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章間話 手痛い敗戦

 命を懸けた激戦を終え、スレイの肩を借り、蹌踉よろめきつつ指揮所に戻った。

 『オーグル』の外観の被害だけでも甚大である。高度は限界まで下がりきり、森林地帯の木の上に引っかかって居ると言った状態だし、艇体せんたいは歪み、あちこちに亀裂が走り、帆柱も2本が傾いて使用不能。内装もグチャグチャのガタガタ。このままじゃ飛び立つことすらままならないだろう。

 

 何よりも大変なのが人的被害であった。

 

 指揮所に降りると、オーガ2人とエルフ1人、草原の小人が1人、指揮所の床に寝かされていた。全員が仰向けに寝ていて、手はお腹の上で指を組むように置かれている。

 指揮所の雰囲気も暗く、特にクリスさんとサーシャさんの落ち込み様が酷い。


「あれ?みんなどうしたんだ?」


 そう言った問にも誰も口を開かない。


「ジョン?リチャード?ミーシャ?ザード?どうしたんだ?」


 だが、既に俺も察しては居る。彼らが二度と目を覚まさぬ事に。


「あれ・・・?おかしいな?ターニャ?ターニャは何処だ?彼らの治療を・・・」


 自然とまなじりから涙がこぼれ出す。

 ターニャが疲れきった表情で下甲板から上がってきた。


「ターニャ、彼らの治療を頼む。どんな怪我も魔法で癒せれるんだろ?お前の腕なら簡単だろ?」


 ターニャも憔悴しょうすいしきった顔で、こう言い返して来た。


「いくらアタシでも、命の火が消え失せた『人』を生き返らせる事は出来にゃいにゃ・・・」

「え?そんな・・・嘘だろう?」

「残念だけど、彼らはもうただの血肉の塊にゃ。アタシにできる事はもうにゃにゃいにゃ」

「でも、心臓マッサージと人工呼吸を行えば・・・」

「無理にゃ。居世界の医療技術はアタシも聞いてるにゃ。でも、それくらいにゃら魔法で代用出来てるにゃ・・・死神に連れ去られた以上、その魔法すら効かにゃいにゃ・・・」


 でも・・・このまま何もしないよりはマシじゃないか!

 そう思い、動かない彼らに心臓マッサージを施す。


「ザード・・・いつもの悪態はどうしたんだ?ミーシャ・・・お前には夢があるだろう・・・?大きな夢が!ジョンにリチャード・・・クリスさんを独りにしてしまうつもりか?彼にはお前たちの支えが必要だろう・・・?」


 涙をポタポタ落としながら心臓マッサージを続けていく。


「艇長さん、もう無駄にゃ。彼らは生き返る事はにゃいにゃ・・・」

「でも、奇跡が起きて生き返るかも知れないじゃない?」


 そう言いつつも、身体を動かし続ける。


「ボウヤッ!もう良い!・・・もう良いんだ・・・・。アイツも戦いの中で死ねたのだから本望だろう。今回は相手が悪すぎたのさ」

「だけどっ!」

「艇長殿・・・サーシャ殿の言う通りです。一度、死した者は生き返る事はありません・・・彼らは良く頑張ってくれました。静かに休ませてあげましょう」

「それは判る!わかるけど・・・」


 暫くその場で泣き続ける・・・。


「ジンちゃん・・・」

「主殿・・・」 


 スレイとミレーヌが傍に来てくれた。


「こう言うのは何時までも慣れないよね・・・でも、悲しんでばかりじゃ前へは進めない。今は出来る事をやらないと」


 ミレーヌは経験者だったな。


「そうだな。ありがとうミレーヌ、スレイ。俺は艇長だ。沈んでばかりも居られないよな」


 スレイを抱き寄せ、ミレーヌの頭に優しく手を置きながらそう答えた。

 

