戦闘開始 そのさん
戦隊長より入念!『高度9000を維持して水平航行!敵の姿を見つけ次第、急降下に入る!』以上ですわ」
ふむ、未知の戦術に対しての適応能力、伊達や酔狂で長年戦ってきたって訳じゃ無さそうだな。
「戦隊長に発念だ!思考が柔軟で何より。かなり艇体に損傷が出る!被害を受けてる艇は参加は自重せよ!と、伝えてくれ」
まぁ、結果的に勝てれば良いんですけどね。
「戦隊長より入念『敵の浮空艇を9艇ばかり拿捕できた。お前らの取り分はかなり多いから死ぬんじゃないぞ!』以上ですわっ!」
戦隊長の言葉と共に艇の中は歓喜の声で包まれる。
『マジですかぃっ!』とか『ケッ!今回はタマタマだろう?』とか『ボウヤ、やってくれたねぇ!』とか『あら、アタチの手柄じゃ無いのが悔やまれるのね』等と人それぞれではあるが。
「良し!臨時収入も得られるみたいだし、各員無事に生き残るぞ!」
「「「おおぅっ!」」」
士気の維持は概ね問題なさそうだ。次もこの調子で行けると良いが・・・問題は予想以上に発生した艇の損傷か・・・。
主戦場へと急ぐが、雲が多く中々発見できない。低高度から敵を探すのは容易だが、高高度から探すのは至難である。そこで、船の舳先にスレイミーを向かわせ、下方向も捜索させる。完全密閉型の飛行機なら定期的な背面飛行で敵を探せるのだが・・・帆船じゃ無理か。
友軍を見ると、舷側や舳先付近に人を配置し、敵を見つけ出そうとしている。いくら強力な戦術でも敵が見つからないと意味ないもんな。
暫く捜索してると友軍が見つけたようで、その船の甲板が慌ただしくなっていた。
「戦隊長より入念!『敵発見だ!7時の方向、高度は約3000!突っ込むぞ!』以上ですわ」
主戦場の高度は低めか・・・引き起こしにミスったら全滅しかねんな。さっきは5000開始で2000付近で止まったからな、練度次第だが、4000が限度か?
「戦隊長に発念!引き起こし高度は4000を限度とする!以上だ」
「了解ですわ」
ちゃんと聞き入れられると良いのだが・・・手柄を求めて暴走する輩は絶対に居るだろうな。生きてさえ居れば再戦する事は可能だから焦っちゃダメなのよね。
「戦隊長から入念!『艇の引き起こしは各艇の判断に任せる!たっぷりと稼ぎな!』以上です!」
ブッ!マジかよ。そりゃ~地面とキスする奴が出るぞ。まぁ、この辺りの判断は口を出せんか・・・。
その時、スレイが指揮所に飛び込んできた。
「敵の戦列艇の規模が判明したでござる!バトルシップ級6 クルーザー級5 デストロイヤー級3でござる!友軍の被害甚大でござるっ!」
げ、基本的な戦力じゃ負けてるじゃん。デストロイヤー級が減ってるのがせめてもの救いか?その時、スカイからも報告があった。
「敵戦隊後方約8000にアーマード級4を確認である!」
アーマード級とは、内部にトロールを満載した重装甲の揚陸艇の事である。大きさはデストロイヤー級程度で、速度は遅いがバトルシップ級を超える装甲と魔法障壁を持ち、敵艇や要塞及び拠点攻略を主任務とした艇である。トロールの身長が約4メルト、一人で20~30人分に匹敵する戦闘能力で、1艇のアーマード級に50人が乗り込んでいる。アーマード級4艇は皇国陸戦隊の4000~5000人に匹敵する戦闘力を有する。非戦闘員の多い浮空島に乗り込まれた場合、アッサリと蹂躙されてしまう数だ。
このままじゃかなりヤバイっていうか、負けは必至じゃね?・・・と、強く思うのだが。
「戦隊長に発念!敵のアーマード級を叩く許可を!このままじゃ『アナピヤ』が陥ちる!」
ヤバイぞ、敵の大型艇を叩いてる場合じゃない。いくら急降下攻撃でも数の劣勢を覆すのは難しいだろうし、艇の耐久の問題からそう何度もできる事じゃない。本来ならば戦列艇で叩き伏せるのが筋だろうが、現状じゃ戦闘空域を無傷ですり抜けられる可能性が高い。
「戦隊長より入念!『小戦隊を『オーグル』に預ける!後は好きにやんな!』以上です!」
4艇で重装甲4艇を相手?そんなに手柄が優先かよ!優先目標が違うだろ?んな事してるからアッサリ浮空島を陥とされるんだよ。
「戦隊長に発念だ!そんなに手柄が欲しいか糞ったれ!小戦隊は受け取る!精々稼ぎやがれ糞オヤジッ!以上だ」
「り、了解ですわ」
現状の戦力で何とかするしか無いか・・・。巧く当てれば何とかなるかも知れん。
「麾下の戦隊に発念!臨時の小戦隊長に任命された『オーグル』艇長ヒョーエ・ジンナイだ!トロール共を叩き落とすぞ!以上だ」
さて、巧く行けば良いのだが。その時、小戦隊に配置された友軍からの入念があった。
「艇長!友軍艇『スレイプル』から入念ですわ『アンタが例の異世界人かい?アタイは『スレイプル』艇長、ナタリア・サンドランスだ!さっきのは凄かったね、共に戦える事を光栄に思う!』以上ですわ」
早速返信か、対応が早いのは好ましいな。
「友軍艇『コブラン』からも入念ですわ『私は『コブラン』艇長ジョージ・ナッツフィールドだ。共に戦える事を光栄に思う!』以上ですわ」
やたらと丁寧だが、オーガ族か?誠実さでは信用できそうだ。
「友軍艇『スレイヤー』からも入念ですわ『『ズレイヤー』の艇長ザンドラ・ダンビヤだぁ!よろずぐだのむ』ですわ」
タンピヤ人は基本どうでも良いな。
ふむ、不満に思ってる訳じゃないんだな。任務だからかは判らんが、正直助かる。明らかに貧乏くじだしな。
「麾下の戦隊に発念!あいつらを逃すと『アナピヤ』がヤバイ!配置からあいつらが敵の中核だ!何としても撃滅するぞ!以上だ!」
よし、後は敵を粉砕するのみか。
「スカイ!敵の位置はどうなってる?」
「11時の方向であるな。密集陣形で接近中、距離は約6000!かなり低速で移動中である」
あらかた片が付いてから進撃開始か・・・いわば今はチャンスだな。時間的余裕が有るなら背後から一気に仕留めたいな。
「麾下の戦隊に発念!高度8000まで上昇。雲に紛れて敵の背後に付く。それまで手出し無用!我に追従せよ!以上だ」
このまま高度を上げて様子を見つつ接近だな。
さて、巧く行くと良いのだが。