これから進むべき道 そのさん
その場所は、浮空艇の艤装を行う為か、浮空艇の発着場の様になってる様だ。
しかし、マジで完成させたのか?
実は外装のみで、中身はスカスカじゃないだろうな?と、一瞬、訝しんだが、大地の小人は陽の光の下で見ると、かなり窶れている様にも見える。
浮空艇の外観は横に細長くした卵に比較的小さな姿勢制御用後退翼と垂直尾翼とを組み合わせた形状で、空気抵抗を極力抑え速度を出せる様にする為、無尾翼機と言った外観に仕上がっている。元の世界では水平尾翼は姿勢制御に重要な役割を持っていたが、この世界には『浮空石』と言う、姿勢制御を容易にするモノがある。
基本的な操作は方向舵と昇降舵で行う。この辺りは元の世界の飛行機に限りなく近づけてある。元の世界でアレだけ発達した以上は、それだけ効率が良いって事だしな。
今回は試作機と言う事もあり、基本フレームはミスリルで構築し、外装は比較的魔導性能の高い純銅を使用している。飛行試験が目的の為、今回は非武装としてある。その為に完成が速く済んだってのも有るだろう。
「あ~良く来たねぇ・・・あ~何だったっけな・・・ゴメン、君の名前を忘れちゃったよ」
いや、名前を教えてないだけですけどね。
「では、もう一度自己紹介を。ヒョーエ・ジンナイと申します。一応『異世界人』と言う事になってます」
自己紹介は初めてだけど、こうしてた方が世間体は良いだろう。今日はこっちの仲間も居るしな。
「あ~そうだったね。ヒョーエ君ね。『異世界人』だったんだね、道理で面白い発想をする訳だ。取り敢えずは完成させたよ。どう?期待以上でしょ?」
「確かに凄いですね。それで、性能的なものは何処まで追求されてますか?それと、早速乗ってみたいのですが、大丈夫でしょうか?」
乗れないとただの飾りだしな。
「ヒョーエ君は足で魔方陣を起動させられるかな?正確には足の裏だけど。それが基本条件。後は推進用魔方陣と浮空石の制御も同時に行わなきゃいけない。浮空石の制御に『魔法投影』を組み込んだから視界は問題ない。今回は必要無いけど、攻撃の際には何処かの制御を切れば良いしね。ヒョーエ君の構想なら推進用を切って攻撃する事になるかもね」
相変わらず軽いオッサンである。まぁ、訓練により3箇所同時までなら起動可能になっている。欲を言えば全身を同時に制御したいところだが、その域にはまだまだ到達しそうにない。
「何とか出来そうです」
「なら、問題なさそうだね。ハッチを開けるには、ここの凹みを軽く押してご覧」
言われて押すと、左舷から右舷に向けて扉が開いて行く。仕掛けは分からないが、跳ね上げ式になってるようだ。
「閉める時はここを引っ張ってね。自動で閉まるから。内側から開ける時はここ」
乗る時の姿勢は、ロードレーサータイプのバイクに良く似ている。かなりの前傾姿勢で乗るようだ。
「方向舵だったかな?左右へ曲がる時はこのレバーを使用してね。設計図は足での操作だったけど、足は推進用に使うから変更しちゃったよ」
まぁ、大昔の戦闘機は棒で操作してたし、問題はないだろう。
「昇降舵も同じレバーを使用するよ。手前に引くと上昇、押しこむと下降、後は左右ね」
この辺りは要望通りだな。
「ま、説明はこんなトコかな?習うより慣れろ!ってな言葉もあるみたいだしね。後は自分で確かめる事をお薦めするよ。僕も乗ってみたいんだけど体格が違うから。ま、あとで自分用に作ってみるけどね」
帝国に情報を漏らさなければ、好きな様にすれば良いさ。
説明も受けたので、ワクワクしながら浮空艇に乗り込む。
「主殿、気をつけるでござるよ?」
「そうそう、無茶は駄目だからね」
「二人は心配性だなぁ・・・この俺が無茶など・・・・状況次第ではするかもしれないけども」
二人は『言っても聞かないしなぁ』みたいな表情をしている。
全く、失礼な奴らだ。無茶を好んでする奴が居るかっつ~の。結果として無茶になってるだけさ。
浮空艇に乗り込みハッチを閉める。空気が遮断され、かなり息苦しく感じる。・・・これって、飛行中に窒息とかしないだろうな?
が、その心配はお腹の下にある浮空石制御盤に魔力を通すと払拭された。
設計通りでもある『魔法投影』による全周囲モニターが発動し、軽い空気の流れも生まれた。呼吸が出来る程度には外部からの空気の導入もされてるようだ。
更に魔力を籠めると、艇体が浮き始める。見た目はまんま『VTOL機』的な感じだろう。
やはり、垂直離着陸機構を備えた飛行機は燃えるね!
両の足裏に魔力を籠め推進用魔方陣を起動させる。使用されてる魔方陣は『嵐』の魔方陣だ。左右に大小併せて4つの魔方陣を組み込んである。
ジェットエンジンの様に『空気の取り込み』を行わず、魔力で空気の渦を生み出しそれを推進力に転用する事で、高度に関わらず安定して速度を出せると言う利点がある。魔力を使用するロケットエンジンと言った所だろうか?その為、ロケットよりかは長時間の運用が可能である。
小さな魔方陣は静止状態からいきなり大加速を行う事による身体への多大な影響を緩和する為、勢いをつける為のモノであり、大きい方は推進用である。
この推進用機関の名称は、ストーム機関ではアッサリ帝国にバレて解析され真似をされそうなので『シュトルム機関』と名付けようかと思う。これで暫くは誤魔化せられる筈だ。
山の頂上付近の浮空艇発着場なので、それほど高度を上げなくても周囲には障害物は無くなる。
周囲に障害物が無い事を確認し、初動作用の魔方陣に魔力を流したのであった。
仕事が忙しくなって来てる為、更新が遅れるかもしれません。
毎週末にはUP出来ると思いますが、期間が開きそうなので纏めて更新。