 心臓マッサージで乱れたかつての仲間達の身体を丁重に整える。


 そうだな、ミレーヌの言う通りだ。今は自分に出来る事をやらないと。 


「ユーリィ!友軍に連絡は付くか?片っ端から発念はつねんしろ!ミレーヌ!被害状況を報告!スレイとスカイは外からふねの損傷を確認!」

「・・・了解ですわ」

「今詳細な被害状況をまとめてるところ。もう少し待ってて」

「分かった。俺も手伝うよ。手の空いてる者は被害状況の確認!動けない者はそのままで良い!」


 気分は晴れないが、今は身体を動かした方が良いだろう。

 

 被害状況が明らかになるに連れ、『オーグル』の被害の深刻さが明らかになってくる。

 舵輪回り全損、浮空石制御盤半壊、艇体フレームに断裂箇所と亀裂箇所多数、艇体に空いた穴から食料品の流出、2本の帆柱の使用不能、着底に因る浮空補助板及び舵の破損・・・頭の痛くなる様な報告の数々。

 だが、俺達は未だ生きている。死した者達の分まで生きないとな。


「よし!腹が減っては何とやらだ!飯でも食って精力つけるぞ!」


 そう言いつつ談話室へ向かう。落ち込んでる時は旨いものを食うに限る。

 今日のメニューは捕れたてのクルックと新鮮なシナギクの炒めモノだ。


 クルックは、森林に生息してる体長60サンチほどの野鳥で、少し癖のある肉質だがとても旨い。

 シナギクは、倒木の陰等に分布する地衣ちい植物である。こけに分類され、コリコリとした歯ごたえが魅力的である。

 地上付近でしか採取できない食材の為、浮空中は食べる事が出来ない料理と言う事になる。

 今回はスレイが気を利かせて集めて来てくれた。


 クルックは活き締めした後、血抜きをし羽をむしり、食べやすい大きさにブツ切りに、シナギクは軽く塩を振り水分を飛ばしておく。こうすることでシナギクの食感は倍増する。

 後は香辛料で炒めるだけである。香辛料で肉の臭みを飛ばし旨みを引き出す。

 談話室から艇の裂け目を通じ、浮空艇全体に美味しそうで腹の減る香りが漂い出す。

 人数が減ったとは言え、まだまだ大所帯である。作る量もかなりの量だ。

 出来上がった料理を大皿に盛り付け、料理を受け取りに来た小人の二人に渡す。

 そして、また同じ料理を作っていく。料理を作ってると、ドアからターニャが顔を覗かせた。


「良い匂いがするにゃ~アタシも頑張ったんだから多めに欲しいにゃ~」


 コイツの出現は予想通りである。準備していたモノを深めの皿に盛り付ける。


「ホラよっ、クルックの骨付き生肉と内蔵と頭と脚の盛り合わせとクルックとシナギクの炒めものだ」

「にゃ~~~んっ!さっすが艇長さんにゃ!やっぱり生肉は最高にゃ!艇長さんもそう思うにゃ?」

「いや・・・俺は生肉は無理だ。鳥人とりひとは兎も角、他の奴も無理だろうから好きなだけ食べな。どうせ部屋に持って行くんだろ?」


 と言いつつ、生肉の皿をターニャに持たせ、数本のフォークを布で包んだモノをポケットにねじ込み、炒めものの大皿2つを両手に持ち、医務室へ向かう。

 医務室で大皿の一つを手渡し病室に向く。振り返りざまターニャに声を掛けておく。


「食い終わったら談話室に皿を戻しておけよ?食って直ぐに寝たら駄目だからな!」

「あいあいにゃ~」


 返事は有ったが、恐らくは聞き入れる事は無いだろう。

 軽く溜息を付きつつ病室のドアを開ける。

 ベッドにはポーラとフェルーナンが寝ていた。


「よっ!生きてるか?」


 努めて明るく声をかける。


「ヤハッ!艇長さん待ってましたよ~っ!さっきからオイラのお腹は鳴りっぱなしでさぁ~っ」

「生きてるか?なんて、なんてデリカチーの無い男なのかちら?仮にも人が死んだってのにちんじられないのね。あたちの事も蹴飛ばすち・・・確かにあの場に居たらあたちもんじゃったかもれないけど、蹴らなくたって良いとは思わないかちら?そんなデリカチーのない男は食事ちょくじ抜きで良いと思うのね。だから艇長さんの分もあたちが食べてあげるわね。あたちは何て心優こころやさちいのでしょうかね?フェルもそう思うわよね?」

