エピローグ
忘れてしまいたいくらい悲しい思い出もあるかもしれません。
忘れることでしか、その傷は癒せないのかもしれません。
けれど、私は思います。
悲しみも苦しみも、すべてを胸の中にしまって、留めておこう。
その人が生きていた証を、忘れないでいよう。
時は、思い出の形を少しずつ変えていくでしょう。
しかし、形は変わっても、それは大切に心に留まり続けます。
彼が天使に姿を変えて、彼女を見守り続けるように。
さて、これがミカエル君のお話でした。いかがだったでしょうか。
おっと、自己紹介が遅れてしまいました。私はラファエル。
お話の中にも登場した、ミカエル君の上司であり、担任でもある天使です。
私のことはどうでもいいですね。みなさんが気になるのは、きっとミカエル君……いえ、リョウ君と真理さんのことでしょうから。
あ、ほら、二人がやってきましたよ。
「おいおい真理〜。これは買いすぎだろ〜!」
そんなことを言いながら、山ほど買い物袋を提げてやってきた紺色のコートの少年、あれは紛れも無くリョウ君です。
「だって、せっかく今日は荷物持ちがいるんだもん。有効利用しなきゃ」
そう言って、リョウ君の腕に寄り添っているのは真理さん。白いコートを着て、ピンクのマフラーをした彼女は、本当に幸せそうな笑顔を浮かべています。
「おい、荷物持ちはないだろ〜」
「はいはい、感謝してるよ! さ、次の買い物♪」
「まだ買うのかよ〜」
「リョウ、早くしないと置いてくわよ〜」
そんなことを話しながら本当に楽しそうに、二人は道の向こうに走っていってしまいました。彼らの歩いた足跡が、白い雪の上にうっすらと残っています。夜の冷たい空気が、二人の行く末を祝福しているようにさえ、私には思えます。
そう、彼は真理さんとともに幸せに暮らしているんです。
え? そんなのありかよ、ですって?
ふふ、いいんですよ。
だって、今日は、クリスマスですから。
年に一度だけ、奇跡が許される日。
<fin>
最後になりました。
ラストは賛否両論あるでしょうが、暖かさを感じていただきたくてこのようにしました。
ラストまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
これからもよろしくお願いいたします。




