界の戦術を諸君らに授けようと思う。俺の知識が帝国の参謀に匹敵するかは判らん、もしかしたら相当劣る可能性もある。だが、何も知らぬよりも知って居た方が、諸君らの生存率も戦闘の勝率も数倍に跳ね上がる!」
この時点で、フェルーナンも『え?なんすか?そのハナシ。初耳なんすけど?』みたいな視線を向けて来る。いや、だって、猪突猛進な奴らだけじゃ無駄に死ぬじゃん。玉砕は忌むべきモノだぞ?やればやる程有能な兵すらも無駄に散って逝く悪魔の戦術だ。
幸い、『オーグル』完成までには、まだまだ日日が在るしな。
「俺が知る限りの兵法を諸君らに伝授する!諸君らの中にも将来的に戦隊を指揮する者も出てくるだろう。無駄に戦友を死なせる事が無い様に精進する事を期待する!」
勢いでぶちあげてしまった以上、やらないといけないよなぁ・・・ま、世の中成る様にしか成らないよなぁ。後はどれだけ記憶から引き出せるか・・・だな。コイツらは一兵卒だからして、兵站に関する部分はザックリ除外するとして・・・さて、何を教え込もうか。
今日は早く帰宅できたのでUP。
この程度の文章でも何度も読み返して加筆修正加えたり、誤字や脱字の編集したりして、UPするのに1時間近く掛かるのが問題だなぁ。
誤字や脱字が起きない高性能な脳が欲しい所だょ。