「あ~と、皿を持ってるのは俺なんだが・・・ポーラはそんなに食べたくないのか・・・誰かさんが食べたいと思って作ったクルックとシナギクの炒めモノ何だが・・・仕方ないこれは俺が片付けるとしよう。フェルも残念だったな。ポーラと同室で」

「えぇっ!そりゃ無いっスよ!ポーラさんも言い過ぎっスよ~」

「艇長さん・・・そんな事ちたらどうなるか判ってて言ってるのよね?」

「ははは、冗談だよ冗談。ホラ食べな」


 と、言いながら、病室においてある簡易テーブルに大皿を載せた。


「アレッ?艇長さん?何か大事なモノを忘れてやしませんかぃ?」

「はて、何だろうな?早く食べないと折角の熱々の料理が冷めてしまうぞ」

「わざと嫌がらせをちてるのかちら?こんな熱いモノを手づかみで食べろとおっちゃるのね」

「はははは、スマンスマン」


 と言いつつ、ポケットから布でくるんだフォークを取り出して渡す。


「ま、食べ終わったら皿を戻しておいてくれ。ポーラ、救ける為とは言え女の子を蹴飛ばしたりなんかして悪かったな。ごめんなさい」

「ふ、フンッ!この料理に免じて許ちてあげるのね。感謝かんちゃすると良いのね!」


 口ではそう言ってるが、既に視線は料理の虜だ。口の端からヨダレが垂れそうになっている。

 影の支配者であるポーラのご機嫌伺いは必要不可欠だからなぁ。機嫌も治ったみたいで一安心。


「んじゃ、ごゆっくり~」


 そう声を掛け、病室を後にする。ドアを締める前に病室を見ると、ポーラとフェルが仲良く舌鼓を打っていた。

 

 今は食事を摂る元気もない。料理を作る匂いでお腹一杯である。

 

 指揮所に上がり、気晴らしに念話用の魔道具を弄ってみる。本気で取り残されたのか・・・と、少し気分が沈む。

 その時、入念にゅうねん用の魔道具から微かに声が聞こえてきた。


『オーグル応答せよ!こちらは『スレイプル』オーグル応答せよ!こちらは『スレイプル』』 


 え?マジか?念話が繋がらなかったのは何らかの故障のためか?それよりも『スレイプル』は健在だったのか!

 慌てて発念用の魔道具に『スレイプル』用の魔方陣を組み込み叫んだ。


「こちらオーグル!現在損傷が激しく着底中!救援を請う!」

 

 何度か同じ文言を繰り返し、反応を待つ。


『オーグルかぃ?無事で良かった』


 入念用の魔道具が損傷してるらしく、音声が非常に聴き取り辛い。


『そっちは今何処に居るんだい?』


 こっちの位置を知らせるにはどうするか・・・。


「スカイ!スレイ!この付近に『スレイプル』は居るか?至急探しだせ!」


 二人の鳥人を探し、艇内せんないを駆けまわる。


「主殿、ここでござる!」


 スレイは上甲板に居るようだ。階段を登り向かってみる。


「スレイ、ここに居たか。スカイは何処に行った?」

「使える資材がないかどうか、周辺の墜ちた艇を捜索中でござる。どうしたでござるか?」

「この付近に『スレイプル』が居るかも知れん。探して貰えるか?」

「お安い御用でござる」


 そう言いながら周囲に目を向け始めた。


「むむっ!アレでござるかな?」

「何処だ?」

「ここより4時の方向。高度は約1000,距離は約11000・・・位でござるかな?」

「ありがとう!助かった!」

「この程度お安い御用でござる」


 直ぐさま艇内せんないに戻り、発念用の魔道具に飛びつく。


「『スレイプル』聞こえるか!?当方はそちらより10時の方向、距離は約11000!木の上に着底している!確認を請う!」


 今回も繰り返し発念する。


『こちらでも確認した。直ぐに向かう』


 良かった。これで助かるかも知れん。

 上甲板に上がり『スレイプル』の到着を待つ。


 『スレイプル』の姿が肉眼でも確認出来て来た。

 『スレイプル』も『オーグル』程ではないが損傷が激しい。この状態で迎えに来てくれるとはな。嬉しい限りだ。


 『スレイプル』はゆっくりと高度をコチラに合わせ高度を固定した。『スレイプル』の上甲板にはエルフ女性の姿が見える。


「よぅっ!アタイが『スレイプル』艇長、ナタリア・サンドランスだ。しかし、これまた、こっ酷くやられたモンだねぇ・・・一体何が有ったんだぃ?法撃の痕って訳じゃ無さそうだけど」

「初めまして『オーグル』艇長、ヒョーエ・ジンナイです。無茶な操艇と、後はトロールに乗り込まれまして・・・」

「はぁ・・・良く生きてたもんだ。して、倒せたのかぃ?」

「いえ、何とか追い払った・・・と、言った所ですかね。あんな化け物、この人数じゃ倒せないですよ。確かに1人で30人分は戦えそうだ」

「追い払うだけでも大したもんだ」

「その分戦力は半減しましたけどね・・・」

「そうかぃ・・・まぁ、生きてる者が居るってんなら、まだ良かったってもんだね。トロール独りに全滅させられた艇だって有るんだから」


 そう考えれば『まだマシ』なのかは知れないが、やり切れるモノでも無いのも確かだ。


「そう考えれば運が良かったかも知れませんね」

「あぁ、生き残ったんなら運が良かったのさ。所で、手を貸して欲しい事とかあるかぃ?」

「良いですか?助かります」

「良いって。困った時はお互い様だしね。それに、個人的にアンタに興味があるし・・・ね」

「あははは、そうなんですか・・・かなりガタが来てますが案内しますよ」


 と、ナタリアがオーグルに乗り移るのを確認して指揮所へ一緒に向かう。

 


「ったぁ~これまたこっ酷くやられたもんだねぇ・・・お?サーシャじゃないか!セットのザードの馬鹿は何処に行ったんだぃ?」


 サーシャさんはチラリとナタリアを見ると、無言のまま顎をザードの方へシャクッた。

 指し示された方へ歩み寄り、そこでザードの身に起こった事を理解した。


「そうかぃ・・・とうとうコイツも逝っちまったか・・・」


 ナタリアは鎮魂の為か、亡骸の前で黙祷をする。

 それが終了するのを見計らいナタリアに聞いてみる。


「そういえば、ガルシアのオッサンはどうなりましたか?」

「あぁ、とっつぁんかぃ?それが行方不明なんだよね。あの腐れ親父がそう簡単にくたばるとは思えないんだけどねぇ」 

「そうですか・・・かなりの乱戦になりましたからねぇ」

「そうだね。あそこまでの消耗戦になろうとはね」

「何とかしないといけませんね。今の戦い方じゃ押し切られますよ」


 本気で何とかしないと、このままじゃ本気マジでヤバイよな。


「その辺りはアタイも判るんだが・・・現状、どうにも出来ないんだよねぇ」

「やはり、何らかの新兵器を考えないといけないな。浮空艇の性能ですら既に負けてるし」

「あの敵の新型かぃ?アイツはやばかったねぇ。見たこともない部品が付いていたけど、ありゃ、一体ナンだったんだろうね」

「プロペラって言う、異世界の推進装置ですよ。動力源が不明ですが・・・」

「へぇ~、ヒョーエにゃ真似が出来るんだ・・・?」


 なんか呼び捨てだな・・・どうでも良いけども。


「どうでしょうか・・・動力源が不明なので・・・今はもっと良い物を考えてますけどね」

「どんなんだぃ?」

「まだ脳内で試行錯誤してる段階でして、実現できないと恥ずかしいので秘密って事で」

「・・・まぁ、良いさ。カタチになればアタイらも知る事は出来るだろうしね」

「申し訳ありません」


 さて、一度、話しを切り上げるか。


「では、今後の事を判断する為、艇を見回ってきます」

「あいよ。また後で・・・だね」


 そう言うとナタリアは自分の艇に戻っていった。

 入れ替わるように『スレイプル』の乗組員が、コチラの艇の状況確認を手伝うために乗り込んでくる。

 俺も損傷具合を見る為に艇に戻る・・・っても、見たところで良く判らないんだけどね。なので、ミレーヌを探す事にする。


 艇内せんないを探しまわったところ、ミレーヌは資材室に居た。

 死者の棺桶を作る為だ。

 入口の壁をノックし、来訪した者が居る事を伝える。


「忙しそうだな。手伝うよ」

「あ、ジンちゃん・・・・ありがとう!」


 暫く無言で、寸法通りに切断された板に釘を打ったりする。ミレーヌは遺体保存の為の魔方陣を棺桶の板に刻み込んでいるようだ。

 無言に耐え切れず質問してみる。


「なぁ、ミレーヌ。この艇はまだ飛べると思うか?」

「う~~~ん・・・見たところ損傷が激しすぎて・・・ドックに入れれば何とかなるだろうけどここじゃ無理だよね~。曳航する事も無理そうだから、飛空石を引っこ抜いて、艇体はこのまま森の肥やしにする他はないかもね。幸い『スレイプル』が来てくれてるから帰る手段はあるからね」 

「構造材のミスリルはどうするんだ?」


 結構お高いモノだったと思うが。


「あぁ、艇の艤装ぎそうで高価な物はそのままで良いんだよ。戦闘で少なくない被害が森に発生してるじゃない?そのお詫びも込めて森の住人に渡すのが暗黙の了解みたいになってるからね」

「まぁ、平穏に暮らしてるところに真上で撃ち合いして、住んでる場所に魔法弾や艇が堕ちてきたりしたら嫌だよなぁ」

「森の大部分を棲家にしてるエルフ族を怒らせると大変だからね。まぁ、有効利用してくれると思うよ」


 そう言うカラクリなのね。確かに浮空能力を失ったら、ただの木造帆船だよなぁ。問題はサーシャさんか・・・この艇も長いだろうし。


「おや?ミレーヌの持ってるその削る道具は良い切れ味してるなぁ」


 良く見ると、鉄などの金属板をやすやすと削り取っていたりする。


「あぁ、これは父様とうさまの形見なんだよ。特殊加工されたアダマンタイト製で、アダマンタイトまでなら削る事が出来るんだ。並の職人じゃ持って居ない位の逸品だよ」

「あ、なんかごめん・・・」

「あ、大丈夫。気にするような事じゃないからさ」


 そうは言ってもなぁ。この状況じゃ気まずいべ。気分を変える為に質問してみる。


「オリハルコンは削れないのか?」

「オリハルコンはとっても硬いけど、鉄と同じように鋳造出来るからね。それにとっても高価だから削ると削りカスが勿体無いんだよね・・・。だから製錬せいれんする際にそのまま鋳造で魔方陣を組み込むんだよ」

「そうなんだ」


 奥が深いな。

 雑談しながらも手は動いていく。そうして棺桶は出来上がった。


「んじゃ、運ぼっか。ジンちゃんも手伝って」

「了解」

「あ、ちょっと待って。魔法をかけてあげるから」


 そう言いつつ、何枚かの魔方陣を取り出して『筋肉量増強マッスルリインフォース』『骨密度上昇デンシティアップ』の呪文を重ねがけしていく。

 効果は瞬く間に現れ、棺桶が非常に軽く感じられ、オーガ用の巨大な奴ですら軽々と持てるようになった。


「おぉ~魔法ってのは凄いな」

「色々と便利だよね」

「確かに有用だが、万能じゃないよなぁ」

「まぁね。結局は使う人次第ひとしだいだと思うよ」


 雑談しつつ運び、遺体をひつぎに納める。


「これからどうなるのかねぇ・・・」

「一度タンピヤに帰島する事になるんじゃないかな?先の事は分からないけども」


 それから、金目の物や積み込めるだけの食糧を『スレイプル』に積み込み、『タンピヤ』まで帰島したのであった。

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